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「どうすべき?」から「なぜそう考えるのか」へ ― 学生の問いを深めた「学びとキャリア」特別講義
「学びとキャリア」は、学部1・2回生を対象とした全学型キャリア教育科目の導入科目です。現代社会の課題を題材に、学部を越えた対話やグループワークを通して、大学で学ぶ意味やこれからの自分の学びについて考えます。
本年度の第13講では、京都大学学際融合教育研究推進センター准教授で、学問論・大学論を専門とする宮野公樹先生をお招きし、衣笠・BKC・OICの3キャンパスで特別講義を実施しました(OICはライブ配信)。学生たちは、宮野先生が投げかける問いや考えに触れながら、大学で学ぶことの意味や、自分自身は何を大切にして生きるのかについて考えを深めました。
[写真1:講師・京都大学学際融合教育研究推進センター准教授 宮野公樹先生]
答えを求める問いから、考える問いへ
講義に先立ち、学生たちから宮野先生に聞いてみたい質問を寄せてもらいました。
- 「大学で学ぶことは将来役に立つのか」
- 「教養科目にどういう意味があるのかわからない」
- 「就職や将来のキャリアをどのように考えればよいのか」
- 「自分らしく生きていくためにはどうすればいいのか」
宮野先生はこれらを丁寧に読み解き、学生たちが大学の学びの実用性や将来への不安、社会のものさしと自分のものさしの間で揺れていることを指摘しました。一方で、問いの多くが「正解」や「答え」を求める形になっていることにも言及し、問いの立て方そのものに目を向けました。
そこからの講義では、「どうすべきか」という答えを探すのではなく、「なぜそう考えるのか」「自分はどうしたいのか」を問い直すための問いかけが続きました。
当たり前を問い直す対話 ― 悩むな。考えよ!
講義の中で繰り返し投げかけられたのは、「成功とは何か」「失敗とは何か」「役立つとは何か」「働くとは何か」「生きるとは何か」といった根本的な問いでした。
宮野先生は、キャリアを一直線の道のりとして捉え、そこから外れることを失敗と考える風潮に疑問を呈しました。また、「どうすべきか」を外に求めるのではなく、「自分はどうしたいのか」を問い続けることの重要性についても語りました。
さらに、「成功」や「失敗」といった概念そのものを問い直し、それらは一面的なものではなく、人生の豊かさや幸せを測る唯一の尺度ではないことを示しました。未来は予測できず、何が役に立つかも分かりません。だからこそ、社会のものさしだけではなく自分のものさしを持ち、考え続けることの大切さについて、学生たちは思いを巡らせました。
[写真2:講義の様子]
[写真3:講義の様子]
「問い」に学び続けることが、大学での学びにつながる
講義の終盤、宮野先生は、学問とは「問いに学ぶ」ことであり、自分を見つめる目を自分の中に持つことだと語りました。自分自身や人間の存在について深く考え、その土台を築くことが、豊かに生きることや幸せにつながるという考えです。
また、理工学、文学、法学、経済学など分野は異なっていても、突き詰めて考えれば人間や社会、世界そのものを理解しようとする営みに行き着くと説明しました。その意味で、専門は異なっても学問は一つであるという視点が示されました。
そして、大学は知識やスキルを身につけるだけの場所ではなく、自分自身や社会について深く考え、問い続けるための場所、「善き人間」を育む場所であることも強調しました。正解を覚えることだけではなく、「なぜそうなのか」を考え続けること、そして時には「分からない」という状態そのものと向き合うことも学びの一部であるという考えが示されました。
今回の特別講義で、学生たちは明確な答えを得たわけではありません。しかし、「答えを探すこと」以上に、「問い続けること」に価値があるという視点に触れました。自ら問いを立て、自分なりの考えを深めていくことの大切さを学ぶとともに、「大学で学ぶとはどういうことか」を改めて考える機会となりました。
<学生の声>
※一部抜粋
- 特に印象に残ったのは、「学問は答えを得ることではなく、問い続けること」という話である。私はこれまで、大学での学びは正解を見つけることだと思っていた。しかし先生は、「よくわかった」よりも「余計わからなくなった」状態の方に価値があると述べており、学問に対する考え方が変わった。
- 講義を通して最も印象に残ったのは、「役に立つ」という概念の問い直しだ。これまで大学で学ぶことは仕事で役に立つかどうかという基準で考え、役に立たないと感じる授業にはあまり価値を見いだせていなかった。しかし、「役に立つ」という判断自体が現在の価値観に縛られており、将来どこでその知識や経験が生きるか分からないと気づいた。
- 私は「失敗」は「成功」の対義語であり、目標を達成できなかったり負けてしまったりすることを指すのが当たり前だと思っていた。しかし宮野先生の話を聞いて、思い通りに進まないことだけが失敗ではなく、うまくいかなかった理由を考えたり、より良くなるように改善策を考えたりすることにも意味があるのだと気づいた。
- 今回の授業を通して、私は自分が将来に何を求めているのかが、以前にも増して分からなくなった。しかし、それは決して悪い意味ではなく、社会が描く理想像に知らないうちに自分を当てはめようとしていたことに気づけたからである。これからは、「周りが頑張っているから」「みんながやっているから」という理由で流されるのではなく、自分が本当にやりたいことは何なのかを見つめ直していきたい。そして、「正解」や「ちゃんとしている」といった曖昧な価値観に惑わされることなく、自分らしさを大切にしながら、常に学び続ける姿勢を持って生きていきたいと強く実感した。
[写真4:講義の様子]
「国の行政組織」:文部科学省_少子化と高校のあり方を中心に、日本の「未来」を考える
本学で開講される「国の行政組織」は、各省庁から職員を派遣いただき、学生が日本の社会課題や国家公務員の役割について理解を深めることを目的としています。
今回は、少子化が日本社会や教育に及ぼす影響と、その中で高校教育をどのように維持・発展させていくのかについて、文部科学省研究振興局参事官(情報担当)付企画係長・藤田晃士氏をゲスト講師としてお招きし、ご講演いただきました。
授業冒頭、藤田氏ご自身のキャリアについてご紹介いただきました。文部科学省入省後は、初等中等教育局において、少子化が進む地域の高校教育や、全日制・定時制・通信制のあり方に関する制度検討に従事されました。その後、こども家庭庁において「こどもまんなか実行計画」の取りまとめや少子化対策に携わり、現在は文部科学省で、研究活動におけるAI活用を推進する「AI for Science」など、情報科学技術政策を担当されています。
続いて、文部科学省が教育、科学技術、スポーツ、文化という幅広い政策分野を担い、「人」と「知」の力によって我が国の未来を創造する組織であることが説明されました。社会や価値観が変化する中でも、社会が人と知によって成り立つことは変わらず、人材の育成や新たな価値の創出を通じて国の未来を支えることが文部科学省の使命であると語られました。
講演の中心となった少子化については、2024年の出生数が68万6,173人、合計特殊出生率が1.15となり、いずれも過去最低を記録したことが示されました。その背景には、未婚化の進行に加え、子育てや教育にかかる経済的負担、仕事との両立、育児の心理的・身体的負担など、複数の要因が存在しています。少子化対策には、経済的支援だけでなく、若い世代の所得向上、共働き・共育ての推進、社会全体の構造や意識の変革を一体的に進める必要があると説明されました。
少子化の進行は、高校教育のあり方にも大きな影響を及ぼします。15歳人口は2023年度の約108万人から、2038年度には約74万人まで減少することが見込まれています。また、全国の市区町村のうち、公立高校が一校もない、または一校しかない自治体は約64%を占めており、特に地方では学校の小規模化が避けられない状況にあります。
小規模校には、一人ひとりの学習状況を把握しやすく、地域と連携した教育を展開しやすいという利点がある一方、開設できる科目や部活動が限られること、多様な考え方に触れる機会が少なくなること、教職員配置が難しくなることなどの課題もあります。学校の統廃合だけで解決するのではなく、地域における高校の役割と教育機会の確保を両立させる視点が重要であることが示されました。
こうした課題への対応として、文部科学省では、高校教育における「多様性への対応」と「共通性の確保」を基本的な考え方に掲げています。具体的には、遠隔授業の要件緩和、通信教育の活用、学校や課程、学科の垣根を越えたネットワークの構築などを通じて、居住地域や学校規模にかかわらず、多様な科目や専門的な学びにアクセスできる環境整備が進められています。
講演を通じて、少子化は単なる人口減少の問題ではなく、地域社会の持続可能性や、若者がどこに暮らしていても必要な教育を受けられる環境をどのように保障するかという、日本の未来に直結する課題であることが示されました。
藤田氏が仕事をする上で大切にしている姿勢として紹介されたのが、「敬意あるコミュニケーションを礎に、次なる一手を考え続ける」という言葉です。現場や関係者との対話を重ねながら、社会の変化を捉え、制度を構想し実行に移していく国家公務員の仕事の意義と責任について理解を深める機会となりました。受講生からも多くの質問が寄せられ、非常に活発な時間となりました。
立命館大学×ホテル日航プリンセス京都 コーオプ演習(実践)受講生の提案が形に ~チャイニーズアフタヌーンティー~
2025年度「コーオプ演習(実践)」受講生が、ホテル日航プリンセス京都と連携し、「未来の顧客」をつかむ施策として企画・提案した「チャイニーズアフタヌーンティー」が、中国料理「翡翠苑」にて5月より提供されています。
コーオプ演習(実践)では、学部横断的に編成されたチームが、企業や団体から提示される現実のテーマに基づき、問題発見・課題解決のプロセスに沿ったプロジェクト型学習を行います。本演習では「中国料理『翡翠苑』の入客数を増やすためには」をテーマに、市場調査やコンセプト設計、メニュー提案に学生たちが主体的に取り組み、約半年間にわたりホテルスタッフとの意見交換を重ねてきました。
点心や中華スイーツ、季節の食材を取り入れた軽食を組み合わせ、従来のアフタヌーンティーとは一味違う魅力を、中国茶とともに楽しめる内容となっています。
[写真1:初夏の訪れを感じる‘緑’をテーマカラーとしたラインナップは、6月末まで楽しめます。]
チャイニーズアフタヌーンティーの提供が始まった5月、「ホテル日航プリンセス京都チーム」のメンバー5名が「翡翠苑」に集い、自分たちが提案したチャイニーズアフタヌーンティーを実際に体験しました。
2025年12月の最終提案から約5か月。自分たちの提案が商品として形になったことについて、」学生たちは「採用されるとは思っていなかったので驚きました!」
「細部までこだわった提案が再現されており感動しました。同時に、より良いものにする余地についてもチームで議論するほど思い入れのある企画です。」
「多くの方に楽しんでいただけることを願っています!」
と、驚きや喜び、達成感を語ってくれました。
また、三ケ山料理長との懇談の中では、今後、季節ごとに変化するメニューにも学生のアイデアを反映していきたいとの言葉もあり、引き続き意見交換を行っていく予定です。
「コーオプ演習」は、産学連携によるプロジェクト型学習プログラムです。学生たちは多様な視点を活かしながら協働し、実社会で求められる力を養うとともに、自らのアイデアを形にする貴重な経験を得ています。
学生からは、
「授業の一環として企画立案に関わる機会を得られたことに大きな意義を感じています。企業の方や教員、事務局の皆さまに支えていただき、自身のキャリア形成にも影響する経験となりました。」
「チーム活動においては意見の衝突や困難もありましたが、多様なメンバーと協働し、粘り強くやり遂げたことが大きな自信になりました。」
といった声が寄せられています。
学生たちが企業との協働を通じて企画力・実践力を磨き、自らの学びを社会に接続する貴重な経験を得たことがうかがえます。
これもひとえに、連携企業の皆さまによる長期にわたるご指導や研修、情報提供など、深いご理解と温かいご支援の賜物です。ここに改めて心より御礼申し上げます。
[写真3:最終提案を終えた学生たち(2025年12月12日ホテル日航プリンセス京都エントランスにて)]
◆「チャーニーズアフタヌーンティー」提供概要
ホテル日航プリンセス京都 公式サイト:
https://www.princess-kyoto.co.jp/restaurant/restaurant_plan/133783/
「日本の近現代と立命館」仲谷総長特別講義―「挑戦をもっと自由に」
2026年4月20日(月)、大阪いばらきキャンパスで開講中の教養科目「日本の近現代と立命館」において、仲谷善雄総長が登壇し、特別講義を行いました。
本科目は、教養科目群「立命館科目」の一つとして位置づけられており、複数の教員によるリレー形式で授業が展開されています。学園創設から現在に至るまでの歴史や教学理念、そして現代社会において大学が直面する課題について、日本の近現代史と重ね合わせながら学ぶことを目的としています。
仲谷総長は「挑戦をもっと自由に」をテーマに、立命館がこれまで積み重ねてきた数々の挑戦を振り返りつつ、現在、そしてR2030チャレンジ・デザインにおいて目標として掲げる「次世代研究大学の実現」「イノベーション・創発性人材の育成」に向けた多彩な取り組みを紹介しました。
講義の前半では、立命館の根幹を成す「建学の精神」と「教学理念」について解説。さらに、全学協議会や総長公選制など、教職員に加えて学生・生徒も学園運営の担い手と位置づけてきた、立命館ならではの民主的ガバナンスの歴史へと話題が広がりました。
続いてテーマは「自ら変わる大学」へ。教学の積極的な展開、グローバル化の推進、研究力の高度化、社会連携、そしてDE&Iの推進など、近年立命館が進めてきたさまざまな改革について紹介されました。関係省庁との緊迫したやり取りなど、総長ならではの視点から語られる挑戦の裏側は、受講生に強い印象を与えました。
講義後半では、現在進行中の大型プロジェクトにも言及。これまで継続してきた研究力高度化の取り組みが結実し、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)や宇宙戦略基金事業SX研究開発拠点といった大型事業への採択につながっていること、さらに宇宙地球フロンティア研究科(仮称)構想へと発展し、「次世代研究大学」の実現に向けた動きが着実に進んでいることが紹介されました。
なかでも終盤、学生の関心を大きく引きつけたのが、RIMIXやSEEDSといった本学の起業支援プログラムです。「イノベーションを生み出す人材をいかに育てるか」という大学の姿勢が、受講生にも強く伝わる時間となりました。
講義の最後に、仲谷総長は1回生を中心とした受講生に、次の問いを投げかけました。
「この立命館大学で、あなたはどのような挑戦をしますか。」
挑戦はどんなに小さなものであっても構わないこと、まずは一歩を踏み出すことが大切であること、そして達成のためには信念を持って諦めず、一人で抱え込まずに周囲を巻き込むことの重要性が語られました。
自身の挑戦のために、立命館という環境を存分に使い尽くしてほしい――そんな熱いエールとともに、特別講義は締めくくられました。
本科目は各キャンパスで開講。2026年6月15日(月)衣笠、2026年10月19日(月)びわこ・くさつキャンパスにおいても仲谷総長による特別講義を実施します。受講生以外もぜひ奮ってご参加ください。
[写真1:講義の様子]
[写真2:質疑応答の様子]
地域と向き合い、学びを言葉にする――「シチズンシップ・スタディーズ」活動報告会を開催
立命館大学サービスラーニングセンターが開講する正課科目「シチズンシップ・スタディーズ」は、教養科目C群「社会で学ぶ自己形成科目」のひとつです。
地域社会で行われる事業に参加し、その運営を支えながら、地域に関わる人々の役割や責務を体験的に学ぶとともに、現場と教室を往還しながら学びを深めるサービスラーニング手法に基づく科目です。
本科目は3キャンパスで開講しており、2025年度は11団体の協力のもと、受講生が多様なプロジェクト・プログラムに取り組みました。
2025年12月21日、衣笠キャンパスにて、全クラス合同の「2025年度シチズンシップ・スタディーズ活動報告会」を開催しました。
当日は、受講生を受け入れていただいた団体の方々にもご参加いただき、受講生はポスターセッション形式で、自らが取り組んだ活動について発表しました。
発表に加え、受入先団体の方々や担当教員、他の受講生との質疑応答や意見交換を通して、受講生が自らの経験を振り返り、活動の意義や課題を言葉にしていく中で、さらに学びを深めていく姿が見られました。
[写真1:ポスターセッション発表の様子]
発表内容からは、地域の現場で他者と協働するなかで、社会課題への認識を深め、「問いを探す」「次の行動につなげる」といった学びが育まれていることがうかがえました。
活動報告会は、各プロジェクトの成果を共有する場であると同時に、受講生一人ひとりが地域との関わりのなかで得た気づきや成長を見つめ直す機会にもなりました。
サービスラーニングセンターでは、今後も地域とともに学ぶ実践を通して、学生の主体的な学びを支えていきます。
[写真2:受入団体の方からの講評]
なお、サービスラーニングセンターでは、今回の活動報告会の様子を含むサービスラーニング科目紹介動画を公開しています。記事とあわせて、学生たちの学びの現場を動画でもぜひご覧ください。
【関連リンク】
【開催報告】産官学の視点で「ケア×社会」を再考する ——「超領域リベラルアーツ サロン in ROOT」を開催
2026年2月4日(水)、立命館大学が大阪・うめきたエリアに開設した新拠点「グラングリーン大阪 ROOT」にて、スピンオフイベント「超領域リベラルアーツ サロン in ROOT」が開催されました。
本イベントは、2025年度秋学期に開講された超領域リベラルアーツ科目「ケアする人のケア(ケアラー支援)から問う新しい社会デザイン」の発展企画であり、2025年度GPSP(R2030 推進のためのグラスルーツ実践支援制度)に採択されたプロジェクト「超領域リベラルアーツ × 立命館アカデミックセンター:知の交差点から共創する社会人教養教育の未来」により実施されたものです。
当日は、授業を受講した学生に加え、企業、行政、NPO関係者など約30名が集結。JST-RISTEX(社会技術研究開発センター)採択プロジェクト「ケアの葛藤によりそい、ケアラーの社会的孤立・孤独を予防する包括的支援システムの構築」とも連動し、デジタル技術や企業のパーパス経営といった多様な視点から、ケアラー支援と新しい社会のあり方について語り合いました。
[写真0:会場全景や参加者が集まっている様子]
◼️「21世紀の難問」に挑む、超領域の学び
冒頭、教養教育センター長の山中司先生(生命科学部教授)が登壇し、本イベントの趣旨を説明しました。山中先生は、21世紀の社会課題は単一の専門分野だけでは解決できない「難問」ばかりであると指摘。「学部の学びを相対化し、異なる知恵を持ち寄ることでしか解決できない問題がある」と述べ、文理の枠を超えて多様なバックグラウンドを持つ参加者が集う本サロンの意義を強調しました。
[写真1:山中先生の挨拶の様子]
続いて、本テーマの核となるJST-RISTEXプロジェクト代表の斎藤真緒先生(産業社会学部教授)より、ケアラー支援の現状についての話題提供がありました。斎藤先生は「ケアは福祉だけの問題ではなく、私たちの日常や働き方、企業活動とも密接に関わるテーマ」と語り、この場が学生と社会人、研究者と実践家をつなぐネットワークの起点となることへの期待を寄せました。
[写真2:斎藤先生が話している様子]
◼️企業が「ケア」に取り組む意義とは? —— 日本イーライリリー株式会社
製薬企業である日本イーライリリー株式会社(神戸市)のコーポレート・アフェアーズ本部、企業広報課長・川副祐樹様にご登壇いただきました。同社が2022年から展開している「ヤングケアラー リエゾンプロジェクト」についてご紹介いただきました。
[写真3:日本イーライリリー 川副様のプレゼンテーション]
川副様は、製薬企業がなぜ直接的な医薬品の開発だけでなく、ヤングケアラー支援に取り組むのかという問いに対し、「患者さんを支える家族もまた、豊かな人生を送れる社会であってほしい」という企業のパーパス(存在意義)に基づく活動であることを説明されました。
同社の活動は、「直接支援」ではなく、支援団体や行政、学校などをつなぐ「リエゾン(架け橋)」としての役割に徹しているという点でユニークです。専門家の知見を尊重しつつ、企業のリソース(社員ボランティアや発信力)を活用して社会的な認知を広げるこの取り組みは、社員のエンゲージメント向上にも寄与しており、企業と社会双方に価値を生むモデルケースとして参加者の関心を集めました。
◼️テクノロジーが拓くコミュニケーションの可能性 —— 京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社
続いて、京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社のマーケティング統括部、東京マーケティング部部長・原康二様より、字幕表示システム「Cotopat(コトパット)」を例とするテクノロジーとケアの関係性に関するお話しをいただくとともに、実機のデモンストレーションが行われました。
[写真4:京セラドキュメントソリューションズ原様のプレゼンテーション]
Cotopatは、話した言葉がリアルタイムで透明スクリーンやタブレットに字幕として表示されるシステムです。元々は聴覚障がいのある方とのコミュニケーション支援から開発がスタートしましたが、現在はその翻訳機能を活かし、言語の壁がある外国人との対話にも活用が広がっています。
原様からは、この技術が「言葉のヤングケアラー(日本語が話せない親の通訳を子どもが担うケース)」の負担軽減や、教育現場での多文化共生に寄与する可能性についてお話しいただきました。「技術によって、誰もが孤立せずにつながれる社会を作りたい」というメッセージと共に、実際に会場でその精度とスピードを体験する機会が設けられ、多くの参加者が最新技術に触れました。
[写真5:Cotopatの実機デモの様子、スクリーンに文字が表示されているところ]
◼️世代や立場を超えた対話 —— グループワークと交流
[写真6:グループワークで議論する参加者の様子]
各トークセッションの後には、学生、企業人、研究者が混ざり合ったテーブルで、「なぜケアラー問題に関心を持ったのか」「企業の取り組みをどう感じたか」について活発な意見交換が行われました。
ディスカッション後の発表では、参加者から以下のような鋭い気づきや感想が共有されました。
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企業の社会的責任の捉え直し
「企業活動=利益追求というイメージがあったが、ボランティアや社会貢献が結果として社員のやりがいや企業価値の向上につながる『三方よし』の仕組みになっていることに驚いた」 -
支援の手前の「関係性」の重要性
「困ったときに相談できる関係性がなければ、どんな制度も届かない。制度以前の、人と人とのつながりをどう作るかが重要だと感じた」 -
「見えにくい」ケアへの視点
「移民家庭における子どもの通訳など、家庭内で当たり前とされていることが、実はケアの負担になっているケースがある。当事者が『自分はケアラーだ』と認識していない場合も多く、社会がいかに気づけるかが課題だ」
また、会場での熱い議論に加え、オンライン上では合意形成プラットフォーム『Liqlid』(開発:株式会社Liquitous)を活用し、リアルタイムでのテキストによる意見交換も行われました。
[写真7:Liqlidの画面]
◼️「知の交差点」から生まれる新しいアクション
会の最後は、ピザを囲んでのネットワーキングタイム(交流会)となりました。授業という枠組みを超え、学生が企業の担当者に直接質問を投げかけたり、異なる学部の学生同士が連絡先を交換したりと、終始和やかな雰囲気の中で交流が深まりました。
今回のサロンは、大学の教室の中だけでは完結しない「生きた学び」の場となりました。ケアという切実なテーマに対し、アカデミアの知見、企業の技術と組織力、そして学生の柔軟な感性が交わることで、新しい支援の形や社会デザインのヒントが見えてきたのではないでしょうか。
立命館大学超領域リベラルアーツでは、今後もこうした「知の交差点」を作り出し、社会と共創する教養教育の未来を切り拓いていきます。
【開催概要】
- イベント名: 超領域リベラルアーツ サロン in ROOT
- 日時: 2026年2月4日(水)
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会場: 立命館大学 グラングリーン大阪 ROOT
(〒530-0011 ⼤阪市北区⼤深町6 番38 号 グラングリーン⼤阪 北館 JAM BASE 5階) - 主催: 立命館大学超領域リベラルアーツ
- 協力: JST-RISTEX「ケアの葛藤によりそい、ケアラーの社会的孤立・孤独を予防する包括的支援システムの構築」
- 運営: 一般社団法人インパクトラボ
【関連リンク】
Cross-Cultural Encounters 1(CCE1) ――「違い」と出会い、自分なりのコミュニケーションを探る国際教養科目B群
国際教養科目(B群)「Cross-Cultural Encounters 1(以下、CCE1)」は、学部・語学レベルを問わず、多様な背景を持つ学生が集い、異文化理解とコミュニケーションについて学ぶ入門科目(1・2回生配当)です。 日本語と英語のバイリンガル環境のもと、ディスカッションやグループワークを中心に、学生同士が意見を交わしながら学びを深めていきます。
今回は、2025年度秋学期に衣笠キャンパスで開講されたクラス(GDクラス/担当教員:庄子 萌先生)の授業の様子を紹介します。学生たちはグループごとに、「違いを乗り越え、キャンパスにおけるネットワークを広げるために何ができるか」という問いを立て、国際交流や言語学習を促進する施設・BBP(Beyond Borders Plaza)を活用し、イベントの企画・実施に取り組みました。見学した回は、その集大成となるポスター発表であり、各グループが実施したイベント内容に加え、得られた気付きや手応え、課題について発表しました。
本記事では、授業の様子に加え、教員、受講生、元受講生であるTAへのインタビューを通して、CCE1の特徴と学生たちの変化を紹介します。
履修前のイメージと、授業を通して見えてきた学び
CCE1を履修した学生の動機はさまざまです。留学経験を通して異文化への関心を深めた学生もいれば、「英語に触れる授業をできるだけ多く履修したい」という思いから履修を決めた学生もいました。
「CCE2を先に履修していて、その内容がとても面白かったので、CCE1も履修しました。英語の比重が少し違うだけだと思っていましたが、実際は扱うテーマや学びの深さがまったく違っていて、良い意味で想像を超えていました」(国際関係学部2回生・国内学生)
一方で、英語で話すことに強い不安を抱えながらも、挑戦の気持ちから履修を決めた学生もいます。
「それまで英語で会話した経験がほとんどなく、不安はありました。でも、興味を持ったことには思い切って取り組んでみたいと思い、履修を決めました」(産業社会学部2回生・国内学生)
こうした履修前のイメージは、授業を重ねる中で変化していきます。CCE1が語学力の向上そのものを目的とするのではなく、異なる背景をもつ他者と向き合い、考えを伝え合うプロセスを重視した科目であることに、多くの学生が気づいていきました。
教室で起こる、小さなカルチャーショック
CCE1の教室には、国内学生と国際学生が混ざり合い、多様な文化的背景を持つ学生が集まります。ディスカッションでは、価値観や前提の違いが自然と表面化します。
「LGBTQについて話し合った際、育ってきた社会や教育環境によって捉え方の前提が異なることを知り、そのギャップに驚きました」(国際関係学部2回生・国際学生)
こうした経験は、日本文化への理解にとどまらず、「国や地域ごとに異なる前提がある」という視点を学生にもたらします。CCE1では、意見の違いを対立で終わらせるのではなく、相手を尊重しながら対話を重ねる姿勢が大切にされています。
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「話せるようになった」以上の学び――自分自身への気づき
CCE1で学生が得ているのは、単なる語学力の向上だけではありません。グループワークを通じて、自分の関わり方やこれまで意識していなかった一面に気づく学生も多くいます。
「議論の中で、自然と話を整理している自分に気づきました。リーダーよりも、進行を支える役割が合っていると感じました」(国際関係学部2回生・国内学生)
「最初は一人で進めようとしていましたが、役割分担し、頼ることの大切さに気づきました」(産業社会学部2回生・国内学生)
また、英語に対する心理的なハードルが下がったという声も聞かれました。
「間違えてもいい、と分かってからは、英語で話すことへの抵抗がなくなりました。クラスメイトの一言が自信につながりました」
学生の声から見えるCCE1の学び
ポスター発表やインタビューからは、語学力の高低以上に、相手と関わろうとする姿勢や工夫がコミュニケーションを支えていることがうかがえます。
英語を母語とする国際学生の一人は、次のように振り返ります。
「日本語で話す場面も多く、もう一度日本語を頑張りたいと思いました。この授業が学習意欲を取り戻すきっかけになりました」
また、学生同士の関係性については、
「日本人学生と留学生は分かれがちですが、この授業では自然に交流できる貴重な機会だと感じました」
という声もありました。
国内学生からは、ケーススタディを通じてアサーティブ・コミュニケーションを学び、
「自分の意見を伝えながら相手を尊重することは両立できると実感しました」
という気づきが語られています。
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TAの視点――受講生から支援する立場へ
CCE1には、元受講生であるTA(Teaching Assistant)が関わっています。TAは、受講生時代の経験を活かし、現在は学生を支える立場として授業に参加しています。
「グループディスカッションが止まってしまうことや、言語の壁で困る状況は、自分も経験しました。だからこそ、今の学生の悩みがよく分かります」
TAは、必要に応じて通訳に入ったり、議論の論点を整理したりと、学生の主体性を尊重しながらサポートを行います。
「意見を発信したい、挑戦したいという気持ちがある学生にとって、とても良い授業だと思います」
教員が描くCCE1――「うまくいかない経験」も含めた学び
CCE1を担当する庄子先生は、この授業を「コミュニケーションの練習の場」と位置づけています。
「最初からうまくできる必要はありません。むしろ、うまくいかなかった経験こそが、他者への理解や自分自身の成長につながると考えています」
授業では、言語の正確さよりも、「どう伝えようとしたか」「どう関わろうとしたか」を重視。教員はファシリテーターとして学生同士の学びを支え、学生同士で決めるグラウンドルールの設定や定期的なグループ替えを通して、自分たちの学習環境への責任感を醸成したり、多様な学生が主体的に関わり合える環境を整えています。
「CCE1は、『違いを楽しむ』と同時に、『違いによって生じる困難にどう向き合うか』を試行錯誤する場でもあります」
履修を迷う学生のみなさんへ
CCE1は、語学力や発言力に自信がある学生だけの授業ではありません。人前で話すことに緊張する学生や、慣れない異文化との出会いに自信のない学生にも配慮した設計となっています。
【受講生の声】
「言語学習を楽しむきっかけになる授業だと思います」
「とても楽しく、多様な人と出会える授業です」
【担当教員・庄子先生からのメッセージ】
「少しだけコンフォートゾーンから踏み出し、違いを持つ他者と関わる経験そのものを大切にしています。」
「異なる背景を持つ学生との交流は、授業後も続く友人関係や、自分の専門以外の視点に触れる新鮮な経験となります。オープンな気持ちで参加すれば、多くのものを得られるはずです。」
CCE1は、学生が自分なりのコミュニケーションの形を探りながら、一歩踏み出す経験を重ねていく場です。その一歩が、大学生活の中での学びや人との関わりを、より豊かなものにしていきます。
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【開催報告】「国の行政組織」:農林水産省_日本の「食」を支えるチャレンジングな仕事
平和人権フィールドスタディ「減災まちづくりプログラム<大船渡・夏祭りチーム>」 ~準備、運営、片付けを通して「七夕まつり」の担い手に~
【開催報告】2025年度EDGE+Rプログラム レギュラーコース 前期開催報告
教養科目D群「スポーツ方法実習Ⅰ(アダプテッドスポーツ)」 ~誰もがスポーツを楽しめるインクルーシブ社会を創出していく~
6月20・27日(金)、7月4日(金)に、衣笠キャンパスにおいて、「スポーツ方法実習Ⅰ(アダプテッドスポーツ)」の第11回目~第13回目の授業が行われました。
本学では、教養科目のスポーツ実技科目として「スポーツ方法実習Ⅰ・Ⅱ」があります。この科目ではスポーツの実践を通じて理論・分析学習を行い、生涯スポーツのための基礎的な能力習熟と、学部・回生を越えたスポーツ集団づくり、さらにスポーツの組織者づくりを主な目的としています。2025年度は3キャンパス合わせて15種目150クラスを開講しています。
“アダプテッド”とは「人の発達や運動能力に合わせてスポーツをする」という考え方で、このクラスでは、近年ユニバーサルスポーツとして注目される「障害者スポーツ/パラスポーツ」の種目を複数体験できる授業となっています。用具やルールの工夫を通じて、障がいの有無、性別、年齢、体力の違いを超えて楽しむことのできるスポーツの創意工夫を考えることで、生涯スポーツの基礎的な能力を養うことを目指します.
第11回目授業は「車いすバスケットボール」、第12回目授業は「ボッチャ」、第13回目授業は「アーチェリー」。授業では、担当教員の金山千広教授から種目の概要やルール説明を受けた後、チームに分かれて練習を行い、最後に実際に試合が行われます。
金山教授からの説明。資料を見ながら、まず競技の概要やルールを理解します。
①6月20日実施「車いすバスケットボール」
「車いすバスケットボール」は1940年代にアメリカで考案され、1960年第1回パラリンピックから実施されている競技です。まず、車いすの構造・操作方法・競技のルールについて学び、ドリブル、パス、シュート練習などの技術練習を行ったのち、チームに分かれて試合を行いました。受講生たちの練習の成果が十分に発揮され、巧みに車いすを操作してコートを動き回り、スピード感あふれるプレーがたくさん見られました。
受講生からは「最初は車いすに乗ることが難しく、スムーズに行きたい方向に行けなかったが、慣れてくるとドリブルを含めたボール運びもできるようになった」「ぶつかった時の衝撃の大きさなどを感じ、こんなに臨場感があるものなのかと毎回驚きだった」「腕の力だけでシュートするのが難しかった」など、これまで体験したことのあるバスケットボールの試合とは異なる新鮮な反応がありました。また、「チームでうまく連携を取らないとゴールまでたどり着けない」「試合に勝つためにはチームメートとのコミュニケーションやパス回しが有利な戦術だと思った」など、チームスポーツの楽しさ・難しさを感じた受講生も多くいたようです。
男女混合でのゲームでしたが、「シュートしてゴールリングに当たれば女子2点、男子1点」「シュートしてゴールネットに触れれば女子2点、男子1点」など独自に配点設定を行い、受講生全員で「アダプテッド」を体現しつつ楽しく授業が進みました。
車いすのタイヤが「ハの字」になっていることでターンがしやすくなっています。また、接触プレーから選手の足を保護するため、車いすの前に「バンパー」と呼ばれる保護棒が設置されています。
②6月28日実施「ボッチャ」
「ボッチャ」は、赤と青の2チームで対戦します。各チームが6つのボールを投げて、“ジャックボール(目標球)”と呼ばれる白いボールにより近づけることが出来た方が勝利となります。氷上で行われるカーリングとルールが似ているため「地上のカーリング」と称されることもあります。金山教授の「アドバンテージ・性別・体格差・年齢に関係なく誰もができるスポーツ」という説明のとおり、ルールは非常にシンプルで、ボールは投げても転がしてもよく、手が使えない場合は足を使って蹴ってもかまいません。ジャックボールめがけて転がしたり、相手のボールを狙って弾いたりと、様々な戦術を駆使しながら盛り上がる受講生たちの姿がとても印象的でした。
ボッチャで使うボールの大きさは「周長約270mm±8mm以内。重さは約275g±12g以内」。
材質は、天然皮革、人工皮革、フェルト製などがあり、障がいの特性やプレースタイルによってボールを使い分けます。
③7月4日実施「アーチェリー」
「アーチェリー」も、車いすバスケットボール同様、1960年第1回パラリンピックからの正式競技種目です。授業では、実際に弓を組み立てるところから始まり、その後、的に向かって投射練習を行いました。最初は「弓を引くのが難しい」「矢がうまく前に飛ばない」と苦戦していましたが、コツをつかむと多くの受講生が矢を的に当てることができるようになり、的に当たるたびにチーム内で感嘆の声があがっていました。
アーチェリーの弓を組み立てる様子。
「スポーツ」の語源はラテン語の「deportare」であり、「気晴らしに行く」や「楽しい感情を発散させるもの」という意味があります。ルールの理解や勝ち負けも大事ですが、参加者同士が相手を尊重しながら楽しむことで、スポーツは生涯にわたっての健康づくりや人間形成に大いに役立ちます。
受講生からは「この授業を受けたことで、今後パラリンピックも見方が変わると思う」「学部が異なる学生と一緒に活動できたのが楽しかった」などの感想が寄せられました。
本学の教養科目D群(スポーツ・健康科目)では、「スポーツ方法実習Ⅰ・Ⅱ」以外にもスポーツを切り口とした様々な講義系科目が開講されています。ぜひ、これらの授業を受講し、運動・スポーツのもつ多様な価値や無限の可能性にアプローチしてみてください。
キャリア教育科目「仕事とキャリア」・アシックスジャパン阿部雅社長にご登壇いただきました―経営者が語るキャリアの本質
本講義は、キャリア教育科目の形成科目に位置付けられ、幅広いゲスト講師から多様な働き方(業界・職種・キャリアステージ)の講演を聞いた上で、仕事の意味や職業人生の広がり、期待される成長プロセスなどを理解することを目指しています。また、アシックスジャパン株式会社と学校法人立命館は、スポーツを通じた地域社会、教育研究、国際社会の発展を目的として包括的連携交流協定を締結しており、様々な場面で多大なるご支援をいただいています。
授業冒頭、阿部氏から受講生に向けて、「授業を通じて、自ら考える姿勢を持ってほしい」「キャリアにおいて過去・現在・未来は密接に繋がっており、今日得た気づきや感情を行動へと結びつけ、未来に繋げてほしい」というメッセージが伝えられ、講演がスタートしました。
<アシックスジャパン株式会社代表取締役社長 阿部雅氏>
続いて、企業紹介として、アシックスの創業哲学や理念、事業の沿革、およびアシックスとアシックスジャパンのビジネス展開などについてご説明いただきました。
講演はその後、阿部氏ご自身が考える「5 Principles」という仕事観・キャリア論へと展開していきます。
バックキャスティング思考に触れた場面では、阿部氏が幼少期からスポーツやスポーツシューズに親しみ、17歳の時にアシックスで働きたいと志したことがその後の学びやキャリア選択に繋がった、というご自身の原体験が紹介されました。そしてこの経験から、「自分の中に“北極星”を持つこと」がキャリア形成の最大の指針であり、一貫性(Consistency)こそが、変化の激しい時代を生き抜くための武器になると語られました。
さらに、心理学者ジョン・D・クランボルツ教授の「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」に基づき、「人生は予想もしない出来事の連続だが、それにどう意味づけをするかが、自分らしいキャリアを築く上で重要な力になる」と述べられました。
講演の締めくくりでは、Apple創業者スティーブ・ジョブズ氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式で語ったスピーチから「Connecting the dots」という言葉を引用し、「キャリアを考える上で最も大切なのは、自分の人生に責任を持つこと。その積み重ねが“点”となり、振り返ったときに“線”として繋がっていく。『CHANGE(変化)』が起きた時には、それを『CHANCE(チャンス)』と捉え、自分の人生に責任を持って楽しんでほしい」という力強いメッセージが語られました。
授業終了後の受講生アンケートでは、「これまで就職活動を通じて、キャリアといえば職業や経験、スキルといった“ワークキャリア”にばかり意識が向いていたが、生き方や価値観といった“ライフキャリア”こそが重要であると気付かされた」「自分の価値観や感情に正直に向き合いながら、将来描きたい姿に向けて少しずつ行動を積み重ねていきたい」といった感想が寄せられました。
受講生たちは今後も引き続き、授業を通して他者のキャリアに触れ、多様な仕事や働き方への理解を深めながら、自己の長期的なキャリアビジョンの構築に取り組んでいきます。
教学実践フォーラム「オンデマンド授業で探る、大規模講義と教育効果の両立 ―学生は本当に学べているの?―」
2025年度 第1回 教育実践フォーラム
このたび、教養科目におけるオンデマンド授業「データサイエンス・AI基礎」および「データエンジニアリング基礎」を事例として、
「オンデマンド授業で探る、大規模講義と教育効果の両立」をテーマに、教育実践フォーラムをZoomウェビナー形式で開催します。
※参考:教育・学修支援センターWebサイト
以下のようなテーマにご関心のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。
- オンデマンド授業に関心はあるが、導入が大変そう…
- AIやLMSを授業に活用したい
- 学習効果を高める方法を知りたい
■ 開催概要
- 日時:2025年7月16日(水)3限(13:10~14:45)
- 形式:Zoomウェビナー
- 対象:立命館大学教職員
- 申込フォーム:こちら
■ プログラム
- [13:10-13:15] 開会挨拶
- [13:15-14:15]
- (1) オンデマンド授業設計の基礎(中島 英博 教授)
- (2) 取り組み事例紹介(山中 司 教授/西門 秀人 准教授)
- (3) 到達点と今後の展望(山中 司 教授)
- [14:15-14:45] 質疑応答・閉会挨拶
■ 開催趣旨
新型コロナウィルス感染症への対応はメディア授業の展開が飛躍的に進む契機となり、2025年度現在、本学において約140科目が遠隔科目として開講されている。 なかでもオンデマンド授業は、時間や場所を選ばず受講することができるという特性から、特に教養科目において、近年、受講希望者が増加している。
しかしながら、オンデマンド授業では、学生が動画視聴に終始する受け身の学習スタイルに陥らないようにする工夫や、教員と学生の双方向性をいかに担保するかといった授業運営上の課題、 「学生は本当に学修が深まっているのか」という疑問も残る。
また、急速に進化を遂げる生成系AIを教育現場でどのように取り入れるかは、今を生きる私たちにとって、避けて通れないテーマになりつつある。
本フォーラムでは、まずオンデマンド授業設計の基礎について概観した後、教養科目の「データサイエンスAI基礎」「データエンジニアリング基礎」を事例として、いくつかの試行的取り組みを報告する。
今後のメディア授業の展開や、生成系AIの活用も含めた効果的な成績評価のあり方、授業運営について議論を深める機会としたい。
*2024年度より受講定員を400名から1000名に変更し、大規模オンデマンド科目として開講