法科大学院

FD活動

2023年度 第1回

  • 日時 2023年7月11日(火)15:35~16:40
  • 場所 205教室
  • 出席者 12名
テーマ 未修者の学力向上と成績評価の在り方について
報告者 ①趣旨説明  渕野 貴生 教授・FD委員長
②倉田 玲 教授(憲法)
③中山 布紗 教授(民法)

 2023年度の第1回FDフォーラムでは、「未修者の学力向上と成績評価の在り方について」をテーマとして取り上げた。未修者に法曹になるために必要な学力を身に付けさせ、司法試験合格率を向上させることは全国の法科大学院に共通する課題であるが、本学法科大学院においても、標準年限修了率についても、司法試験合格率についても、未修者は既修者に比べて相対的に低い状況が続いており、喫緊の課題として認識されている。法務研究科では、とくに未修1年次に対して、段階的な学修に即した授業を行い、丁寧な添削指導を行うなど、各教員が工夫を凝らして法律基本科目の基礎的な知識を定着させるべく奮闘してきた。しかしながら、未修者間の学力格差が拡大する傾向にあることなど、未修者に対するきめ細かな教育の必要性が高まる一方で、未修入学者数の増加等によって、手厚い教育を行うための環境はますます厳しくなりつつあるという現状がある。そこで、今回は、主として未修1年次の法律基本科目の授業担当者から、成績評価の在り方とも関連付けて、授業の内容・方法および受講生の理解度について報告してもらい、教員間で意見交換とグッドプラクティスの共有を図ることとした。

 まず、倉田玲教授から、憲法Aおよび憲法Cの事例を中心に紹介がなされた。憲法Aでは授業期間中に、2回のレポートと4回の小テストを行い、きめ細かく学修の機会を付与し、授業において学修したことが定着しているかどうかをその都度確認している様子が報告された。また、授業において、事前に配布されている教材に列挙されている導入質問について、受講生に指名して解答を求めることによって、受講生の予習の成果を確認しながら授業を進行している状況が報告された。なお、授業中の受講生の応答や小テストの結果は良好で順調に学修が進んでいる様子がうかがえるとのことであった。

 憲法Cにおいても、教材に列挙されている予習と復習のための設問について、受講生を指名して解答させながら授業を進めており、受講生の学習到達度を確認しながら授業を展開している状況が報告された。また、憲法Cにおいても、レポートの成績は良好で、憲法においてはいわゆる二極分化と呼ばれる現象は生じていないことが指摘された。

 次に、中山布紗教授から、民法では、2019年度以降、未修者間の学力格差が大きくなっており、いわゆる二極分化の傾向が強まっていることが指摘されたうえで、そのような状況のもとで、厳格な成績評価を保ちつつ、受講生の学修に対するモチベーションを維持しつづけるために、中間到達度検証試験における成績の出し方について悩みながら授業を実施している様子が報告された。また、未修者は、司法試験合格に向け、時期に応じて段階的に学修を積み重ねていくという思考が苦手で、あれもこれもと飛びつき、かえって成果が上がらないという悪循環に陥っているのではないか、との分析が示された。そのため、基礎知識を定着させる時期、論文起案力を高める時期など具体的で詳細な学習計画を提示し、とくに未修1年次においては基礎知識の定着という一点に絞ったピンポイントの目標を示すことが必要でないかとの指摘がなされた。さらに、最終到達度確認試験も基礎知識の定着を確認することを重視した出題形式を検討する必要があるのではないか、との問題提起が行われた。

 以上の報告を受けた質疑・議論では、中間到達度確認試験や中間レポートについては、到達目標を達成できていないと考えられる受講生に対して再提出を求めることが効果的ではないか、あるいは、設問を細かく設定して、論証の筋道を誘導しながら解答させる出題形式も効果的ではないか、という意見が出された。また、資料に記載しているにもかかわらず、その内容を読み取れない受講生が散見されることから、資料の読み方というところから学修指導を行って情報リテラシーを高める必要がある、中間到達度検証や最終到達度検証において配布した講評について、問題文と照らし合わせながら読むのではなくて、解説文だけを読んでいる受講生が散見されるので、講評にもう一度問題文を合わせて付けて配布することで理解を促している、といった意見が出された。

 以上のように、本フォーラムにおける各報告と質疑応答・意見交換を通じて、未修者の学力向上に向けた授業実践や成績評価に強い関連性を有する出題の在り方等に関する様々な工夫が共有されたといえる。共有された課題とグッドプラクティスについて、2023年度秋学期以降の授業運営において、各教員が活用していく旨が確認された。

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