Examining why and how people oppose economic and humanitarian migrants: A Japanese case (『東アジアの外交関係と移民受け入れに対する日本人の態度』研究報告会)
2023年3月8日、ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所の政策革新研究員であるニコラス・フレイザー氏(Nicholas A.R. Fraser)を招き、「東アジアの外交関係と移民受け入れに対する日本人の態度」の研究報告会、“Examining why and how people oppose economic and humanitarian migrants: A Japanese case”を衣笠キャンパスで開催した。本報告会は、国際地域研究所内のプロジェクトである実験政治研究会の研究成果報告でもある。
報告会では、2022年2月から3月にかけて実施したサーベイ実験の予備的分析結果が報告され、その含意についての議論が行われた。まず、村上剛氏(本学法学部教授)は、今回の研究報告の導入として、移民・難民受け入れ政策に対する世論を研究することが重要なのかを議論するとともに、本研究実施前までに村上・フレイザーがこれまでどのような共同研究を行い、どういった結果を得てきたのかの概要を報告した(“Introduction: Why we should study people’s attitudes towards migration and what we did so far”)。
続いてFraser氏は、“Deservingness criteria and public support for refugee admission”と題して、日本政府が難民の受け入れを計画していることを想定したサーベイ実験の予備的分析結果を発表した。Fraser報告では、多くの人々が何故、難民受け入れ政策を支持するのかについてはまだよく知られていないこと、そしてそれを説明する既存の理論とその実証はまだ発展途中であり、日本の事例検討が疑問の解明に重要な役割を果たすこと、そして様々な難民発生状況を想定した今回の実験の結果、「救助に値するかどうか」の判断が鍵となっていること、などが議論された。
最後に村上氏は、“Japanese attitudes towards economic migrants and the diplomatic relations in East Asia”と題して、日本政府が経済移民の受け入れを計画した場合のサーベイ実験の予備的分析結果を報告した。同報告では、移民受け入れ国の人々の受け入れ政策に対する賛否の態度は、受け入れが想定される移民の出身地によって大きな差があること、この差を説明する理論として、異なる脅威理論が用いられていること、日本での事例を説明するには、東アジアとの外交関係を考慮に入れる必要があることがまず挙げられた。そして、異なる出身地と交渉状況を想定した今回の実験の結果、戦後賠償や謝罪に関する政府の要求が移民受け入れ態度に大きく影響していそうであることが報告された。
各報告後、参加者より日本における移民・難民の受け入れ状況やそれを説明する理論の妥当性、実験の手続き、実験で用いた文言や状況設定の適切さに至るまで、多くの点について様々な角度から質疑があり、報告者との活発な議論が行われた。
2023年3月17日|村上剛(立命館大学法学部)