研究総合テーマ

国際地域研究所は、国際社会の平和や世界経済の持続的な発展を図るうえで重要な諸問題を研究し、その研究成果を国内外に広く発信してきました。紛争、テロ、貧困、環境破壊、災害、社会・階級格差、民族・宗教対立、地域統合・分裂など、グローバル化時代の国際社会が直面している課題の多くは国境を越える問題です。そのような問題への対応を重視する本研究所は、学際的な国際関係学(International Relations)と地域研究(Area Studies)を融合的・統合的に捉える研究の普及を目指しています。

研究テーマの例
  • 政治変動と紛争
  • 安全保障と平和構築
  • グローバル化時代の地域統合
  • 東アジア諸国の政治経済

研究プロジェクト

研究所重点プロジェクト

 立命館大学国際地域研究所は、2025年度に2つの「重点プロジェクト」を実施しています。一つは「紛争・平和構築研究プロジェクト」。もう一つは「中国強国化と国際秩序プロジェクト」です。以下、それぞれのプロジェクトの概要について説明します。

①紛争・平和構築研究プロジェクト

 このプロジェクトでは、北東アジア、東南アジア、中央アジア、中東、アフリカという5地域に軸足を置いた5つの研究グループに分かれ、各地域の「新しい安全保障問題」「古い安全保障問題」の理解を深めるべく活動しています。

 グローバル化の深化とともに、世界各地での内戦や武力紛争のメカニズムや力学が大きく変容しつつあります。一つには、宗教や民族といった社会的アイデンティティをめぐる共同体間の政治対立が、経済格差やメディアの発展によって複雑に過激化する傾向がみられます。また、紛争によって治安が悪化した地域に犯罪勢力が入り込み、武器や麻薬の違法取引の温床となったり、天然資源の略奪・密輸が横行したりしています。

 このような「新しい安全保障の問題」の実態を把握し、それへの対応を探ることは社会的に極めて重要な課題となっています。また、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、本プロジェクトでは、上記のような「新しい安全保障の問題」に加えて、改めて、勢力圏争いのように見える国家間戦争、いわば「古い安全保障の問題」も、平和にとって無視しえないものであるとの認識を新たにしました。ウクライナにおける戦争でも、非国家主体(NGOやOSCEのような国際機関、さらには民間軍事会社、メディア)が大きな影響を与えており、戦闘において無人ドローン等が盛んに活用されるのみならず、SNSなどを用いた情報戦も重要な意味を持つなど、いわゆる旧来の戦争とは様相を大きく異にしています。

 「新しい安全保障の問題」、「古い安全保障の問題」、いずれに対しても、国民国家とアイデンティティとの間のずれ、格差拡大、SNS、新技術、非国家主体の国境を超えた活動の活発化といった問題が、大きな影響を与えています。こうした現象が「新しい安全保障の問題」「古い安全保障の問題」の双方にいかなる影響を与えているのかについて分析することは、平和と民主主義を達成・堅持するのかを考察するうえで不可欠となっています。

 そこで、2025年度には、北東アジア、東南アジア、中央アジア、中東に、近年存在感を増す、しかし紛争が絶えないアフリカを加えた5つの地域の実態研究に根差しつつ、国際秩序、平和、民主主義、宗教、メディア、新技術といった共通の要素が、「新しい安全保障の問題」と「古い安全保障の問題」にいかなる影響を与えているのか、という共通の横軸を通して地域間比較を深めていく。所内プロジェクトとして成果を上げてきた「現代アフリカ研究会」を、重点プロジェクトに統合することで、地域間比較の視点をさらに強化するとともに、アジアに限定されない世界的現象として、「新しい安全保障」と「古い安全保障」の交錯についての考察を深めていきます。加えて、国際秩序、平和、民主主義、宗教、メディア、新技術といった共通の要素が、「新しい安全保障の問題」と「古い安全保障の問題」にいかなる影響を与えているのかを探るため、グループの垣根を超えた研究会、ワークショップ等を開催していきます。

研究課題 アフリカ・紛争・平和構築
代表者 国際関係学部  白戸 圭一
研究課題 北東アジア紛争と平和構築
代表者 国際関係学部  足立 研幾
研究課題 東南アジア紛争と平和構築
代表者 国際関係学部  本名 純
研究課題 中東紛争と平和構築
代表者 国際関係学部  末近 浩太
研究課題 中央アジア紛争と平和構築
代表者 政策科学部  宮脇 昇
②中国強国化と国際秩序プロジェクト

 このプロジェクトは、中国の現状と問題点、そしてその国際秩序、および地域秩序へのインパクトを「外交」、「経済・産業・社会」、「市場」の諸相から明らかにし、その統一的な全体像を描くことを目的としています。

 中国は対外的に政治的にも経済的にも影響力を強めています。2000年ごろから既存の国際秩序の適応者から、既存秩序の変革者へ変化しつつあるとみなされており、とくに2013年に提唱された「一帯一路」は新たな勢力圏構築を目指したものと考えられています。アメリカとの関係も厳しさを増し米中「新冷戦」とも称されるようになりましたが、かつての米ソ冷戦時代と比べ米中間の経済的相互依存関係は飛躍的に大きく、また、地球環境問題など国際的協力が迫られている問題もあります。

 2026年度は、米中対立が激化し、世界が分断の時代に入っているなかでの中国の対外関係や国内経済、産業、社会、市場の現状と問題点を分析することに重点をおきます。2025年度は、本プロジェクトの共同研究の成果として、廣野美和編『Globalising Chinese Actors and Internalising the Belt and Road: Implications for Global and Domestic Governance』をANU Pressより出版しました。この成果を踏まえて、Global China Studies の視点から中国研究を行う国際的な拠点となることを目指し、立命館大学内の専門家との連携を深め、将来の研究活動の素地となる研究会やイベントを実施します。総合大学としての立命館だからこそ可能になる、グローバル中国研究に関する学際的研究協力の内容を明確化することを目的とします。具体的には立命館大学の研究者、国内外著名大学の研究者、大学院生らを巻き込んだ「Global China Studies Series」のセミナーやワークショップを開催し、将来の研究活動を明確化します。

 「外交」ユニットは上述のグローバル中国研究に関する議論を発展させるため、Global China Studies Seminarを定期的に実施すると同時に、オーストラリア国立大学(ANU)との研究協力をさらに発展させるため、ANUで立命館と共同のGlobal China Studies 国際ワークショップを開催します。また、日本におけるグローバル中国研究に関する2026年3月のシンポジウムの研究成果を社会的に公表してきます。

 「経済・産業・社会」ユニットは2025年度はそれらの内でも社会保障問題に最重点を置いた研究を行い、共同研究の成果として中川涼司・徐林卉編著『中国的福祉社会への道』ミネルヴァ書房の出版に至りました。2026年度は、社会保障問題に関しては学会その他の場で社会的発信を重点とした活動を行います。また、2025年度は第2の柱としていた中国コンテンツ産業研究を2026年度は最重点課題とします。日本の経済産業省と文化庁はすでに鉄鋼産業を超える輸出額を持つコンテンツ産業の戦略的意義を重視し、骨太方針の中にもコンテンツ産業育成を盛り込んでおり、中国はその大きな可能性をもった市場となることが見込まれています。それとともに、中国政府のコンテンツ産業の育成を打ち出しており、中国コンテンツ産業の発展も著しく、日本市場への進出も進んでいます。その中で両国のコンテンツ産業がいかに発展するのか、また、相互の市場進出がどのように進むのかは社会的にも関心を寄せられる研究課題となっています。

 「市場」ユニットはプロジェクト研究者から成る「中国市場戦略マネジメント研究会」を組織しています。そして、構成メンバーの専門的知見を持ち寄り、相互に比較分析できる理論仮説や実証分析の枠組みの構築を図ります。2026年度は、客員協力研究員の協力を得て、中国を中心とした国内外での調査を通じて、各メンバーのテーマに沿った研究を分担しながら、各産業分野の政策・市場特性に応じた企業の包括的なイノベーション戦略、組織マネジメント、企業家ネットワークについて調査を行います。また、当該分野の専門的知識の提供を、国内外の研究協力者や実務家を招いて受けます。個々の研究成果は、研究会(公開型)での討論を通じて統合的に分析できるよう理論化を図ります。さらに、研究成果は関係学会で報告するとともに、論文を学術雑誌へ投稿して批評を受けます。

研究課題 中国経済産業構造研究
代表者 国際関係学部  中川 涼司
研究課題 中国市場ビジネス研究
代表者 経営学部  守 政毅
研究課題 中国外交研究
代表者 グローバル教養学部  廣野 美和

研究所内プロジェクト

研究課題 アフラシア研究会
代表者 文学部  山本 めゆ
研究課題 日米中政治経済研究会
代表者 経営学部  山崎 文徳
研究課題 中国法・アジア法研究会
代表者 法学部  小田 美佐子
研究課題 平和主義研究会
代表者 国際関係学部  君島 東彦
研究課題 実験政治研究会
代表者 法学部  村上 剛
過去の研究プロジェクト