【ウェビナー報告】グローバル・ガバナンスの現在

 国際地域研究所は、20201114日,15日の2日間にわたり、グローバル・ガバナンス学会と共催で、「グローバル・ガバナンスの現在」と題したシンポジウムを開催しました。

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 冷戦終結後30年が経過し、冷戦直後に期待された平和的な「新しい世界秩序」も、その後のアメリカ一極支配的な国際秩序も成立したとはいえず、中国の台頭やロシアの復活による不透明な時代が訪れています。そうした中で、冷戦終結後新たな視角として期待されたグローバル・ガバナンスのアプローチは改めて問い直されるべき時期を迎えているといえます。

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 本シンポジウムでは、第1日目(1114日)には、「グローバル・ガバナンスの現在―理論と実際」と題したセッションを開催し、現下の「コロナ禍」の中、理論と実践の立場からグローバル・ガバナンスの可能性について議論しました。具体的には、大中真(桜美林大学・教授)が、「国際社会」に注目する英国学派という理論的観点から、グローバル・ガバナンスの在り方について検討する「英国学派はグローバル・ガバナンスに貢献できるか」と題した報告を行い、続いて、高須幸雄(国連事務総長特別顧問、立命館大学客員教授)が「グローバル・ガバナンスとSDGs」と題した報告、滝澤三郎(元UNHCR駐日代表・東洋英和女学院大学名誉教授)が「難民の国際的保護の現状~現場の視点から」と題した報告を、それぞれ実務の観点を交えつつ行いました。また、それらの報告を受けて、上村雄彦(横浜市立大学・教授)が「ポストSDGsのグローバル・ガバナンス」と題し、各報告をつなぐコメント報告を行いました。コメント報告を受け、パネリスト間での討論、フロアーからの質問を受けたディスカッションも活発に行われました。

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 第2日目(1115日)には、「グローバル・ガバナンスの現在―コロナ禍への対応」と題したセッションを開催し、現下の「コロナ禍」に対して、国際機関、地域機構、そして米中が、いかに対応しようとしているのか、そのことが今後のグローバル・ガバナンスの在り方にいかなる含意を有するのかを検討しました。具体的には、赤阪清隆(元国連事務次長)が「WHOの対応ぶりと課題」と題した報告を行い、この間のWHOによるコロナ化への対応の現状と課題について分析をし、その後、米中の対応について、久保文明(東京大学・教授)が「トランプ、コロナ、バイデン、そして世界」と題した報告、そして青山瑠妙(早稲田大学・教授)が「中国から見た新型コロナ危機とグローバル・ガバナンス」と題した報告を行いました。また、ヨーロッパにおけるコロナ禍への対応については、福田耕治(早稲田大学・教授、グローバル・ガバナンス学会会長)が「新型コロナ危機とEU統合-医療・人道支援における欧州の連帯はどこまで可能か-」と題した報告を行いました。また、これらの報告を受けて、本名純(立命館大学・教授)が「コロナ禍への世界の対応―ASEANの視点を交えて」と題し、東南アジア諸国、そしてASEANの対応に触れつつ各報告に対して質問を投げかけるコメント報告を行いました。コメント報告を受けて、パネリスト間では活発な議論が行われ、さらにフロアーからの質問にも答えながら、さらにコロナ禍に対し、いかに対応していくことができるのかの検討がなされました。延べ130名を超える聴衆があり、充実したシンポジウムとなりました。