立命館大学校友会報 りつめい - Alumni Magazine "RITSUMEI"
TANABE Kohei
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田部 耕平さん
ローランド ディー.ジー.株式会社
代表取締役 社長執行役員 CEO
2000年 文学部卒業
世界中に「ワクワク」を
広げたい。
世界200以上の国・地域で事業を展開するローランド ディー.ジー.株式会社で代表取締役 社長執行役員 CEOを務める田部 耕平さん。
「世界の創造(ワクワク)をデザインする」ことをモットーに、高度なデジタル技術によって、クリエイティブの可能性を広げている。
中学2年生から高校卒業まで、父親の仕事の都合でアメリカ・アーカンソー州で過ごし、帰国後、立命館大学に入学しました。
大学時代は、「これからの人生で、最も自由に過ごせる最後の4年間だ」と捉え、学生生活を存分に謳歌しました。正課の授業をしっかりと受けながら、課外ではバスケットボールサークルで汗を流し、友達と楽しく過ごした思い出ばかりが心に残っています。
立命館大学は多くの学部がある総合大学で、留学生も非常に多く、「いろいろな考え方・価値観を持った人がいるな」と強く感じていました。当時は「ダイバーシティ」などという言葉も知りませんでしたが、大学で多くの人と出会い、多様な価値観に触れることができました。そのおかげで、当社に入社後、世界各国の方々と接したときにも、相手の価値観を素直に受け入れることができました。
就職活動では、一貫してメーカーを志望。グローバルに事業を展開する当社に採用されました。メーカーに憧れた理由は、中学時代にさかのぼります。ある時、アメリカ人の友人が、私の持っていたSONYの最新式ウォークマンを見て、「なんだ、それは?!」と目を見張りました。コンパクトでスタイリッシュ、音もすごくいい日本製品に驚く友人の顔を見て、日本のモノづくりのすごさを感じ、なんだか誇らしい気持ちになりました。その時、「いつか日本の高い技術を武器に、世界に挑戦する仕事に就きたい」と思ったことが、今につながっています。
海外での成功体験が自信につながった
2000年春、入社してすぐに海外営業部に配属。当時はまだ市場規模の小さかった中近東とアフリカ地域の開拓を本格的に担うことになりました。現地に赴き、現地代理店と連携してイベントを催し、当社の製品を売り込みました。中東諸国に行ってまず驚いたのは、ビジネス習慣の違いです。商談の日時を決めても、「インシャアッラー(神のおぼしめし)」を理由に、待ち合わせに遅れることは日常茶飯事です。そうした事態に最初は驚きながらも、「そういうものだ」と受け止め対処できたのは、大学時代の経験があったからです。
一方で、年齢が若くても、ビジネス相手として対等に接してくれるところは、海外ならではの良さでした。若さを引け目に感じることなく、自分の価値を認めてもらうことで成果を上げ、多くの経験を積むことができました。
2011年、当社は歯科医療(デンタル)向け切削加工機のグローバル販売を開始しました。その背景には、歯科材料である「ジルコニア」の登場があります。ジルコニアは、素材の特性上、切削加工による製作が唯一の方法です。従来、手作業中心だった歯科技工の工程を、デジタルデータを起点とした設計・加工へと転換できる点に、当社のXYZ軸制御技術と切削加工技術を生かせると考えました。このビジネスの芽を最初に見出したのは、イタリアでした。デンタル業界という、それまで当社にとってまったく異なる分野に可能性を感じ、イタリアの販売子会社を中心に市場調査を開始。将来性が明確になり、パートナー企業との協業体制が整ったことから、デンタル事業化プロジェクトが発足しました。当時、私はすでに市場の可能性に魅了され、海外販売子会社や代理店のトップの理解と協力を得るため、文字通り走り回っていました。その後、歯科技工所の後継者問題や働き方改革などを背景に、デジタル化が加速し、当社は着実に市場シェアを拡大。2017年には、デンタル事業に特化したDGSHAPE(ディージーシェイプ)株式会社を設立し、同時に同社の代表取締役に就任しました。
会社経営は、想像していた以上に大変でした。それまで経理部に任せていた財務や人についても責任を負い、資金を調達し、人材を採用しなければなりません。会社を維持・成長させていく難しさを身をもって感じました。
経営者として最も大切にしていることは、「有言実行」。一度口にしたことは、何があってもブレずに最後までやりきることです。できない言い訳をしたり、他の人に責任を転嫁するのは簡単です。しかし自分が決めたことをやり通す。それは、社会人として何より重要だと思っています。最初は、なかなか言うことを聞いてくれなかった社員も、売り上げという成果を示すことで信頼してくれるようになり、会社を軌道に乗せることができました。
骨をうずめる覚悟で新会社を設立したので、取締役に就任するため本社に呼び戻された時、正直、悔しさが残りました。でも、大きな覚悟を持って経営に奮闘した経験は、ローランド ディー.ジー.株式会社を率いる今も生きています。
「空気と水以外」のあらゆるモノに
印刷できる
印刷技術の進化により、表現の可能性は大きく広がっています。3Dデジタルプリンティング技術の登場で、今や“空気と水以外”なら、ほとんどあらゆる素材に印刷することができます。また当社は、広い色域の出力を可能にするカラーマネジメント技術や高精細印刷技術を強みに、名画の精密な色彩再現にも取り組んでいます。
さらに視覚だけでなく、触覚に訴える表現領域も拡大しています。短時間で最大2㎜の厚さまで印刷できるエンボス加工技術を開発したことで、立体感のある表現が生まれ、油絵具の厚塗りの凹凸や、土壁・鉄扉の質感を本物さながらに再現できるようになりました。
当社の技術は、お客様の想像力や創造性を大きく広げます。私たちの想像を超える表現をお客様が生み出される可能性もあります。ですから、当社のショールームには、製品を展示していません。プリンターを販売するのではなく、当社の技術を活用してできること(デジタルソリューション)をお伝えし、お客様をワクワクさせる。「こんな表現をしてみたい」と思ってくださったとき、初めてビジネスが始まると考えています。
一人ひとりが自らの
クリエイティビティを発揮する時代
創造性やデザイン性をカタチにする技術は、多様な産業分野で必要とされているだけでなく、今、個々人にも需要が高まっています。たとえば、オリジナルデザインの文房具やスマホケースのカスタマイズサービスなどがその一例です。私自身も当社プリンターでオリジナルデザインを印刷した手帳を愛用していますが、自らのクリエイティビティを発揮して生み出した、「世界にひとつだけ」のアイテムには、何倍もの価値を感じています。これからは、量産ではなく、一つ一つの価値をいかに高めるかが重要になると考えています。
事業を進める上で、私が最も重視していることは、当社のパーパス(存在意義)でもある「世界創造(ワクワク)をデザインする」です。当社のデジタルソリューションを通じて、世界中にワクワクの連鎖を創っていけたら、これほどうれしいことはありません。AIの登場によって、誰もがイメージをカタチにできる時代になりました。それをどう使い、どう世の中に届けていくかが大切になります。そのための手段となるのが2D・3Dの印刷技術であり、そこが当社の役割と考えています。今後も分野にとらわれず、世界をワクワクさせるような技術や製品を提供することで、より豊かな社会の実現に貢献したいと思いますし、それを担う人材を育てていきたいと考えています。私自身が、30代でデンタル事業を立ち上げた経験があるからこそ、若い人にも、どんどん挑戦してほしい。「こんな新しい挑戦をしたい」と自ら提案してくるような意欲のある社員には、惜しみなくチャンスを与えたいと思っています。そうした社員とともに、今後もさらに会社を成長させていきたいと考えています。
『八方睨み鳳凰図』
長野県小布施町の曹洞宗梅洞山岩松院にある天井絵『八方睨み鳳凰図』を、ローランド ディー.ジー.株式会社の最新デジタル技術を用いて原寸大で高精細に復元。本作は葛飾北斎の晩年の名作として知られており、大きさは間口6.3m、奥行き5.5mで、北斎最大の作品と言われている。なお、岩松院住職である渡辺(旧姓:高橋)正己さん(’00経済)も校友である。(写真はデジタル復原画)
岩松院本堂天井絵「鳳凰図」 推定完成複原版
画像テータ提供:NTT ArtTechnology / ArsTechne ローランド ディー.ジー.のUVインクジェットプリンターで出力
大阪府出身。2000年、立命館大学文学部を卒業後、ローランド ディー.ジー.株式会社に入社。海外営業部に配属され、中近東・アフリカで営業を経験。デンタル事業の立ち上げに参画し、その後事業開発本部でメディカルや3D事業に従事。2017年、デンタル事業を特化させた子会社DGSHAPE株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2018年、ローランド ディー.ジー.株式会社の取締役に就任。2020年、代表取締役 社長執行役員 CEO。
自分が言ったことは、
責任を持ってやり遂げる。
それが社会人としての第一歩だと考えています