ニュース

ニュース

reserch||

教養科研プロジェクト実施報告 第3回研究会「大阪市立大学における人権教育科目群を活用した新たな展開について」

第3回研究会:
大阪市立大学における人権教育科目群を活用した新たな展開について 

【開催日】 2021年8月26日(木)14:00~16:00  

本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催する研究会シリーズである。

 大阪市立大学人権問題研究センター教授で国際人権・人権教育論が専門である阿久澤麻里子先生に話を聞いた。センターは人権問題の解決に研究・教育を通じて貢献することを目的とした研究機関である。「部落問題論」「人権教育/同和教育論」「ジェンダー論」「エスニック・スタディー」「障害者問題論」「障害者差別論」「法制史における差別」「医療倫理」「医療と人権」「環境問題と人権」をテーマに研究を組織している。そこの専任教授である。とくに印象深い点は次の2つである。

 第一は、世界の人権教育プログラムについてである。先生が各地のプログラムを調査した結果が大変参考になった。2008年の段階での報告によれば、人権関係で97プログラムがある。なんらかの学位プログラムとなっている。修士(53)、法学修士(40)、その他学位(1)、ディプロマ(2)、修了証明プログラム(1)である。修学期間は、1年間が81プログラム、2年間が13プログラム、一年半が3プログラムであったという(詳細は「世界の大学院における『人権修士』プログラムの意義と課題」、『部落解放研究』第183号 2008年10月に記されている)。もちろんどのような専門であれ当該領域に相応しい人権や倫理の視点はあるはずだし、それも含めて学部・研究科は教授しているが、それだけではなく人権研究プログラムとして包括的に構成し、まとめ上げて学位プログラムとして体系化が進む世界の動向を知ることが出来た。

 第二は、センターも貢献して大阪市大で構築されている「共通教育としての人権教育」の豊富さである。現代の部落問題、メディアと人権、グローバル化と人権、障がい者と人権、ジェンダーと現代社会、エスニック・スタディ、クィアスタディーズ入門、企業と人権、地球市民と人権、労働と人権、平和と人権、人権と多様性の研究の科目群が開講されている。講義だけではなく演習や大学院教育としても展開しているという。

 報告を受けて議論し、印象に残っている論点として、リベラルアーツとしての人権教育の編み上げについてである。「共通教育」は立命館大学でも採用している名称と位置づけであるが、どちらかといえば機能的な言い方である。それを超えてリベルラルアーツとしていく必要性を感じた。専門教育を充実したものにしていくためにもこうした人権と倫理に関わる主題はどの分野でも必要となるだろう。その上で分野横断的に横串をさし、学問を追究するうえでも必要となるテーマとしていく際にリベラルアーツとして位置づけることが有益ではないかとヒントをいただいた。自由に生きることを阻害している差別と排除をクリアにするためにも人権教育とのすり合わせをしたいと思った。教養知とは何かを考えさせてくれる交差領域にリベラルアーツと人権教育があると示唆を受けた。

 なお、研究会は、2021年8月26日(木)14時~16時に衣笠キャンパス清心館SE201教室を拠点にオンラインで開催された。

 (報告:中村正/産業社会学部・人間科学研究科)

一覧へ戻る