Voices for future leaders修了生紹介

8期生

篠﨑 亮平

篠﨑 亮平Shinozaki Ryohei

株式会社山下設計 
設計本部 建築設計部門 第3設計部 部長

  • 株式会社山下設計 
    設計本部 デザインラボ チーフアーキテクト
  • 株式会社山下設計 
    設計本部 建築設計部門 第3設計部 部長

立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について

西園寺塾での日々は、私の脳がこれまでの人生で最も汗をかき、最もシワが刻まれた時間でした。そう断言できるほど、これまで考えてもみなかった様々な世界・知恵・価値観を学ぶことができたと思います。受講した2021年~2022年はコロナ禍にあり、多くの不安と変化が渦巻いていて、アフターコロナ、ロシアのウクライナ侵攻など、激変が生じ、またそれが加速するような社会情勢でしたが、西園寺塾の学びは「生きる指針としての哲学」を与え続けてくれたと思います。
その中で私自身の一番の変化を考えると、

  1. 「もっと学びたい」という内なるエネルギーが生まれたこと
  2. 十人十色な講師・8期生と共に学び、より自分の専門性・個性を意識するようになったこと

が挙げられます。
私が生業としている建築設計は、多くの関係者や土地の風土・歴史との対話によって創る「一品生産」が特徴です。西園寺塾で学んだ、利他の心と多様性を育み共感を高めていくことの重要性を大切に、“ワンチーム”をより一層意識するようになりました。

特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。

  1. 金丸泰輔先生・『交遊抄』 

    「日本経済新聞(全国紙)の文化欄に載るような仕事をすること」。これは社会人になった当初からの私の目標でした。狭い世界に閉じることなく広く社会に貢献することを意識させてくれた、学生時代の恩師の言葉でもあります。それもあって、同新聞社文化担当を4年間務められた金丸泰輔先生の講義は、西園寺塾のカリキュラムのなかでも特に楽しみにしていました。

    課題として出された『自身の交遊抄を書く』では、プライベートでお世話になっている登山家と我が娘の話を書きました。改めてコラムにしてみると、身近な人の言動から自身が如何に影響を受けているのか、深く省みることができました。また普段仕事で何気なく文章を書くことが多かった私ですが、改めて言葉の大切さ、そして人とのコミュニケーションについて考える契機となりました。

    働き始めた頃に目標としていたことを思い出し、初心にかえり頑張る気を起こさせてくださいました。

  2. 堂目卓生先生・指定文献『アダム・スミス―「道徳感情論」と「国富論」の世界』(著:堂目卓生)
    アダム・スミスが経済学者であると同時に哲学者・倫理学者でもあったことを初めて知りました。自由の核には道徳があり、本来社会が目指すべき経済は利己的な富の追求ではなく、道徳に深く結びついていることの理解が深まりました。現代のSDGsやESGなど社会的に正義と言われているコトを経済に如何に結びつけるかを考える根本が、すでに250年前の古典に示されていたことに感動すら覚えました。
  3. 奈良フィールドワーク・東大寺二月堂 
    日本史のなかで、私が最も遠くに感じていた奈良時代をすごく身近に感じることができる時間になりました。纏向遺跡や聖徳太子に関わる飛鳥寺などを訪れ、本郷真紹先生の解説や奈良文化財研究所での木簡を目の当たりにし、自分たちの現代に深く繋がっていることを実感しました。特に東大寺の二月堂を初めて知ることになりましたが、その木造建築としての空間の豊かさ、そこから望む奈良の街並みの夜景の美しさに圧倒されました。西園寺塾の修了後、再び東大寺を訪れる機会を得ましたが、多くの観光客の賑わいが戻った大仏殿とは対照的に、昼の静かな二月堂も大変趣き深いものでした。

今後の夢や目標を教えてください。

1年間の西園寺塾での学びを終えて会社に報告したところ「世の中、価値観やそれに基づく判断基準また優先順位が如何に多様で画一ではないことを忘れないように」との言葉をいただきました。

約20年間、同じ企業・同じ環境で働いていた私は、自分のなかでの仕事の仕方、物の見方が凝り固まっていたように思います。それをマッシュポテトのようにグリグリと一度柔らかく擦り潰し、もう一度カタチにしていくことの重要性を認識しました。今後は、チームメンバーにも伝えていきたいと思います。

謙虚に学び続けることを忘れずに、これからも精進していきたいと思います。

未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。

現代社会には様々な課題がありますが、そんな荒波を前向きに、かつ力強く乗り越えるための自身の羅針盤が西園寺塾であると思います。1回1回の学びを大切に、一期一会の気持ちで頑張ってください。