NOGUCHI Soichi
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野口 聡一 さん
宇宙飛行士
立命館大学 学長特別補佐
立命館大学 宇宙地球探査
研究センター(ESEC)研究顧問
教職員校友
未来の宇宙ビジネスを担う人材を育成する
「宇宙飛行士や専門家だけでなく、誰もが宇宙に行く、宇宙とつながる。そういう時代が、すぐ近くまできています」
25年にわたって宇宙飛行士として活動し、3度もの宇宙飛行を経験した野口聡一さんは、宇宙ビジネスの現状をこう語る。野口さんは、2005年にスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てミッションに参加。2009年、さらに2020年の宇宙飛行では、数カ月間ISSに滞在し、船外活動などのミッションを遂行した。
これまで国が威信を懸けて行ってきた宇宙事業は、今、民間主導で進められるものになっている。「国同士がしのぎを削る『競争』の時代から、企業や大学が強みを持ち寄り、共に新しい価値を生み出す『共創』の時代に変わってきています」と野口さん。
宇宙開発によって、人類の生存圏や経済活動は、地球を周回する人工衛星や宇宙ステーションだけでなく、地球の軌道を超えてはるか遠くの衛星や惑星にまで広がろうとしている。「宇宙で人が暮らすための研究開発や、宇宙を利用して地球の課題を解決するビジネスも増えています。『宇宙』は総合産業です。その中では、工学・理学の技術者や研究者だけでなく、社会科学や心理学、法学、食マネジメントやデザイン経営など、文理を問わず多様な人が協力する必要があります」と言う。
野口さんがリーダーシップを学んだきっかけは、20年前に初めて宇宙へ行ったときだった。「当時、リーダーだったアイリーン・コリンズ船長は、人種も性別も経験値も異なる全員の意見を聞きつつ、その全てを取り入れるのではなく、リーダーとして決断を下しました。そして必ずその理由を説明することを徹底する。そうした多様性と公平性、受容性がそろってこそ、ガバナンスが保たれ、強靱なチームができるのだと実感しました」
現在、野口さんが研究顧問を務める立命館大学 宇宙地球探査研究センター(ESEC)では、分野や業界を超えて産学が連携し、月面探査・利用の産業化に向けた研究開発を行うとともに、宇宙人材の育成にも力を注いでいる。野口さんも、宇宙飛行士としての経験・知見を惜しまず提供する。「宇宙に携わる可能性は、あらゆる分野、あらゆる人に開かれています。ぜひ多くの若い人に『宇宙』の門をたたいてほしい」と力を込めた。
撮影:本人提供
神奈川県出身。1991年、東京大学大学院修士課程修了後、石川島播磨重工業株式会社(現・株式会社IHI)に入社。1996年、宇宙飛行士候補者に選抜され、NASDA(現・JAXA)入社。2005年、2009年、2020年に宇宙船の搭乗員に任命され、ISSの組み立てやISS長期滞在、船外活動などを成功させた。現在、世界経済フォーラム上級フェロー、国際社会経済研究所理事などを務める。2023年、立命館大学 宇宙地球探査研究センター研究顧問、立命館大学 学長特別補佐に就任。