FD活動
2024年度 第1回
- 日時 2024年7月9日(火)14:30~15:44
- 場所 205教室
- 出席者 12名
テーマ | 現行カリキュラムの使いやすいところ、使いにくいところ |
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報告者 |
①趣旨説明 渕野 貴生 教授・FD委員長 ②報告 憲法分野 倉田 玲 教授 民法分野 中山 布紗 教授 刑法分野 大下 英希 教授 民事訴訟法分野 和田 吉弘 教授 刑事訴訟法分野 渕野 貴生 教授 行政法分野 湊 二郎 教授 |
2024年度の第1回FDフォーラムでは、「現行カリキュラムの使いやすいところ、使いにくいところ」をテーマとして取り上げた。司法試験在学中受験制度の実施が2年目を迎え、本学法科大学院においても、在学中受験予定者が1年目に比べて大幅に増加した。今後は、在学中受験が主流になりそうな状況となっている。しかし、在学中受験資格を得るためには、その要件として、既修1年次・未修2年次において、法律基本科目基礎科目30単位以上、法律基本科目応用科目18単位以上、司法試験選択科目4単位以上を修得している必要がある。そのこととの関係で、とりわけ履修免除を得ている既修入学者および法曹コース修了入学者以外の一般既修入学者について、現行カリキュラムには、年間履修単位上限に抵触して、司法試験受験にとって重要な法律基本科目の選択科目が在学中受験前に履修できないという問題がある。この問題点は、在学中受験制度が始まった初年度にも存在してはいたが、在学中受験者が主流になりつつある状況で、問題が一層顕在化してきたといえる。そこで、今回は、上記問題の顕在化を契機として、現行カリキュラムの利点および教学上の課題を洗い出し、諸課題に対してどのように対応していくべきかについて、教員間で意見交換をすることとした。
まず、各法分野から、当該分野における現行カリキュラムに対する意見が報告された。憲法については、倉田玲教授から、憲法A、憲法B、憲法Cが奇数単位数であることによって授業運営にやりにくさがあること、春学期に開講科目が集中していることなどが指摘された。民法については中山布紗教授から、扱うべき領域が広く、それに応じて修得すべき単位数も多いために、民法演習Ⅰと民法演習Ⅱで設定されている到達目標の違いが受講生に十分に伝わっておらず、単に扱う分野の違いという認識を持たれているのではないか、との懸念が示された。また、司法試験の準備として重要な科目であるにもかかわらず、民法総合演習、民法展開演習の受講者数が少ないという問題点も指摘された。刑法については、大下英希教授から、とりわけ既修者について、必修科目が刑法演習2単位しかなく、選択科目である刑事法展開演習も受講生が少ないために、司法試験に合格する学力をつけさせるために必要な授業時間数が絶対的に不足しているという問題点が指摘された。民事訴訟法については、和田吉弘教授から、司法試験の試験範囲を扱う民事訴訟法Ⅱが選択科目として既修1年次秋学期に設置されているが、履修登録上限に抵触して、一般既修入学者が在学中受験前に同科目を履修することができないという問題点が指摘された。刑事訴訟法については、渕野貴生教授から、現在開講されている刑事訴訟法Ⅰ、刑事訴訟法Ⅱ、刑事訴訟実務の基礎、刑事訴訟法演習で、司法試験へ向けた準備としては必要十分であり、刑事法展開演習の刑事訴訟法部分は不要であるという指摘がされた。また、実務総合演習の位置づけが不明確であることと相俟って、履修時期を在学中受験の直前となる既修2年次・未修3年次春学期に置くことが適切かどうか検討する余地があるのではないかとの問題提起もなされた。行政法については、湊二郎教授から、現行カリキュラムにおいて行政法演習Ⅱが新設された結果、既修1年次・未修2年次春学期から既修2年次・未修3年次春学期を通じて、シームレスに行政法科目が配置されており、行政法のカリキュラムとしては良くできているという指摘がなされた。
以上の報告を受けた質疑・議論では、法曹倫理は法律基本科目について一通り修得したのちに履修したほうが学修効果を見込めること、法律基本科目の選択科目を履修可能とするためには既修1年次・未修2年次における必修単位数を減らす必要があることから、法曹倫理を既修2年次・未修3年次秋学期に配置することを検討してはどうか、実務総合科目の位置づけが受講生にとっても不明確なところがあるため科目内容を再検討するとともに、実務基礎科目として、既修2年次・未修3年次秋学期に配置することを検討してはどうか、既修2年次・未修3年次春学期に配置されている法律基本科目の必修科目については、司法試験直前期に欠席者が多くなる傾向が出てきており、セミクォータ制的運用をするなどして6月までに授業を終わらせる対応を考えるべきか、などの意見が出された。他方で、在学中受験前に法律基本科目を集中させると、受講生にとって負担が過多となり、消化しきれずにかえって学習効果の面でマイナスに働く危険があるうえ、既修2年次・未修3年次秋学期における法律基本科目の履修が手薄になることで、修了後1回目の司法試験受験にとっても逆効果になるおそれがあることが指摘された。
以上のように、本フォーラムにおける各報告と質疑応答・意見交換を通じて、受講生の司法試験在学中受験に対する動向を見据えながら、カリキュラムを見直す必要があるかどうかを冷静に見極め、是々非々で対応していく必要性および今後の検討課題が共有された。そのうえで、今後も必要に応じて議論を重ねていく旨が確認された。