斎藤 真緒教授 の VOICE

VOICE

取材時期:2016年

斎藤 真緒教授 教員

研究テーマ
男性介護者を中心とする家族介護者支援に関するアクションリサーチ
教員詳細

研究を始めようとおもったきっかけや熱意を忘れずに、問題意識を常に持ち続けてほしい

先生は、どのような経緯から現在の研究テーマを設定されたのでしょうか。

介護分野での男女共同参画という観点から、男性介護者の実態調査を始めたのがきっかけです。2006年京都で息子による介護殺人事件がメディアで大きく報道されましたが、男性が介護にかかわる過程において直面する固有の問題とは何か、どのような支援が必要かということについて、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を立ち上げ、男性介護者を組織化することを通じて、当事者に寄り添いながら課題を抽出してきました。同時に、家族の多様化によって、男性だけではない、さまざまな家族介護に関わる問題が見えてきました。現在は、家族介護者支援というより包括的なテーマで、国際的な政策比較なども視野に入れて研究をするようになりました。

先生は、これまで研究上の大きな困難にぶつかったことがおありでしょうか。
また、その場合どのようにしてそれを克服されましたか。

現在、実際の介護殺人事件のケース分析から、介護者が介護をどのように捉えていたのか、なぜ抱え込んでしまったのか、SOSは発せられたのか/発せられなかったのか、支援者がSOSをきちんとキャッチする体制はあったのか、どのような関係機関の連携が必要なのかを考察することで、事件の予防策を検討していますが、事件の詳細を知る場合には、情報提供や関係者とのやりとりにおいて、大きなハードルがあります。研究の趣旨を真摯に伝え、いかに社会に還元しうるかを丁寧に伝えることを心がけています。

2年間の修士課程を終えて社会に出ていく院生に対して、大学院時代の成果をどのように実社会で生かしていくか、アドバイスをお願いします。

社会問題を研究課題として取り扱う場合に、すぐには解決困難な場合がほとんどだと思います。論文が完成すれば終わりではありません。研究を始めようとおもったきっかけや熱意を忘れずに、問題意識を常に持ち続けてほしいと思っています。今個人でできること、時間をかけながら他者と共に協力しながら出来ることなど、課題を分節化しながら、考え続けること、動き続けることこそが重要であると考えています。

将来研究職を目指す院生が早い段階から取り組んでおくべき課題があるとすれば、それは何でしょう。

個人での積み重ねが重要なのは言うまでもありませんが、他の院生・研究者とのネットワークの中で、自らの研究を発展させていくことが重要だと思います。分野にとらわれず広い視野や関係性をもつことによって、思わぬところからヒントが得られることも少なくないと思います。