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学部創設30周年記念講演会「Circles of Compensation 日本の経済成長とグローバリゼーションへの提言」

立命館大学国際関係学部、国際関係学会は6月7日、ケント・カルダー教授(ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(School of Advance International Studies (SAIS))ライシャワー東アジア研究所所長)を招聘し、国際関係学部創設30周年記念特別講義を開催しました。ケント・カルダー教授は、米国を代表する日本・東アジア研究の専門家です。SAIS着任以前は20年間プリンストン大学で教鞭を取り、駐日アメリカ大使特別補佐官、戦略国際問題研究所日本部長、ハーバード大学日米関係プログラム初代事務局長などの役職も歴任しました。2018年7月1月からは、SAIS副学長に就任予定です。著書は、アジア・太平洋大賞を受賞した「アジア危機の構図」(1996年)の他、「ワシントンの中のアジア」(2014年)、「シンガポール - スマートな都市、スマートな国家」(2017年)など多数あり、日本語訳は10冊出版されています。

立命館大学での講演では、カルダー教授は、昨年スタンフォード大学から出版された、Circles of Compensation: Economic Growth and the Globalization of Japanについて話をしました。この本は、カルダー教授が長く研究を続けてきた日本の国内政治と外交に関する研究の集大成であり、『自民党長期政権の研究――危機と補助金』(文藝春秋, 1989年)と、『戦略的資本主義――日本型経済システムの本質』(日本経済新聞社, 1994年)の続編とも言えるものである。冒頭に、君島東彦 国際関係学部長がカルダー教授を紹介し、林恩廷 国際関係学部助教の司会により進行しました。

カルダー教授は、Circles of Compensation(互恵の輪)という概念を通じ、なぜ日本がグローバリゼーションへの対応に遅れをとっているのかを分析しました。カルダー教授によると、日本は明治中期以降、近代化と経済発展のため、企業グループや業界団体、政治会派、官僚組織は、互恵的なネットワークを通じた協力体制を敷くことにより、過剰な競争を抑制し、設備投資や技術革新を効率的に進める仕組みを作ってきました。このネットワークは、明治期・大正期の日本の近代化、そして設備投資主導型の高度経済成長には、政治状況がグローバル化し、素早い変化や生産性の向上が求められる時代になると、内部調和を保つインセンティブが足かせとなり、外部環境への対応の遅れやリスク回避傾向により、日本の経済停滞の一因となり、アベノミクスの第三の矢である成長戦略へのハードルともなってきました。

カルダー教授は、金融、土地と住宅、農業関連、エネルギー関連、運輸交通、コミュニケーションのネットワークを例に上げています。例えば、羽田・関西国際空港の着陸料は、仁川国際空港など諸外国の主要国際空港よりもはるかに高くなっています。一般利用者や航空会社にとっては不都合であり、建設費や近隣住民への補償のための出費、規制による空港施設の高度化やサービスの多様化への遅れ、外資企業の空港サービスへの参入のハードルの高さにより、結果として諸外国の空港に比べると使いにくく、結果としてグローバリゼーションへの対応の足かせともなっています。このように、Circles of Compensationというネットワークは、メンバーを保護し、利益を内部分配し、ネットワークの外側にいる者がそのコストを負担することになります。カルダー博士は、この問題の解決策として、ネットワークを破壊することよりも、ネットワークによる恩恵を受ける層を広げること、また国際プレーヤーを取り込んでいくことを提起しました。

講演に続き、活発な質疑応答が行われました。講演会には英語で学ぶプログラムであるGlobal Studies専攻やJoint Degree Programを始めとした多くの国際関係学部の学生、教員や海外大学からの交換留学生も多く参加し、活発な質疑応答が行なわれました。参加学生は、この講演を通じて、Circles of Compensationを自分のキャリア選択や、日本のグローバリゼーションの現状と未来、海外との関わり方と関連づけて受け止めており、その意味でも、カルダー教授のメッセージは、グローバリゼーションを体現している国際関係学部の30周年にふさわしいものであったといえます。