教員紹介
FACULTY MEMBERS
現代社会専攻
賈 斌(ジャ ビン) 特任助教
JIA BIN
- 専攻
- 現代社会専攻
- 専門分野
- 農村社会学、法社会学
研究テーマ
人間行動、制度、価値観、慣習、社会規範、農村、法社会学の量的分析
おすすめ書籍
田原 史起、『中国農村の現在――「14億分の10億」のリアル』、中公新書、2024年
中国と聞くと、私たちは北京の紫禁城や上海ディズニーランドなど、大都市の華やかな風景を思い浮かべがちです。しかし実際には、人口のほぼ半分が農民であり、関連人口も含めるとその数は10億人にも上ります。
では、彼らはどのような人々で、どのような生活を送り、また外の世界との関係をどう考えているのでしょうか。この本は、そうした中国農村社会の現実を丁寧に描いています。
社会学は、社会のあらゆる隅々に目を向ける学問です。その意味でも、この本は非常に示唆に富んでおり、ぜひ皆さんにおすすめしたい一冊です。
学生時代の思い出
私は中国の新疆ウイグル自治区で生まれました。大学入試(高考)という熾烈な戦いの中、自治区内5万人の中からなんとか生き残り、2000位という成績を収め、黄海沿いの都市・大連で学ぶことになりました。大連までの3500キロ以上の移動には、寝台列車を選びました。列車は新疆の中心都市ウルムチを出発し、果物で有名なハミ、万里の長城の最西端にあたる嘉峪関、砂漠が広がるトングリ、黄土高原、首都北京、万里の長城の最東端である山海関を経て、約三日かけて大連に到着します。
車窓から見える景色は圧巻でした。広大な砂漠、連なる山脈、黄土高原の深い谷、夜空に広がる満天の星、北京の高層ビルや車や人であふれかえる街並み、工場の巨大な煙突、海沿いの線路……都市を離れると携帯電話も圏外になり、まるで世界から切り離されたかのような静かな時間を味わえます。列車でこの広大な大陸を横断しながら、普段では味わえない壮大な景色と、ひとりで過ごす静かな時間の貴重さを実感しました。
現在の学問分野に決めた理由
大学時代、農村社会学の授業で日本の農業に興味を持ちました。日本への交換留学を一年間経験した後、日本の農業協同組合の仕組みが中国の農業生産合作社(協同組合)にどのような示唆を与えられるかを研究したいと考えるようになりました。文献を調べているうちに、偶然、中国の農地制度には法的に定められた制度のほかに、村民を主体とする農地に関する慣習が存在することに気づきました。これは私にとって非常に新鮮な発見でした。その結果、研究の中心は、この慣習がどのように生まれたのか、法定制度とどのような関係にあるのか、そして農民はこの二重構造をどのように理解しているのか、といった問題に移りました。これをきっかけに、私は農村社会学、法社会学、農業経済学といった分野を専門的に研究することを決めました。