企画研究の授業で、2月28日から3月7日にかけて、カナダ
のトロントで多様な市民の共存について考えるフィールド
ワーク学習を行いました。
フィールドワークは、今回のフィールドトリップを熱心か
つパーフェクトにコーディネートしていただいたトロント
大学のBill Mboutsiadis先生によるキャンパスツアーから
始まり、福祉機関でのボランティア体験、労働組合(United
Steel Workers)への訪問、ファーストネーション(アボリジ
ニ)の支援機関でのヒアリング、カナダの歴史博物館(The
Market Gallery)での歴史学習、移民政策に関する国際カン
ファレンス(The 3rd International Cities of Migration
Conference)の出席、ギリシャ移民のコミュニティセンター
(Greek Commuity)の見学、初等教育機関(Dovercourt Public
School)の教育体験、トロント大学教育学部での移民と言語
政策に関する講義の受講など、とても多彩な内容で実施され
ました。
<トロント大学>
今回のフィールドワークで学習できた大きな成果は移民と
ファーストネーションの人々に対する社会的包摂がどのよう
に行われているかということであったと思います。移民の
社会的包摂については、政府や企業による移民政策の最新の
動向をカンファレンスへの出席を通じて学習し、また、移民
を始めとする低所得者に対して安価に自然食材を提供する
FoodShareや日本人の移民向けに福祉サービスを提供している
Japanese Social Servicesといった福祉機関へのボランティア
や職員の方からのヒアリングを通じて、異なる文化や言語の
もので、どのような特別なサービスが必要となるのかという
ことを学びました。さらに、教育については、ギリシャ移民
のコミュニティセンターで、移民の文化や言語を維持するた
めの教育サービスの内容や公立初等学校での多様なバックグ
ランドを持つ子どもたちの学び合いの姿を見聞しました。
そして、トロント大での講義を通じて、そうした多様な背景
を持つ移民の教育の現状と社会的地位の結びつきなどについ
て学びを深めることができました。
<公立初等学校>
他方、ファーストネーションに関しては、トロント大学の
ファーストネーションの学生に対する学習支援センター
(First Nations House: University of Toronto)やカナダの
歴史博物館などでカナダ政府によるファーストネーション
政策の歴史を学習し、また、トロントに定住するファースト
ネーションの人を対象とした支援センター(Native Canadian
Center of Toronto)では、住居や福祉サービスの提供が現在
どのように実施されているのかということを職員の方から伺
うことができました。
こうしたフィールドワークを通して特に勉強になったのは、
カナダでは過去において、移民排斥やファーストネーション
の人々に対する強制的な同化政策など様々な問題を経験し、
それらの一部は今も社会的課題となっているが、そうした負
の側面を記録し続け、教育や社会政策を通じてそれらを是正
しようと模索している人や社会の姿でした。
<International Cities of Migration Conference>
参加した学生たちからは、カナダの「良い面」だけでなく
「悪い面」について学習したことが勉強になったという声の
ほか、社会を変えるための社会運動やボランティアの活発な
点や社会の多様性を活かし機能させるうえで市民と政治が
「近い」距離にあることに驚いたといった感想が寄せられ
ました。
文責:人間福祉専攻 鎮目真人教授