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Cross-Cultural Encounters 1(CCE1) ――「違い」と出会い、自分なりのコミュニケーションを探る国際教養科目B群

国際教養科目(B群)「Cross-Cultural Encounters 1(以下、CCE1)」は、学部・語学レベルを問わず、多様な背景を持つ学生が集い、異文化理解とコミュニケーションについて学ぶ入門科目(1・2回生配当)です。 日本語と英語のバイリンガル環境のもと、ディスカッションやグループワークを中心に、学生同士が意見を交わしながら学びを深めていきます。

今回は、2025年度秋学期に衣笠キャンパスで開講されたクラス(GDクラス/担当教員:庄子 萌先生)の授業の様子を紹介します。学生たちはグループごとに、「違いを乗り越え、キャンパスにおけるネットワークを広げるために何ができるか」という問いを立て、国際交流や言語学習を促進する施設・BBP(Beyond Borders Plaza)を活用し、イベントの企画・実施に取り組みました。見学した回は、その集大成となるポスター発表であり、各グループが実施したイベント内容に加え、得られた気付きや手応え、課題について発表しました。

本記事では、授業の様子に加え、教員、受講生、元受講生であるTAへのインタビューを通して、CCE1の特徴と学生たちの変化を紹介します。


履修前のイメージと、授業を通して見えてきた学び

CCE1を履修した学生の動機はさまざまです。留学経験を通して異文化への関心を深めた学生もいれば、「英語に触れる授業をできるだけ多く履修したい」という思いから履修を決めた学生もいました。

「CCE2を先に履修していて、その内容がとても面白かったので、CCE1も履修しました。英語の比重が少し違うだけだと思っていましたが、実際は扱うテーマや学びの深さがまったく違っていて、良い意味で想像を超えていました」(国際関係学部2回生・国内学生)

一方で、英語で話すことに強い不安を抱えながらも、挑戦の気持ちから履修を決めた学生もいます。

「それまで英語で会話した経験がほとんどなく、不安はありました。でも、興味を持ったことには思い切って取り組んでみたいと思い、履修を決めました」(産業社会学部2回生・国内学生)

こうした履修前のイメージは、授業を重ねる中で変化していきます。CCE1が語学力の向上そのものを目的とするのではなく、異なる背景をもつ他者と向き合い、考えを伝え合うプロセスを重視した科目であることに、多くの学生が気づいていきました。


教室で起こる、小さなカルチャーショック

CCE1の教室には、国内学生と国際学生が混ざり合い、多様な文化的背景を持つ学生が集まります。ディスカッションでは、価値観や前提の違いが自然と表面化します。

「LGBTQについて話し合った際、育ってきた社会や教育環境によって捉え方の前提が異なることを知り、そのギャップに驚きました」(国際関係学部2回生・国際学生)

こうした経験は、日本文化への理解にとどまらず、「国や地域ごとに異なる前提がある」という視点を学生にもたらします。CCE1では、意見の違いを対立で終わらせるのではなく、相手を尊重しながら対話を重ねる姿勢が大切にされています。

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「話せるようになった」以上の学び――自分自身への気づき

CCE1で学生が得ているのは、単なる語学力の向上だけではありません。グループワークを通じて、自分の関わり方やこれまで意識していなかった一面に気づく学生も多くいます。

「議論の中で、自然と話を整理している自分に気づきました。リーダーよりも、進行を支える役割が合っていると感じました」(国際関係学部2回生・国内学生)
「最初は一人で進めようとしていましたが、役割分担し、頼ることの大切さに気づきました」(産業社会学部2回生・国内学生)

また、英語に対する心理的なハードルが下がったという声も聞かれました。
「間違えてもいい、と分かってからは、英語で話すことへの抵抗がなくなりました。クラスメイトの一言が自信につながりました」


学生の声から見えるCCE1の学び

ポスター発表やインタビューからは、語学力の高低以上に、相手と関わろうとする姿勢や工夫がコミュニケーションを支えていることがうかがえます。
英語を母語とする国際学生の一人は、次のように振り返ります。
「日本語で話す場面も多く、もう一度日本語を頑張りたいと思いました。この授業が学習意欲を取り戻すきっかけになりました」

また、学生同士の関係性については、
「日本人学生と留学生は分かれがちですが、この授業では自然に交流できる貴重な機会だと感じました」
という声もありました。

国内学生からは、ケーススタディを通じてアサーティブ・コミュニケーションを学び、
「自分の意見を伝えながら相手を尊重することは両立できると実感しました」
という気づきが語られています。

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TAの視点――受講生から支援する立場へ

CCE1には、元受講生であるTA(Teaching Assistant)が関わっています。TAは、受講生時代の経験を活かし、現在は学生を支える立場として授業に参加しています。
「グループディスカッションが止まってしまうことや、言語の壁で困る状況は、自分も経験しました。だからこそ、今の学生の悩みがよく分かります」
TAは、必要に応じて通訳に入ったり、議論の論点を整理したりと、学生の主体性を尊重しながらサポートを行います。
「意見を発信したい、挑戦したいという気持ちがある学生にとって、とても良い授業だと思います」

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教員が描くCCE1――「うまくいかない経験」も含めた学び

CCE1を担当する庄子先生は、この授業を「コミュニケーションの練習の場」と位置づけています。
「最初からうまくできる必要はありません。むしろ、うまくいかなかった経験こそが、他者への理解や自分自身の成長につながると考えています」
授業では、言語の正確さよりも、「どう伝えようとしたか」「どう関わろうとしたか」を重視。教員はファシリテーターとして学生同士の学びを支え、学生同士で決めるグラウンドルールの設定や定期的なグループ替えを通して、自分たちの学習環境への責任感を醸成したり、多様な学生が主体的に関わり合える環境を整えています。
「CCE1は、『違いを楽しむ』と同時に、『違いによって生じる困難にどう向き合うか』を試行錯誤する場でもあります」

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履修を迷う学生のみなさんへ

CCE1は、語学力や発言力に自信がある学生だけの授業ではありません。人前で話すことに緊張する学生や、慣れない異文化との出会いに自信のない学生にも配慮した設計となっています。

【受講生の声】
「言語学習を楽しむきっかけになる授業だと思います」
「とても楽しく、多様な人と出会える授業です」

【担当教員・庄子先生からのメッセージ】
「少しだけコンフォートゾーンから踏み出し、違いを持つ他者と関わる経験そのものを大切にしています。」
「異なる背景を持つ学生との交流は、授業後も続く友人関係や、自分の専門以外の視点に触れる新鮮な経験となります。オープンな気持ちで参加すれば、多くのものを得られるはずです。」

CCE1は、学生が自分なりのコミュニケーションの形を探りながら、一歩踏み出す経験を重ねていく場です。その一歩が、大学生活の中での学びや人との関わりを、より豊かなものにしていきます。


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