法科大学院

FD活動

2023年度 第2回

  • 日時 2023年11月21日(火)15:15~16:10
  • 場所 203教室
  • 出席者 14名
テーマ 司法試験パソコン受験化に向けた教学上の対応
報告者 ①趣旨説明  渕野 貴生 教授・FD委員長
②指定発言  中山 布紗 教授・副研究科長

 2023年度の第2回FDフォーラムでは、「司法試験パソコン受験化に向けた教学上の対応」をテーマとして取り上げた。法務省は、司法試験について、2026年からパソコンを使った(CBT)方式を導入する方針を発表した。従来、司法試験は手書きで答案を作成する方式で行われてきたため、教学上も、定期試験(最終到達度確認試験)はすべて手書きで答案を作成する方式で実施し、日常的にはパソコンでの文書作成が一般化している受講生に対して、手書きに要する時間を体感させ、また採点者が最低限読解可能な文字を書く練習をさせてきたところである。これに対して、司法試験がパソコン受験化すれば、手書きでの答案作成を推奨する意味は全くなくなり、逆に、パソコン入力への習熟が必要になる。しかしながら、パソコン入力の習熟のみを目的として正課授業で対応することは困難であり、パソコン方式での試験執行についても、ハード面や公正性の確保の面で種々の課題が存在する。そこで、今回は、司法試験のパソコン受験化に向けて考えらえる教学上の課題を洗い出し、諸課題に対してどのように対応していくべきかについて、教員間で意見交換をすることとした。

 まず、FD委員長の渕野貴生教授から、論点整理が行われた。第一に、パソコン入力において、コピー&ペーストが許可された場合には、答案構成がおざなりになったり、過剰な量の答案が作成されたりする可能性が出ることに応じて、試験の出題について思考力をより一層重視する内容に変更する必要があるという意見が一部から出されていることが紹介された。第二に、受講生のなかには、パソコンでのタイピングを苦手としている者が一定数存在することから、これらの者に対して、タイピングのトレーニングをする機会を何らかの形で提供する必要性があるかという問題提起がなされた。第三に、定期試験等をパソコン方式で実施するとした場合に解決すべき課題が整理された。具体的には、まず、受験人数分のパソコンを準備できるかという問題からはじまり、六法について従来通り書籍タイプを使用させるかの、不正防止対策としてインターネット接続を遮断するだけで十分なのか、さらに予測変換学習機能をオフにする必要があるか、答案作成中に操作ミスにより答案を消してしまった場合の対応方法、答案の教員への受け渡しをデータで行う場合と紙媒体に印刷して行う場合それぞれについて生じうるコストなど、さまざまな技術的課題があることが明らかにされた。

 次に、指定発言として、中山布紗教授から、関関同立法科大学院連絡会議においてこれまでのところで得られている情報として共有された内容が紹介された。第一に、パソコンは受験生が所有する物を使用するのではなく、法務省が貸与する方針であること、第二に、不正防止のために専用のソフトが導入される方針であること、一方、六法について書籍タイプを使用させる方針かどうかは不明であることなどが報告された。

 以上の報告を受けた質疑・議論では、社会人院生でない学部から直接、法科大学院に進学してきている院生も、フリッカー入力に慣れていてキーボード入力に習熟していない者がおり、タイピングのトレーニングについて何らかのサポートが必要ではないか、学内試験のパソコン試験化については、キーボードの配置等が機種ごとに異なるので、司法試験で使用されるものと同一機種で実施しないと意味がないのではないか、人的にも物的にも限られたリソースのなかで実施しなければならない学内での試験において、パソコン試験で不正防止対策を万全に整えることは難しいのではないか、といった意見が出される一方、司法試験がパソコン受験化する以上、手書きでの答案作成を続けることに合理性があるとは言い難いのではないか、パソコンのスペックが多少違っても大きな問題にはならないのではないか、といった意見も出された。

 以上のように、本フォーラムにおける各報告と質疑応答・意見交換を通じて、司法試験のパソコン受験化に応じて、学内の試験の在り方や受講生の教学上のニーズの変化に対して、是々非々で対応していく必要性および今後の検討課題が共有された。そのうえで、今後も必要に応じて議論を重ねていく旨が確認された。

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