秋山 空(あきやま そら)さん

卒業年月2019年3月

卒業論文『良友』画報から見る近代旗袍の流行と変遷

所属ゼミ宇野木洋・廣澤裕介ゼミナール

卒業後進路鉄道会社




東洋研究学域(現・東アジア研究学域)に入学した当初は特段近・現代の中国に興味を持っていたわけではなく、中国のこと自体あまりよく知っていなかったように思います。興味や視野の幅を狭めることが無いよう、言い換えれば広く浅く、1・2回生の間は中国語や中国文学、中国史だけでなく、話者人口の多いスペイン語や、アメリカ経済学、美術史、日本史や西洋史などの講義も受講していました。

海外渡航の経験も殆どなく、テレビやスマホの向こう側の存在だった東アジアに初めて触れたのは2016年の3月に実施された「中国イニシエーション実習」でした。広州・深圳・香港でフィールドワークを行い、現地の大学生と交流をしたり、中国トップクラスの企業を見学させていただいたりと、10日間ほどではありましたが自分の力だけではとてもできない経験をさせていただきました。3つある専攻のどこに進むか非常に悩んでいましたが、この実習を通して「今の中国のことをもっと知りたい!」と思いました。最終的に卒論のテーマに選んだのは中華民国期をメインにした服飾史ではありますが、今も昔もエネルギーに満ち溢れた中国の若者文化に強く惹かれました。

卒業論文は旗袍(日本でいうチャイナドレス)の歴史を『良友』画報という雑誌に掲載された写真や文章と照らし合わせて再確認する、というテーマで執筆をしました。大学の部活で絵を描いていたのですが、題材として各国の衣装を選ぶ機会があったことや、クラスのプレゼンテーション課題の一環で謝黎著『チャイナドレスの文化史』(青弓社、2011)を読み満洲人の衣装が中国イメージの衣装に変わっていく過程に強い興味を持ったためです。

この卒業論文に取り組むまで、中華民国期の中国に対してあくまで歴史上の出来事であるという漠然として他人事のような印象を抱いていました。しかし、『良友』画報を初刊から順番に見ていくうちに、自分とそう変わらない年齢の女性が清代の儒教的価値観から自立して社会進出を果たしていく様や、国家の一員として戦争に向かっていく様子を目の当たりにし、おそらくは当時の読者と同じように徐々に変わっていく社会の変化を感じ、社会を構成し、動かしているのはあくまでその時代を生きた一人一人の人間だということを実感しました。

卒論を執筆するにあたり『良友』画報や『申報』などの雑誌を資料として使用したい、と考えた時に影印本にアクセスできる大学図書館などの環境や、執筆に行き詰った時に親身に相談に乗ってくださった先生方はとても貴重な存在であったと非常に感謝しております。

   

【秋山さんが卒業論文で利用した資料】


【秋山さんが所属した宇野木・廣澤ゼミの仲間】

現在は地元の鉄道会社に就職し、系列の水族館の職員として働いています。小さな水族館ではありますが、日本全国のみならず海外からもお客様がいらっしゃいます。私も大学での学びを活かして、アジアからのお客様にもっと観光先として選んでいただけるような活動をしたいと意気込んでいたそんな矢先、春先に新型コロナウイルス(CVOID-19)の感染拡大によりお客様が殆どいらっしゃらない状態になり、感染拡大状況を考慮して休館を余儀なくされました。その後、立ち入り制限や消毒、検温などの感染症対策を導入して再オープンしましたが、客足が完全に戻るのはまだ先のことになりそうです。安全安心なレジャーが戻ってきた時に、国内外のお客様に今まで以上に楽しんで帰っていただけるようスタッフ一同協力して準備を進めております。

不本意な形ではありますが、この度の感染症流行を通して世界が人々の移動を通して繋がっていることを実感しました。在学中には頻繁に行っていた中国語圏への旅行も、しばらくはできそうにありません。数十年後や数百年後、各国の対策や人々の動きがどのような評価になるかはわかりませんが、日々変化していく社会に置いていかれないように、また自分が社会の一員であり、社会を動かす個の一人であることの自覚を持って、日々過ごしていきたいと思っております。

(2020年11月寄稿)