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「どうすべき?」から「なぜそう考えるのか」へ ― 学生の問いを深めた「学びとキャリア」特別講義

「学びとキャリア」は、学部1・2回生を対象とした全学型キャリア教育科目の導入科目です。現代社会の課題を題材に、学部を越えた対話やグループワークを通して、大学で学ぶ意味やこれからの自分の学びについて考えます。

本年度の第13講では、京都大学学際融合教育研究推進センター准教授で、学問論・大学論を専門とする宮野公樹先生をお招きし、衣笠・BKC・OICの3キャンパスで特別講義を実施しました(OICはライブ配信)。学生たちは、宮野先生が投げかける問いや考えに触れながら、大学で学ぶことの意味や、自分自身は何を大切にして生きるのかについて考えを深めました。

宮野公樹先生による特別講義の様子

[写真1:講師・京都大学学際融合教育研究推進センター准教授 宮野公樹先生]


答えを求める問いから、考える問いへ

講義に先立ち、学生たちから宮野先生に聞いてみたい質問を寄せてもらいました。

  • 「大学で学ぶことは将来役に立つのか」
  • 「教養科目にどういう意味があるのかわからない」
  • 「就職や将来のキャリアをどのように考えればよいのか」
  • 「自分らしく生きていくためにはどうすればいいのか」

宮野先生はこれらを丁寧に読み解き、学生たちが大学の学びの実用性や将来への不安、社会のものさしと自分のものさしの間で揺れていることを指摘しました。一方で、問いの多くが「正解」や「答え」を求める形になっていることにも言及し、問いの立て方そのものに目を向けました。

そこからの講義では、「どうすべきか」という答えを探すのではなく、「なぜそう考えるのか」「自分はどうしたいのか」を問い直すための問いかけが続きました。


当たり前を問い直す対話 ― 悩むな。考えよ!

講義の中で繰り返し投げかけられたのは、「成功とは何か」「失敗とは何か」「役立つとは何か」「働くとは何か」「生きるとは何か」といった根本的な問いでした。

宮野先生は、キャリアを一直線の道のりとして捉え、そこから外れることを失敗と考える風潮に疑問を呈しました。また、「どうすべきか」を外に求めるのではなく、「自分はどうしたいのか」を問い続けることの重要性についても語りました。

さらに、「成功」や「失敗」といった概念そのものを問い直し、それらは一面的なものではなく、人生の豊かさや幸せを測る唯一の尺度ではないことを示しました。未来は予測できず、何が役に立つかも分かりません。だからこそ、社会のものさしだけではなく自分のものさしを持ち、考え続けることの大切さについて、学生たちは思いを巡らせました。

教室で行われた特別講義の様子

[写真2:講義の様子]


黒板を使って説明する宮野公樹先生

[写真3:講義の様子]


「問い」に学び続けることが、大学での学びにつながる

講義の終盤、宮野先生は、学問とは「問いに学ぶ」ことであり、自分を見つめる目を自分の中に持つことだと語りました。自分自身や人間の存在について深く考え、その土台を築くことが、豊かに生きることや幸せにつながるという考えです。

また、理工学、文学、法学、経済学など分野は異なっていても、突き詰めて考えれば人間や社会、世界そのものを理解しようとする営みに行き着くと説明しました。その意味で、専門は異なっても学問は一つであるという視点が示されました。

そして、大学は知識やスキルを身につけるだけの場所ではなく、自分自身や社会について深く考え、問い続けるための場所、「善き人間」を育む場所であることも強調しました。正解を覚えることだけではなく、「なぜそうなのか」を考え続けること、そして時には「分からない」という状態そのものと向き合うことも学びの一部であるという考えが示されました。

今回の特別講義で、学生たちは明確な答えを得たわけではありません。しかし、「答えを探すこと」以上に、「問い続けること」に価値があるという視点に触れました。自ら問いを立て、自分なりの考えを深めていくことの大切さを学ぶとともに、「大学で学ぶとはどういうことか」を改めて考える機会となりました。


<学生の声>

※一部抜粋

  • 特に印象に残ったのは、「学問は答えを得ることではなく、問い続けること」という話である。私はこれまで、大学での学びは正解を見つけることだと思っていた。しかし先生は、「よくわかった」よりも「余計わからなくなった」状態の方に価値があると述べており、学問に対する考え方が変わった。
  • 講義を通して最も印象に残ったのは、「役に立つ」という概念の問い直しだ。これまで大学で学ぶことは仕事で役に立つかどうかという基準で考え、役に立たないと感じる授業にはあまり価値を見いだせていなかった。しかし、「役に立つ」という判断自体が現在の価値観に縛られており、将来どこでその知識や経験が生きるか分からないと気づいた。
  • 私は「失敗」は「成功」の対義語であり、目標を達成できなかったり負けてしまったりすることを指すのが当たり前だと思っていた。しかし宮野先生の話を聞いて、思い通りに進まないことだけが失敗ではなく、うまくいかなかった理由を考えたり、より良くなるように改善策を考えたりすることにも意味があるのだと気づいた。
  • 今回の授業を通して、私は自分が将来に何を求めているのかが、以前にも増して分からなくなった。しかし、それは決して悪い意味ではなく、社会が描く理想像に知らないうちに自分を当てはめようとしていたことに気づけたからである。これからは、「周りが頑張っているから」「みんながやっているから」という理由で流されるのではなく、自分が本当にやりたいことは何なのかを見つめ直していきたい。そして、「正解」や「ちゃんとしている」といった曖昧な価値観に惑わされることなく、自分らしさを大切にしながら、常に学び続ける姿勢を持って生きていきたいと強く実感した。
受講生が参加する特別講義の様子

[写真4:講義の様子]

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