【ウェビナー報告】中東・イスラーム研究の新地平 ウィズコロナ時代のチャレンジ

【実施報告】202119()13時より、「中東・イスラーム研究の新地平 ウィズコロナ時代のチャレンジ」として、コロナ下における研究実践とその方法についての講演と報告、また大学院生4名の研究成果の報告が行われました。

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第一部ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と研究の関係において、コロナ禍でその利用機会や重要性が高まる中、連綿と続く地域研究の課題の前で、それによって研究者のあるべき姿は変わるべきではないという基調講演のお話や(小杉先生)、GISを用いて様々なデータを可視化する手法の実践例の紹介と、GISを用いるからこその可能性(現地の規制強化を乗り越えられたり、トランスボーダー、サブナショナルな分析単位に着目できること等々)についてのご報告(渡邊先生)、研究対象であるイスラーム金融の様々な手続きやシステムがデジタル化する中、それを追いかけるマレーシアとUAEにおける法整備の状況の比較についてのご報告(川村先生)を伺いました。

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第二部では、サラフィー主義を従来の類型論からではなく、独自に「サラフィー政治」という概念を設定し、「ダアワ・サラフィーヤ」という組織を研究主題として政治思想と政治行動の関係性について追求する、というご報告(立命館大学大学院・米田さん)と、世俗主義であることから、イスラームを大々的に掲げられないトルコにおいて、MUSIAD(ミュスィアド)という経済団体が、イスラーム金融(無利子融資)を標榜した無利子金融プロジェクトを展開するようになっている、そのスキームや取引プロセス、イスラーム金融の実践が進む現況についてのご報告(京都大学大学院・住吉さん)を伺いました。

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移民・難民がテーマの第三部では、19世紀後半から「アラブの春」に至る第4波までの、レバノン ・シリア移民について、彼らの商業活動とその成功を中心に、年代記的な分析についてのご報告(京都大学大学院・中西さん)、「アラブの春」以降のシリア難民危機に際しての、受け入れ国である欧州の国家の対難民政策について、国家が「難民」を選ぶことや、受け入れられた難民や移民が結局は労働力として扱われるという問題点、またコロナ禍中で彼らが脆弱な立場に置かれてしまっている、というご報告(京都大学大学院・望月さん)を伺いました。

 

長丁場ではありましたが、どのご報告も興味深く聞き応えのあるお話でした。(CMEIS事務局)