2015年10月31日~11月3日に南アフリカで開催されたICDP-立命館Workshopの集合写真。採択されて始まった掘削計画が議論された。

2017.06.02 TOPICS

国際陸上科学掘削計画(ICDP): 南アフリカ金鉱山の大深度からの地震掘削調査の開始 ~世界初の地震の震源近傍の掘削調査を目指す~

 本学小笠原宏・理工学部教授が計画の筆頭となり、南アフリカ金鉱山の地下3 kmの坑道などの付近で起きる微小~中規模の地震の震源断層を直接調査する計画(以下「DSeis(ディーサイス)計画」の科学掘削が6月1日から始まりました。この計画は、Science誌(5月31日版)や日経新聞電子版(3月14日)等でも報道されているように国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)(※1)に採択された日本主導のプロジェクトとしては4例目で、計画参加者は9ヶ国42名の研究者と数十名の鉱山関係者に及びます。同教授が代表者を務めたJST-JICA地球規模課題対応国際科学技術協力(2010-2015)の成果(終了時評価A+)を発展させるものでもあります。
 南アフリカ金鉱山の採掘は非常に深いため、掘り残された岩盤に大きなひずみが生じ、地震が頻発します。これらの断層の長さは100 m~5 kmと自然大地震のそれに比べ小さなものです。しかし、これらの地震が坑道近くで発生したため、その破壊開始点や停止域、余震域などの十数カ所をDSeis計画で掘り抜き、何が個々の地震や地震群の活動を支配していたかを明らかにできます。
 この計画に関わり「 南アフリカとインドの国際科学地震掘削計画を軸にした研究交流」が日本学術振興会の研究拠点形成事業のアジア・アフリカ学術基盤形成型に採択され、本学は拠点機関となっています。また、これらによって、本学が進めているインド工科大学ハイデラバード校との産学国際協働PBLプログラムの相手側教員との協働を、欧米も含めた国際協働研究に発展させることもできると期待されています。

※1 国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)
ドイツ、米国、中国が主導国となり、1996年(平成8年)2月から始動した多国間科学研究協力プロジェクト。日本は1998年より加盟。「気候と生態系」「持続可能な地下資源」「自然災害」の3つの科学テーマを掲げ、地球変動の歴史を知り地下の活動的プロセスをとらえるために、各種陸上科学掘削計画を推進している。日本では、海洋研究開発機構が代表機関を、日本地球掘削科学コンソーシアムの陸上掘削部会が代表窓口を担当している。

朝日と縦坑塔
朝日と縦坑塔
縦坑を通って行くことができる地下大深度からM5.5、3.5、2.8などの地震の震源付近を掘削し精査する。これらの地震は、既存の多数の地震計(赤三角)などによって観測されているが、震源近傍に観測点(赤丸)を増設し更なる詳細を観測し掘削精査の結果と比較する。
縦坑を通って行くことができる地下大深度からM5.5、3.5、2.8などの地震の震源付近を掘削し精査する。これらの地震は、既存の多数の地震計(赤三角)などによって観測されているが、震源近傍に観測点(赤丸)を増設し更なる詳細を観測し掘削精査の結果と比較する。

朝日と縦坑塔
高さ、幅、奥行き各6mのドリリングスペースが地下2.8kmに掘削され安全対策工事と必要資材の搬入が2017年5月19日にほぼ終了した(上)。矢印の向きに口径76mm 750m長のドリリングを行い、M5.5の地震発生帯を精査する。下:右から、スイス連邦工科大院生、矢部康男(東北大准教授)、ドリリング・クルー、DSeis計画が雇用している鉱山の元地質担当者。写真撮影:矢部康男(東北大学)。

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