ICHIKADO Mayumi

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一門 真由美 さん

株式会社アクセルスペースホールディングス 経営管理本部
経理企画グループ PR&IRユニット PRスペシャリスト

2007年 国際関係学研究科修了

宇宙をあらゆるビジネスの「スパイス」に

小型衛星の開発・製造、および衛星を利用したソリューションの提供を手掛ける株式会社アクセルスペース(以下、アクセルスペース)。2008年の創業以来、2025年までに11機の小型衛星を開発し、実際に軌道上で運用してきた。現在は、開発だけでなく、衛星で取得したデータを活用し、多様なビジネス分野の課題解決に役立てる事業も展開している。

一門真由美さんは、同社を含むアクセルスペースグループ全体のPRに携わっている。今日に至るまでの足跡は、実に多彩だ。

「グローバルな学びがしたい」と、国際関係学部に進学した。留学経験者や帰国子女が多く学ぶ国際インスティテュート(当時)と短期留学プログラムで、得意だったはずの英語コミュニケーションで初めて挫折を味わった。「勇気を出して英語で意見を言ってみたら、一歩前に進めました。違う意見も尊重し合う仲間との議論を通じて、交渉力やコミュニケーション力が鍛えられました」と言う。幼少期は、引っ込み思案だったという一門さん。「立命館に行かなければ、今も、おとなしいままだったかもしれません」と、快活に笑う。

多角的視点でグローバルな課題について学ぶ中で、経済に関心を持った一門さん。飛び級で修士課程に進んだ後、2007年春、経済産業省に入省した。初出勤はまさに米韓FTA(自由貿易協定)交渉合意の日で、一門さんは、いきなり「世界が動く」現場を目の当たりにする。それから1カ月もたたない4月下旬、日米首脳会談が開かれ、夜中まで共同記者会見録の作成や関係者連携に追われた。「今までニュースで見ていた世界の重大な局面のただ中で、わずかではあるけれど、その一端に関わっていることを強烈に実感しました」と語る。そこで学んだのが、情報収集力や交渉力、多くの人を巻き込む力の重要性だ。「交渉を進めるためには、十分な情報収集と多角的な交渉材料の準備に加え、関係者との連携を深めて協力体制を築くことが重要です。大学・院で学んだ知識だけでは対応しきれない、実務の奥深さを実感しました」と振り返る。その後、対日投資促進広報事業などに従事し、国際広報の経験を積んだ。

仕事にやりがいを感じていたものの、結婚を機に退職し、夫の転勤先での生活を選ぶ。しばらくして再就職先を探したものの、官庁での実務経験がなかなか民間企業では理解されず、不採用の連続。ならば自分でやればよいとフリーランスを選んだ。

「2人目の子どもを出産後、もう一度組織に属し、社会に価値を生み出す仕事をしたいと思うようになりました。一番得意なのは、最初の一歩を伝えることで誰かの行動を変えたり、組織や人などの橋渡しをすること。それは、コミュニケーションだと思いました」。NPO法人の広報やコンサルティング会社勤務を経て、2022年、アクセルスペースホールディングスに入社した。

宇宙産業は今、破竹の勢いで成長しつつある。「今はまだ宇宙をビジネスに活用している企業は多くないけれど、いずれは『宇宙ビジネス』という言葉がなくなるくらい、あらゆる業界に浸透していくと思います。当社の認知度を高め、世界のどこで名乗っても、認知される企業にしたい。そのためにPRが果たす役割は、極めて大きいと思っています」と一門さん。同社のブランドや衛星を活用した事業について発信し、新たなビジネスの可能性を見いだしてもらうのが仕事。業界外の人にも理解してもらえるコミュニケーションの方策を考えたり、開発側のメンバーにも取材などに協力してもらったりと、培ってきた交渉力や人を巻き込む力が、ここでも存分に発揮されている。また衛星を海外の打ち上げ場所に持って行くための輸出に関する知識や国際的な枠組み・法、各国の政治的関係にも通じていなければならない。「国際関係学部で学んだことが、全て生きています」と言う。子育てと両立させながら働く毎日は、目の回るような忙しさだが、一門さんは楽しみながらどちらにも全力投球している。

「宇宙を活用することで、お客さまのビジネスの付加価値を高めていく。目指すのは、宇宙をそんな『スパイス』のような存在にすること」と展望する一門さん。「宇宙産業の発展のため、省庁勤務の経験を生かし、政府との関係づくりにも尽力していきたい」と目標を語った。宇宙ビジネスとともに、一門さんもさらに飛躍していく。

熊本県出身。2007年、国際関係学研究科博士前期課程を修了。経済産業省に入省。国際広報の部門で、日米経済関係強化、対日投資促進広報事業のプロジェクトマネジメントなどに携わる。退職後、大学職員、フリーランスでのスタートアップPR 支援等に従事。NPO 法人、コンサルティング会社勤務を経て、2022年4月、株式会社アクセルスペースホールディングスに入社。

記事掲載号

No.298|2025 DECEMBER

298号掲載記事

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