FD活動
2024年度 第2回
- 日時 2024年12月17日(火)15:30~16:30
- 場所 204教室
- 出席者 教員11名 職員3名
テーマ | 法曹コース修了入学者の学修状況および学修到達度について |
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報告者 | 渕野 貴生 教授・FD委員長 |
2024年度の第2回FDフォーラムでは、「法曹コース修了入学者の学修状況および学修到達度について」をテーマとして取り上げた。法科大学院においては、法学部法曹コース修了者の入学受け入れを2022年度から開始し、2022年度入学者のうち、標準修了年限に従ったものは、2023年度末に法科大学院を修了した。また、2023年度入学者は、現在、法科大学院において最終セメスターを履修中である。そのため、2022年度入学者については、法科大学院修了時累積GPAのデータを活用することが可能となっており、2023年度入学者については、法科大学院最終学年(S2)春学期終了時までの累積GPAデータを活用することが可能になっている。さらに、法科大学院における履修と並行して、司法試験在学中受験も実施されており、2023年度入学者のなかにも、司法試験を受験した者が複数、存在する。2024年度司法試験については、既に2024年11月に最終結果が出されていることから、法科大学院における正課の成績と司法試験の合否との相関関係なども分析可能となっている。
以上の通り、ある程度、分析可能なデータが揃いつつある情況が存する一方で、本学法科大学院における法科大学院公的支援見直し・機能強化構想でも、法曹コース修了者の学力向上の実質化を目指す取組が、重点項目として掲げられていることから、法曹コース修了入学者の学修状況および学修到達度について、現状を正確に把握し、入学者に対する個別の学修指導やカリキュラム改革(クラス別編成など)の要否に関する議論の素地を整えることが喫緊の課題になっているといえる。そこで、今回は、法曹コース修了入学者の学修状況および学修到達度について、いくつかの視点から分析を試み、今後、教育上、取り組むべき課題について教員間で意見交換をすることとした。
まず、FD委員長の渕野貴生教授から、各種データの分析結果が報告された。第一に、法科大学院入学後の成績と司法試験合否との関係については、司法試験合格者のほうが司法試験不合格者よりも、累積GPA平均値が約0.6ポイント高いことから、司法試験合否と法科大学院における正課の成績との間には一定の相関関係があること、他方で、在学中受験不受験者の平均累積GPAは、法科大学院生全体の平均累積GPAの中上位に位置しており、法科大学院での成績が中上位に位置していても、法科大学院修了後に司法試験を受験する学習計画を立てている者もいることが明らかになった。第二に、エクステンション企画の利用度と司法試験合否結果との相関関係を見ると、司法試験合格者のほうが、不合格者に比べて、平均すると約2倍、企画参加数が多く、司法試験合否とエクステンションの積極的利用度との間には相関関係が見られた。第三に、法曹コース修了入学者と一般既修入学者の法科大学院入学後の平均累積GPAを比較すると、法曹コース修了入学者のほうが、一般既修入学者に比べて、約0.1~0.3ポイント、平均累積GPA平均が高いことが明らかになった。第四に、司法試験合格者の法学部卒業時の累積GPAは、司法試験不合格者及び不受験者よりも、約0.2ポイント高いことが分かった。すなわち、法学部法曹コースの成績上位者は、法科大学院入学後も成績上位を保ったうえで、司法試験に合格する傾向が見られるといえる。
以上の報告を受けた質疑・議論では、まず、他大学、すなわち、立命館大学以外の法学部の法曹コースを修了して立命館大学法科大学院に進学した者については、学部時代の成績を把握できないことが、例えばコース制の選抜をする際に、選抜資料の不足を生じさせるおそれがあるのではないか、という指摘がなされた。次に、法学部法曹コースでの教育に関して、法曹コース修了者であっても、基礎知識が足りないという印象をもつ者が見られるので、法学部法曹コースでの教育として、基礎知識の定着に一層力を入れる必要があるのではないかといった意見や、司法試験が7月に移行したことで、4月から6月頃が、司法試験の直前の準備期に当たり、学習指導のニーズが最も高くなっている一方で、同時期は、法学部生も法科大学院入試の直前期に当たり、法学部法曹コース在籍者の学習指導ニーズも高まっているため、学習指導を求められる時期が集中して、その時期の教員側の負担が増しているなどの意見が出された。さらに、法科大学院入学後の個別指導やグレード制との関係では、現在の学生定員のもとでグレード制を導入すると、中間層が分断されることになり、引き上げ効果が薄れてしまうという意見や、オーダーメードの個別指導というのは難しくても、一定の履修モデル的なものを示してあげることには意味があるのではないかとの指摘がなされた。また、法曹コース出身者に対する個別指導をするためには、授業を担当する個々の教員が、どの受講生が法曹コース出身者かを把握しておく必要があり、把握する方法として、クラス個人面談の際の質問項目に加えておくという方法があり得るが、クラス個人面談表は回収資料になっていて常時確認できないという問題があるという意見と同時に、個人情報保護の観点も重要なので、簡単に解決できないという指摘もなされた。
以上のように、本フォーラムにおける報告と質疑応答・意見交換を通じて、法曹コース修了入学者に対しては、法学部法曹コースでの教育の在り方も見据えながら、入学者の履修動向や、司法試験在学中受験動向をできる限り詳細かつ正確に把握し、カリキュラム改革の要否や個別指導の在り方に活かしていく必要があることおよび、今後の検討課題が共有された。