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教養科研プロジェクト実施報告 第4回研究会「社会的公正をめざす教育に関する研究『ジェンダーとダイバーシティ』」

第4回研究会:
社会的公正をめざす教育に関する研究「ジェンダーとダイバーシティ」

【開催日】 2021年9月3日(金)13時~15時

 本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催する研究会シリーズである。

 第3回研究会では、「社会的公正をめざす教育に関する研究「ジェンダーとダイバーシティ」と題して、講師に柳原 恵先生と茶園 敏美先生、コメンテーターに上野 千鶴子先生をお招きして開催した。

 柳原先生の立命館科目「ジェンダーとダイバーシティ」、茶園先生の産業社会学部専門科目「比較ジェンダー論」において、ヘイトコメントを中心に授業の様子が紹介され、どういった課題があるかが議論された。上野先生からは、歴史的な視点から女性学・ジェンダー研究を教えることの意味についてコメントをいただいた。

 ヘイトコメントは、「性差別、⺠族差別等の差別を含むコメ ント、教員の⼈格や研究分野に対する根拠に基づかない誹謗中傷を含むコメント、悪意のあるコメント」(柳原先生)を意味する。記名式のコメントへの応答によって対話的な学びをつくりつつも、どう応答するのがいいかという悩みが共有された。授業での実際の工夫が紹介され、「実際にどうするか」をめぐって各自が自身の教える経験を持ち寄って議論された。そのようなコメントは教員の教え方の責任ではないことを共有して確認する機会となった。今後も、実践を共有し、学生の学びをどう支えていくかを話し合う場を大切にしていくことが方向性として共有された。

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(報告:河井 亨/スポーツ健康科学部)


<これまでの研究会>
  • 第1回(2020年11月23日)青年期の発達と教養教育 ―『若者のアイデンティティ形成 学校から仕事へのトランジションを切り抜ける』(東信堂)によせて― 【報告はこちら】 
  • 第2回(2021年 6月25日)大学における社会的公正教育の意義と課題 ―上智大学グローバル教育センター提供全学共通科目「立場の心理学1:マジョリティの特権を考える」の実践から― 【報告はこちら
  • 第3回(2021年8月26日)大阪市立大学における人権教育科目群を活用した新たな展開について 【報告はこちら】 

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教養科研プロジェクト実施報告 第3回研究会「大阪市立大学における人権教育科目群を活用した新たな展開について」

第3回研究会:
大阪市立大学における人権教育科目群を活用した新たな展開について 

【開催日】 2021年8月26日(木)14:00~16:00  

本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催する研究会シリーズである。

 大阪市立大学人権問題研究センター教授で国際人権・人権教育論が専門である阿久澤麻里子先生に話を聞いた。センターは人権問題の解決に研究・教育を通じて貢献することを目的とした研究機関である。「部落問題論」「人権教育/同和教育論」「ジェンダー論」「エスニック・スタディー」「障害者問題論」「障害者差別論」「法制史における差別」「医療倫理」「医療と人権」「環境問題と人権」をテーマに研究を組織している。そこの専任教授である。とくに印象深い点は次の2つである。

 第一は、世界の人権教育プログラムについてである。先生が各地のプログラムを調査した結果が大変参考になった。2008年の段階での報告によれば、人権関係で97プログラムがある。なんらかの学位プログラムとなっている。修士(53)、法学修士(40)、その他学位(1)、ディプロマ(2)、修了証明プログラム(1)である。修学期間は、1年間が81プログラム、2年間が13プログラム、一年半が3プログラムであったという(詳細は「世界の大学院における『人権修士』プログラムの意義と課題」、『部落解放研究』第183号 2008年10月に記されている)。もちろんどのような専門であれ当該領域に相応しい人権や倫理の視点はあるはずだし、それも含めて学部・研究科は教授しているが、それだけではなく人権研究プログラムとして包括的に構成し、まとめ上げて学位プログラムとして体系化が進む世界の動向を知ることが出来た。

 第二は、センターも貢献して大阪市大で構築されている「共通教育としての人権教育」の豊富さである。現代の部落問題、メディアと人権、グローバル化と人権、障がい者と人権、ジェンダーと現代社会、エスニック・スタディ、クィアスタディーズ入門、企業と人権、地球市民と人権、労働と人権、平和と人権、人権と多様性の研究の科目群が開講されている。講義だけではなく演習や大学院教育としても展開しているという。

 報告を受けて議論し、印象に残っている論点として、リベラルアーツとしての人権教育の編み上げについてである。「共通教育」は立命館大学でも採用している名称と位置づけであるが、どちらかといえば機能的な言い方である。それを超えてリベルラルアーツとしていく必要性を感じた。専門教育を充実したものにしていくためにもこうした人権と倫理に関わる主題はどの分野でも必要となるだろう。その上で分野横断的に横串をさし、学問を追究するうえでも必要となるテーマとしていく際にリベラルアーツとして位置づけることが有益ではないかとヒントをいただいた。自由に生きることを阻害している差別と排除をクリアにするためにも人権教育とのすり合わせをしたいと思った。教養知とは何かを考えさせてくれる交差領域にリベラルアーツと人権教育があると示唆を受けた。

 なお、研究会は、2021年8月26日(木)14時~16時に衣笠キャンパス清心館SE201教室を拠点にオンラインで開催された。

 (報告:中村正/産業社会学部・人間科学研究科)

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教養科研プロジェクト実施報告 第2回研究会「大学における社会的公正教育の意義と課題」

第2回研究会:
大学における社会的公正教育の意義と課題
―上智大学グローバル教育センター提供全学共通科目「立場の心理学1:マジョリティの特権を考える」の実践から― 

【開催日】 2021年6月25日(金)12:30~14:30  

本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催する研究会シリーズである。

第2回研究会では、「大学における社会的公正教育の意義と課題―上智大学グローバル教育センター提供全学共通科目「立場の心理学1:マジョリティの特権を考える」の実践から― 」と題して、講師に上智大学グローバル教育センター長 出口 真紀子先生をお招きした。

2015年度に開講された上智大学グローバル教育センター提供全学共通科目「立場の心理学1:マジョリティの特権を考える」を開講するに至った背景と、具体的な教育実践が紹介された。本科目ではどの学生も、マジョリティ性、マイノリティ性の両方を抱えて生きていることを、気づけるような機会を提供し、これによって、学生は自らの立ち位置を俯瞰するという。

出口先生の教育アプローチとして印象的だったのは、学生が特権を持つ当事者として差別を考えるための工夫だ。上智大学の学生データをもとに彼らが「ドマジョリティ」(出口先生)で特権を持った存在であること、「特権は持っている側には見えにくい」ことへの認識を促す。そして学生が特権に気づき始めてから、マイノリティーのゲストとの出会いを作ることで、彼らは特権を持つものとしてマイノリティーの体験を受け止めることになる。さらに特権を持つ人に特権について教育するのは、特権に気づいたマジョリティの役割であり責任だと述べられた。

参加者からは、「差別」をマジョリティ側の当事者として捉えるという教育者自身が視点を変えることへの気づきや、学習者の抵抗を軽減・もしくは防ぐための教育支援の方策への疑問が投げかけられ、議論が深められた。

(報告:秋吉 恵/共通教育推進機構)

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教養科研プロジェクト実施報告 第1回教養知サロン「21世紀社会に求められる『知性』とは」

過日(2021年5月27日)、教養知について語り合う第1回サロンが「21世紀社会に求められる『知性』とは」と題してオンライン方式で開催された。本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催するサロン・シリーズである。

話題提供は教養科目「科学・技術と社会」を担当されている兵藤友博さん(経営学部名誉教授)、そしてサロンの進行役のファシリテーターは、秋吉恵さん(教養教育センター教授)と河井亨さん(スポーツ健康科学部准教授)がつとめた。

21世紀社会は新たなステージを迎え、きわめて多様性をもったかつ複合的な世界であるとも指摘されている。サロンでは、題材として、日本学術会議が2010年にまとめた報告「日本の展望」(関連Webサイト情報:http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-tsoukai.pdf)にある、「個別の専門分野を越境する統合的な知性と課題解決に取り組み協働する実践的知性の形成」を起点に、新しい時代にふさわしい汎用性のある教養知とは何かが説かれた。

確かに国際政治は対立と分断を深める一方、SDCs(国連の持続な開発目標)に示されるようにダイバーシティの中での統合が提起されている。これは前記の学術会議の「越境する統合的な知性」に通ずる。話題提供では、さらにガリレオの科学的発見(振り子の等時性)や、核兵器の廃絶を謳ったラッセル・アインシュタイン宣言の精神など、いくつかの事例が取り上げられた。その上で、ヒトとコトの個々の違いを超えて理解を共有しうる、知性の越境性の有効性、また、知性は人間性の発露であることが指摘された。

話題提供後、教養知について参加者(学生、教職員)で語り合う場が提供された。以下に参加者の意見・感想をいくつか紹介する。

〇教養知についてよく知らなかったので参加しました。今でも曖昧な感じはしますが、講演やディスカッションを通して、世界の流れや、生きているこの時代のことを知ることができました。語り合うという機会はあまりないので良かったです。
〇このサロンで非常に良かったと感じたことは、学生の意見に対してその意見を訂正しいい解釈の仕方に導いてなるほどと考えさせてくれる所でした。取捨選択ではなく情報を編集する能力や一次情報を掴むことが知識を掴む上で大事だと分かりました。
〇論理的思考力の大切さや批判的意見の仕方、インプットをどう活かすかという話が自分のグループで行われた。こういう場はもっとあっていいと感じました。
〇学生の考えることと、講師や社会人が考えることの差に、視点(より俯瞰的)や集積された濃密な回答があると感じました。もっと話す時間もあったら良かったかもです。今日は参加できてよかったです。
〇このサロンを通して、まず知性とは何かということを考えました。自分の中では、お話の中で出てきた”知識の扱い方”という言葉が一番しっくりくるなと感じました。また、グローバルな世界における人類社会という視点では、方向性をきちんと共有し議論することの重要性を感じています。SDGsはその例の一つですが、広く多くの人がSDGsというのを認知している状態が生まれていること自体がいい事だと感じています。一方で、政治的な国家間のやり取りの中には、議論に生産性がなかったり、価値観、末来観、方向性などの共有が足りない点があると思います。そういった意味で、越境や知性というのが個人、国家、社会など、それぞれに必要になってくるのかなと考えました。

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教養科研プロジェクト実施報告 第1回研究会「青年期の発達と教養教育」

第1回研究会:
青年期の発達と教養教育
―『若者のアイデンティティ形成 学校から仕事へのトランジションを切り抜ける』(東信堂)によせて―

【開催日】 2020年11月23日(金)15時~17時

 本企画は、教養教育センター・立命館科目教育研究会議の協力を得て、科学研究費助成事業 基盤研究(C)研究課題「教養知とその形成―その比較分析と教養教育の類型化の実践的検証」プロジェクト(教養科研プロジェクト)が主催する研究会シリーズである。

 第1回研究会では、「青年期の発達と教養教育 ―『若者のアイデンティティ形成 学校から仕事へのトランジションを切り抜ける』(東信堂)によせて―」と題して科研メンバーの河井亨(立命館大学スポーツ健康科学部)が報告した。
 研究会では、『若者のアイデンティティ形成』の概要をもとに、若者のアイデンティティ形成が問われることと先行世代・大人世代の世代継承が問われていることが表裏一体であることを確認した。続く議論の場では、大学生の社会的アイデンティティのありよう、大学生になるとはどういうことかを問うことの意義が論じられた。また、「なぜこの科目を取るのか」「なぜその選択をするのか」といった問いかけを教育側が投げかけていく実践的必要性が提起された。さらに、立命館大学の教養教育のキーフレーズである「自分と社会を自由にする」ことがいかにして可能かという問いに議論が及んだ。
 若者世代である大学生の現在地を見つめ続け、どんなアイデンティティ形成とどんな世代継承が可能かという問いを引き受けていく。
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(報告:河井 亨/スポーツ健康科学部)

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