YOSHIDA Yumika

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吉田 有美香 さん

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
総務部 法務・コンプライアンス課 主任

2012年 法学部卒業

人類の宇宙への挑戦を法的側面からサポートする。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency:以下、JAXA)は、ロケットや人工衛星、国際宇宙ステーションなど宇宙飛行・探査に関わる最先端の技術開発から宇宙の産業応用、宇宙科学研究まで、あらゆる領域で日本の航空宇宙開発の中核を担っている。弁護士の吉田有美香さんは現在、JAXAで法務・コンプライアンス業務に携わっている。

「小さい頃から宇宙や星が大好きだった」という吉田さん。当時の夢だった「NASAで働く」「スペインのサグラダ・ファミリア教会の建築に携わる」「法曹になる」のうちの一つ、法曹を志した。

法学部に進学したものの、大学時代は、法律の勉強よりもテニスサークルの活動に熱中した。「真面目な学生とは程遠かった」と振り返るが、大学の図書館で「宇宙法」というタイトルの本を見つけたことが、「宇宙」との出会いにつながった。「法の世界にも、宇宙に関わる分野があるのか。いつかこういう分野に携われたらいいな」と思ったことがその後も心に残り続けた。

卒業後は法科大学院に進学し、司法試験を目指すも、一度目の挑戦で合格はかなわず、大学院修了後、働きながら勉強を続ける道を選んだ。法律事務所に就職し、パラリーガルとして働いているとき、JAXAの法務・コンプライアンス課が招聘職員(専門職員)を募集していることを知り、迷わず応募を決めた。

JAXAでは、同機構の内部統制やリスク管理に関わる業務に従事。「それまで培ってきた法知識があれば、仕事は滞りなくできましたが、特に説得力や信頼性が必要な場面では、弁護士資格の必要性を痛感しました」。とはいえ仕事をしながら受験勉強を続けるのは、簡単ではなかった。「夜遅くまで仕事に追われることも多く、勉強時間を捻出するのに苦労しました。早朝に勉強してから出勤するなど、なんとか隙間を見つけ勉強を続けました」。それでも志を失わず、5回目の挑戦で見事司法試験合格を勝ち取った。

JAXAを退職して1年間の司法修習を終えた後は、法律事務所に就職した。「若いうちに多様な案件を経験し、弁護士として技量を広げたい」と思ったからだ。希望通り、企業法務、男女問題などの民事事件、刑事事件と幅広い案件に携わったが、時間が経つほどに「宇宙」への思いが募り、JAXAの採用試験に再挑戦。2025年、弁護士として、法務・コンプライアンス課に戻ってきた。

現在は内部統制やリスク管理を担う他、有人宇宙活動、ロケット、人工衛星、宇宙探査、宇宙科学など各事業部門から、法律相談を受けたり、紛争解決に動くこともある。「今、宇宙業界に民間事業者が続々と参入し、宇宙旅行など新しい宇宙ビジネスが生まれています。それを推し進めるには、法的サポートが欠かせません。日々の仕事は、宇宙とはかけ離れているように見えて、実は日本の宇宙活動の信頼性や宇宙産業の発展に深く関わっている。そう思うと、大きなやりがいを感じます」

さらに社内業務に加え、宇宙法研究センター※の研究プロジェクトにも参加。宇宙ゴミや宇宙資源の利用など、宇宙に関わる国際的な問題について各分野の専門家と議論し、解決策を探っている。「例えば、軌道上に増えた人工衛星や宇宙ゴミが衝突しないよう『宇宙交通管理』の必要性が高まっています。それについて各国の取り組みや日本の政策を検討し、宇宙空間を安定的に利用していく方策を議論しています。これまで人類が直面したことのない未知の問題にどうアプローチし、解決策を見いだすか。それを考えるのが、宇宙法の面白いところです」。そこでの検討結果は、いずれ日本の宇宙開発政策や国際的なルール作りにも役立てられていく。「理系のエンジニアや科学者でなければ宇宙に関われないと思っていたけれど、法律という側面からでも宇宙業界に貢献できると実感しています」と充実感を語る。

「人類の宇宙への挑戦を法的側面からサポートするプロフェッショナルとして、もっと力を磨きたい」と目標を語った吉田さん。「いつか日本製の有人宇宙ロケットが飛んでほしい。その実現を法的に支援できたらうれしい」と、未来に思いを馳せた。

  • 宇宙法研究センター:JAXA、慶應義塾大学が協力して設立。宇宙活動に関わる諸問題を法的視点から研究する分野横断型の研究拠点。

兵庫県出身。2012年、法学部卒業。2015年、中央大学法科大学院修了後、法律事務所でパラリーガル、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)で招聘職員として勤務しながら、司法試験に挑戦。2019年、司法試験に合格し、JAXAを退職。司法修習後、2022年、東京スタートアップ法律事務所に入所。2025年1月、JAXAに入構。総務部法務・コンプライアンス課で勤務しながら、さくらレーベル法律事務所で弁護士として一般民事にも携わる。

記事掲載号

No.298|2025 DECEMBER

298号掲載記事

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