教員紹介
FACULTY MEMBERS
現代社会専攻
増渕 あさ子 准教授
MASUBUCHI ASAKO
研究テーマ
沖縄占領研究、医療史、冷戦史、人種とエスニシティ
おすすめ書籍
エドワード・W・サイード『知識人とは何か』(平凡社、1998年)
学生時代、大学で学ぶことに何の意味があるのか、と悩んでいた頃に出会った本です。パレスチナ出身米国籍の文学批評家であったサイードは、本書で、社会における「知識人」の責務とそのあるべき姿を模索しています。「知識人」と聞くと、ニュース番組などでコメントをする専門家や、一般人には耳慣れない言葉を振りかざすエリートを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、サイードは「知識人とは亡命者にして周辺的存在であり、またアマチュアであり、さらには権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手」と定義しています。つまり、サイードにとって「知識人」とは、知を占有して権力や伝統、世間に迎合するのではなく、何ものにも飼い慣らされずに、立ち止まらずに、言葉を効果的に使って、現状に異議申し立てし続ける存在なのです。大学という場で共に学ぶ私たちには、こうした「知識人」としての責任があるということを、頭の片隅に常に置いておきたいなと思います。
学生時代の思い出
学生時代は、ひたすら演劇活動に打ち込んでいました。幼少期から「非日常」を味わうことができる劇場が大好きで、中学・高校と英語でミュージカルをする部活に在籍し、大学ではシェイクスピアや野田秀樹脚本の作品に出演しました。観客を前に、自分でない何者かを演じることは、なかなか世界と折り合いをつけずにもがいていた自分にとっては、強烈な解放の経験であり救いでした。役者だけではなく、照明や演出も担当するようになり、演劇という、限られた空間で生身の人間が、生身の観客に対して表現をする、そこで生まれる一回限りの「何か」に夢中になりました。その経験が、番組制作会社への就職につながります。今は、もっぱら観る専門で、歌劇や歌舞伎の舞台に足繁く通っていますが、一人では決して生み出せない、様々な人との共同作業で初めて可能となるような新しい表現を見つけていくスタンスは、私の研究・教育活動の根底に流れ続けていると思います。
現在の学問分野に決めた理由
学部生時代に受講していた授業で、「沖縄を描いたメディアを分析する」という課題を与えられました。その後、授業で行ったグループ発表をもとに、とある学会で発表する機会を与えられたのですが、その場に参加していた沖縄の院生の方に、「あなたたちは何者として沖縄を消費するような研究をするのか」という問いを突きつけられたことが、その後、現在に至るまで沖縄について考え続けるきっかけとなりました。近世以降、常に複数の国家・帝国のはざまに置かれてきた沖縄の歴史を対象とすることは、必然的に、地域をまたぎ、学術領域を横断する研究姿勢が必要となります。沖縄の人びとの歴史経験は、沖縄という一つの地域をこえて、太平洋諸島の先住民や、現在も軍事暴力にさらされ続けている難民の経験とも重なります。沖縄について考えることは、私にとって、日本、アジア、そして世界各地において、現代社会が直面する諸問題について検討し、未来を切り拓いていく作業にほかなりません。