持続可能な開発とレジリエントに焦点

 2017年10月30日、インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)がインドネシア各地の大学や政府機関から選抜した24名が、高等人材開発の一環として、立命館が実施する研修に参加しました。立命館での2週間の公共政策立案研修は、インドネシア各地の地方自治体で行なわれている公共政策立案トレーニングをより充実させる目的で、BAPPENASからの要請のもと、トレーニング指導者であるインドネシア各地の大学教員らを対象とし、2009年から実施しています。

 7期目となる今回の研修では、持続可能な開発とレジリエントに焦点を当て、インドネシアでの指導に導入する6つのトピックが取り上げられました。

1) 地域に根ざした地方振興(Villages based Rural Development)
2) 沿岸地域の海洋空間計画(Maritime Spatial Planning on Coastal Areas)
3) エコシティー:グリーンインフラ開発(Eco city: Developing Green Infrastructure)
4) 「これから」の中小企業(‘Future’ Small and Medium Enterprises)
5) 減災・防災 (Disaster Reduction and Mitigation Planning)
6) 地方自治体における研究開発管理(Planning and Management in Research and Development for Local Government)

 12日間の研修は、立命館大学大阪茨木キャンパス(OIC)での3日間の講義やワークショップから始まり、日本の行政システム、行政官のエシックス(倫理)、レジリエントな地域開発、水資源保全政策、行政によるスタートアップ・ビジネス支援などについて理解を深めました。 4日目からは九州でのフィールドワークが始まりました。まず研修員が訪れた福岡市水管理センターでは、節水都市福岡の水管理に関する講義の後、配水調整システムを見学し、水道水が実際に管理されている様子を視察しました。続いて訪れた福岡市スタートアップカフェでは、スタートアップエコシステム(支援体制などの生態系)構築のため、福岡市が無料で提供している様々な起業サポートサービスについて学びました。

レクチャーの様子
ワークショップ:多様な社会における合意形成「風力発電所に関する合意形成ゲーム」の様子

 フィールドワークを通じて地方自治体の様々な政策に触れた研修員らは、日本の成功事例をいかにインドネシアに適応させられるかという視点を持ちながら、次のフィールドワーク先である豪雨被災地の朝倉市を訪ねました。

 朝倉市では、当日行われていた復興支援イベントで地元の住民らと交流をしたあと、九州北部豪雨災害対策推進室の職員から、豪雨被害と復旧計画に関する説明を受けました。その後、住民の案内のもと、被害がまだ色濃く残る杷木林田地区を見学しました。

 その後4日間続いたフィールドワークでは、熊本、別府、湯布院、大分、北九州を巡り、熊本地震の際の避難所運営の話や、大分県内の一村一品運動および農水産物の6次産業化、湯布院のまちづくり、そして北九州エコタウンのグリーンインフラなど、様々な事例について学びました。

朝倉市:2017年九州北部豪雨の被災地
湯布院では紅葉を背景にまち歩きを行いました

 九州でのフィールドワークを終えた研修員らは再びOICに戻り、最終日にグループ発表を行いました。グループ発表では、各グループが取り上げたインドネシアのケーススタディーに関し、日本の事例をどのように取り入れられるかという観点を含め、プレゼンテーションが行なわれました。発表には政策科学研究科の学生も聴講に訪れ、活発な意見交換が行なわれました。

 今回の研修を通じて研修員らが得た新たな知識や教材は、インドネシアでの公共政策立案トレーニングをさらに充実させるための参考となったことでしょう。日本の事例がインドネシアの各地で適応され、持続可能でレジリエントな取り組みが広がることを期待しています。

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