教員紹介

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現代社会専攻

加藤 潤三 教授
KATO JUNZO

専攻
現代社会専攻
専門分野
コミュニティの社会心理学
研究者学術情報データベース

研究テーマ

社会心理学から地域コミュニティにおける人間の行動と心理の探求(地域環境問題、地方への移住、沖縄に関する研究など)

おすすめ書籍

ヴィクトール・E・フランクル 『夜と霧』(新版)みすず書房(池田香代子(訳))2002年

人文社会科学の研究において、探求すべき究極的な問いは何でしょう?その1つは「人間の幸福」です。では、どのようなとき、人は幸福を感じるでしょうか?実はこの答えは難しく、例えば家族といることが幸せな人もいれば、そうでない人もいます。では質問の仕方を変えて、どのようなとき、人は不幸になるでしょうか?これも答えは様々ありますが、「戦争」という答えに対しては、多くの人が同意できるでしょう。

この『夜と霧』は、まさにその戦争の最中、しかも人類史上最も残虐な行為であるナチスによるホロコースト、強制収容所が舞台となっています。この本の原題「それでも人生に然りと言う-ある心理学者、強制収容所を体験する」からわかるように、著者のV.フランクルは、強制収容所に収監されながらも、その過酷な経験を心理学者として克明に分析しています。この本を通じて彼が語る「生きる意味」は、あらゆる人生の苦難に対し、普遍的な力でもって我々を支えてくれます。心理学の書としてだけではなく、人生の教科書としておすすめします。

学生時代の思い出

今でこそ学生の皆さんに対して「授業に来てしっかり学びなさい」と偉そうに言っていますが、私自身は決してほめられた学生ではありませんでした。1・2年生の頃は、大学に行くのは必修の授業だけ。テストの時は当時大学の周りにあったノート屋で授業ノートを買い、何とか一夜漬けで単位だけギリギリ取るという、やる気も目的もない学生でした。

そのような私にとって転機になったのがゼミナールでした。たまたま社会心理学の先生が新任で来ることになり、そのゼミに救われるような形で入りましたが、社会心理学の実験や調査、統計による分析をやっていくうちに、研究することの楽しさにまさに目が開きました。また研究することの楽しさは、先生との議論やゼミの仲間との協同作業など、人とのかかわりの中で増幅しました。学生時代、誇れることはほとんどありませんが、ゼミだけは全力で学び、遊びました。今はゼミを持つ立場になりましたが、当時の私のように目が開く機会を提供できる教員でありたいと思っています。

現在の学問分野に決めた理由

私の専門は社会心理学です。社会心理学とは、個人と社会の相互影響のプロセスを解明し、人間の社会行動を理解・把握する心理学の一分野です。一見難しそうに見えますが、私たちが社会の中で生活している限り、どのような行動や現象も社会心理学の対象になります。

その考え方に魅かれて社会心理学を志したと言いたいのですが、私が社会心理学との出会ったのは、「たまたま社会心理学の先生のゼミに入ったから」という、全くもって主体性のない理由です。しかし、ゼミナールでの研究で学んだ「人間の行動を科学的に実証する」という社会心理学のアプローチは、私の琴線に触れました。特に私は、ふるさとや地元といった地域コミュニティにこだわりがあり、現在まで一貫して研究に取り組んでいますが、自分の認識している世界をデータと統計的分析によって客観的に検証するというのは、知的にエキサイティングなことです。さらにそれが、他の研究や実社会に役に立つことができれば、これほど幸せなことはありません。その思いで社会心理学の研究を続けています。
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