先生は、どのような経緯から現在の研究テーマを設定されたのでしょうか。
大学卒業後すぐに企業に就職し、8年間勤務しました。そこで自分自身も含めた日本のサラリーマンの働き方への興味・関心が湧いたことが研究を始めるきっかけです。特に、過労とも思える長時間労働は、必ずしも企業のあからさまな「強制」によって行われているわけではなく、労働者はそれほど「虐げられた存在」ではないのだという思いがありました。大学院時代の研究テーマ「何がサラリーマンを駆りたてるのか」は、自分のそのような経験や実感から生まれたものです。
その後は、地方公務員労働組合の研究機関に勤務したこともあり、自治体が関与している労働政策や福祉政策への関心が強まっていきました。地域の持続可能性を考えたとき、そこにどのような就労の機会がどれだけ存在しているかはきわめて重要な課題だと考え、この数年は自治体職員の方などに対する調査を進めています。
先生は、これまで研究上の大きな困難にぶつかったことがおありでしょうか。
また、その場合どのようにしてそれを克服されましたか。
学問的ディシプリンという面で、経済学部→国際関係学大学院と進んできたうえ、研究職に就こうと思って勉強をしたという時期が私にはありません。それゆえ、自分の研究の理論的バックグランドや方法論が定まらないという困難には常に直面しています。それは今も「克服」できていないと思いますが、学び続ける姿勢をもちつつ、学際的なアプローチを強みと捉えるようにしています。
2年間の修士課程を終えて社会に出ていく院生に対して、大学院時代の成果をどのように実社会で生かしていくか、アドバイスをお願いします。
どのような仕事に就くにせよ、仕事は「言われたことだけやる」よりも、少し先を見て考えて、自分で動いたほうが(大変ではあっても)楽しいのではないかと思います。組織のなかで自分のやりたいことをやれるようになるには、時間がかかることもありますが、そういう環境を徐々に作っていくことが大事ではないでしょうか。
将来研究職を目指す院生が早い段階から取り組んでおくべき課題があるとすれば、それは何でしょう。
どんな研究領域でも、やはり基礎的な理論と方法論をしっかり学ぶこと。ただ、そこを軸にしながら、ある程度幅広い研究テーマに対応していけるように問題関心を広げることも重要です。学会や研究会などに積極的に参加して、他の研究者の報告を聞いたり直接話したりする機会を積み重ねることも役に立つと思います。