ニュース
ニュース
news|liberalarts|
1回生が挑むリアルな企業課題─キャリア教育科目「社会と学ぶ課題解決」SMBC日興証券様との前半プロジェクトを実施
キャリア教育科目「社会と学ぶ課題解決」(教養科目C群・社会で学ぶ自己形成科目)は、学部1回生向けの産学連携PBL科目として、春学期、秋学期に、衣笠キャンパス、びわこ・くさつキャンパス(BKC)、大阪いばらきキャンパス(OIC)で開講しています。本授業では、連携企業から提示される実社会の「リアルな課題」に1回生が学部横断型のチームで挑戦し、解決策を提案します。課題解決に必要な能力の理解・修得を促すとともに、大学で学ぶ意義や社会の動きを知る機会となることを目指しています。授業は情報収集、グループ討議、プレゼンテーションを中心としたプロジェクト活動で構成され、14回の授業コマを前半・後半の2つのプロジェクトに分け、それぞれ異なる連携企業にご協力いただきます。
※「社会と学ぶ課題解決」の科目詳細はこちらをご覧ください。
今回、秋学期BKC開講クラス(G4クラス:担当教員・中川洋子先生)の前半プロジェクトの様子を紹介します。
連携企業は、SMBC日興証券株式会社様(以下、SMBC日興証券様)です。
学生たちは約1ヵ月間、一次提案と最終提案に向けて議論と準備を重ね、企業担当者の前でプレゼンテーションを行います。
■課題提示:第3回授業
10月14日、この日はSMBC日興証券様から学生へ課題が提示される日でした。社会人と直接関わるのは今回が初めてという学生が多く、説明に耳を傾ける表情からはやや緊張した面持ちが伺えました。SMBC日興証券様からは、京都支店法人部 部長 森田雅俊様、法人課長 小出浩人様、課長代理 木下直久様の3名にご来校いただきました。
金融業界や証券会社、株式に関する基本的な説明、講師の皆様の業務紹介に続いて、今回の課題が発表されました。
『あなたはSMBC日興証券の社員です。10年後の時価総額の上昇率が最も高いと考えられる企業を選び、その根拠を示し、プレゼンテーションを行ってください。』
10年後の世界・日本の経済動向や社会構造の変化を踏まえ、具体的な数値を用いて予測することが求められる課題に、学生たちは早速グループワークで意見交換を始めました。
2週間後の一次提案に向けて、どの企業を選び、どのような根拠を構築していくのでしょうか。
■一次提案:第5回授業
10月28日、SMBC日興証券様へ初めてのプレゼンテーションを行う日を迎えました。大学では発表や意見交換の機会は多くありますが、今回は「企業の一員として、企業担当者(=上司)に向けて提案する」という設定のもと、教室にはいつも以上の緊張感が漂っていました。
一次提案では、森田様・木下様の前で各チームが8分間の持ち時間を使って発表を行いました。メンバーで役割を分担して話すチーム、代表者がまとめて発表するチームなど、スタイルは多様です。また学生たちが挙げた社会課題は少子高齢化やAIが中心でしたが、選んだ企業はIT、医薬品、ゲーム、食品など幅広く、各チームの視点の違いが表れていました。手元資料を見つめながら懸命に説明する姿からは、この2週間の試行錯誤が伝わってきました。
一方、質疑応答では企業の方から鋭い指摘が相次ぎました。
「単発の数値で捉えている。株価の動きも踏まえて検討してください」
「夢のある提案だが、不確定要因が多い。より定量的な分析が必要です」
「提案企業は現時点で赤字だが、社会的ニーズが高まっているという根拠は?」
「なぜ10年後に25%伸びるのか。その仮説の妥当性は?」
「CEOの名前、間違っていますよ」
これらの指摘を受け、学生たちは“点ではなく線・面で捉える視点”や“競合環境を踏まえた分析の重要性”を自覚していきます。続くグループワークでは、今後2週間で現在の案をブラッシュアップするのか、それとも根本から再構築するのか、チーム内で活発な議論が交わされました。
■第7回授業:最終提案
11月11日、いよいよ最終プレゼンテーションの日を迎えました。本日は森田様・小出様・木下様の3名にご出席いただきました。学生たちは限られた時間の中で、一次提案のフィードバックを踏まえて必要なデータを収集・分析し、提案の妥当性を示すための論理構成を練り上げてきました。一次提案を受けて企業選定から見直し、一から案を再構築したチームもありました。学生たちが語る一言一言に、企業の方々の視線が向けられます。
「少子高齢化で労働力が限られる中、デジタル化を前提とした社会構造がさらに進むと予想されます」
「半導体の需要が産業・医療・自動車分野へ広がることで市場拡大が見込まれます」
「26年度は減益予測ですが、今後10年で株価が上昇すると考える理由は、市場シェアと高い財務健全性の2点です」
「当該社は複数のM&Aにより研究開発を強化しており、その成果が株価にも反映されています。今後も協業によって製品の安定性や発展が期待できます」
一次提案と比べ、学生たちの説明は論理的で説得力を増していました。質問に対しても、「このデータを基に試算した」「過年度の動向からこのように予測した」「当該企業にはこうした技術的・組織的強みがある」といった具体的な根拠を提示しながら応答していました。
この2週間の議論と修正の積み重ねを通じ、学生たちはデータを基に妥当性を検証する姿勢、論理的に構造化して説明する力、そしてチームで役割を補い合いながら議論を深める協働の重要性を学んでいきました。こうした学びが、発表内容にも明確に反映されていました。
■講評・学生の声
プレゼン終了後は企業様・学生による投票で優勝チームが決定しました。
講評では森田様より、「今回経験したグループワーク、企業分析、課題発見、解決策提示、プレゼンテーションは、まさに社会人が日々行っているフルプロセス。今回の気づきや成功・失敗のすべてが学びであり、ぜひ次の機会にも活かしほしい」とのお言葉をいただきました。
授業後の学生アンケートでは、「投資家の視点を意識したことで、企業分析や資料構成の考え方が変わった」「複数の角度から根拠を持って考えることの重要性を学んだ」といった声が寄せられました。
なお、学生たちは現在チーム編成を新たにし、新たな企業様とともに後半プロジェクトに取り組んでいます。前半プロジェクトで得た学びを次にどう活かしていくのか、今後の更なる成長が期待されます。