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2017年度 立命館西園寺塾 6月3日講義「トランプ政権と日米関係 緊迫する東アジア情勢」を実施

2017年6月3日(土)
 ・13:00~14:30 講義
          講師:立命館大学国際関係学部特別招聘教授・元外務事務次官
                     薮中 三十二
 ・14:45~17:00 ディスカッション

【指定文献】
 『日本の針路―ヒントは交隣外交の歴史にあり』 薮中三十二【著】岩波書店
 『世界に負けない日本―国家と日本人が今なすべきこと』 薮中三十二【著】PHP新書

 

▼受講した塾生のレポート(K.H.さん)▼
 これまで4回の講義のなかで最も親しみやすい内容であり、世界における日本の位置づけを考えさせられる非常に内容の濃い講義であった。
 ここ最近の世界情勢においては、トランプ大統領就任から目まぐるしく日々いろいろな問題が噴出している。そのようななか、ドイツと日本では、貿易赤字額が同じくらいであり、かつ国防経費のGDP比もたいして変わらないにもかかわらず、メルケル首相と安倍首相の対応によって、トランプ大統領の圧力が変わっているあたりの見解は、新聞を読んでいるだけでは見えてこないところであり興味深く聞くことができた。
 トランプ大統領のアメリカ第一主義実践に対するアメリカ国内世論の状況については大変興味があったが、やはり国民も国内優先であり、「アメリカは世界の警察ではない」といったトランプ氏の発言に賛同していることなど、なぜそうなるのかといった背景含めて説明いただいた内容が特に印象に残っている。
 また東アジア情勢においては、中国の南シナ海における横暴な主張やASEANにおける日本の信頼感の高さを知り、もっとアジアのリーダーであることを自覚した言動が求められていることを改めて認識した。先般行なわれたサミットでのトップ外交では、やはりアメリカと中国の二大国家を中心に世界が動いており、今後の日本の立ち位置を高めるためにも安倍首相のリーダーシップには大いに期待したい。
 グループディスカッションでは、北朝鮮との外交問題での解決策を考えた。問題の背景をしっかり認識しておくこと、さらにはそれに伴う各国の主義主張や思惑などを理解しておくことの必要性を痛感した。我々のグループでは答えまでたどり着けなかったこともあり、各グループの発表を聞いて、なるほどと感心するばかりであった。北朝鮮の核の脅威に晒されている日本にとっては、決して他人事ではなく、自分ごととして捉えなおし、改めて考えてみたいと思う。
 新聞ではこれまで経済面を中心に読んでいたが、今回の講義に向けて指定された藪中先生のご著書を読了して以降、海外情勢や外交に関する記事が興味深く読めるようになった。こういった問題への距離が縮まったと肌で感じることのできた大変有意義なテーマであった。


▼受講した塾生のレポート(A.M.さん)▼
 講義前半では、トランプ政権と日米関係、緊迫する東アジア情勢についてのご高話を頂いた。
 世界中が、トランプ大統領の今後の動きに関心を高めつつも、間合いを測りかねていた大統領誕生直後に、他国に先んじて安倍首相が会談を持つなど、積極的なアプローチを展開することにより、瞬く間に安全保障条約5条が尖閣諸島に適用される旨の言質を取るなど、世界で先んじて両国の距離感をグローバル社会に示せた我が国政府の初動は、個人的にも見事であったと感じている。
 対比的に他国の初動として、早々にOne China Policyを打ち出しつつ出鼻を挫かれた中国が、経済政策に焦点を切り替え信頼関係構築と協調の路線を模索している点、独メルケル首相が、米国への牽制と対立を全面に出してきている点、シリアに対する「瞬間芸」に対してロシアがこれまでのところ表立った動きを見せていない点など、対米を取り巻く相関図が刷新されつつある状況も興味深く目が離せない。 
 ただし、ホワイトハウスの布陣が固まっていない現時点において、トランプ大統領からは一貫性に欠く言動が散見されている点にも留意する必要がある。その一例が先のOne China Policyに関連した中国とのやり取りであり、一度は同政策に同調したトランプ大統領が、台湾総統とコンタクトした際には「level playing field」を主張し正当化を試みている点などを見ても、当初より熟慮された戦略的な対応であったとは考えにくい。
 こうした中では、現時点の主要国との関係相関図も、今後、些細なきっかけで瞬く間に翻る可能性も十分にあり、当面の間は、対米関係の行方はいずれも余談を許さない。
 特に初動に成功した我が国としては、山積する二国間の課題解決は急ぐことなく、両国にメリットがあるアジェンダをチェリーピックしながら、合意と協調の実績を積み上げていくことで、当面は現在の距離感を保つことが良いように思う。
 同時に、従来は、強力な日米同盟を前提として、中国・ロシア・北朝鮮など周辺諸国に対する政策が検討されてきたが、今後はより自律的に、これらに対処していく必要性があると感じた。
 私は外交の専門家ではないが、一国民としての目線から愚見を述べると、今後米国トランプ政権との間では遠からず、コンフリクトが生じるアジェンダを議論せざるを得ない局面が想定される。そこで米国に迎合することなく、一定の緊張感をもって議論に臨むためにも、中国との距離感を縮めておくことで、3国間での牽制関係が働くようにしてはどうかと考える。日中関係は、経済・技術面で既に相当な相互依存の関係にある。政策面でも中国は、これまでの日本の経済政策や金融システムの成否などを研究し、教訓としている面もある。安全保障の面では韓国の存在により直接的なコンフリクトが生じ易い状況にはない。このように、協調路線をとったとしても、両国に然したるデメリットは想定されない。とすれば、両国政府が、それが実質的ならず、表面的なものであったとしても、緊密関係を打ち出すことができれば、相互の国民感情の融和が促進され、より一層の協調関係が生まれるはずである。両国の関係性が緊密化していることを世界に打ち出すことができれば、対米関係における一定の牽制として機能し、また協調分野の拡大や我が国のプレゼンス向上にも資するのではないか。
 他方、ロシアについては、米ロ関係の距離感が見出しきれない状況にもあり、また現実的には、短期間での北方4島の完全決着も容易ではないと考えられる中、昨今の安倍政権によるロシアに対する接近は、十分な効果・メリットが期待できるとは思い難く、むしろその後の日米関係の不確実性を高めるファクターにもなりかねないのではないかと危惧する。少なくとも当面は、米ロ関係の着地点を見極めた上で対ロ関係の深追い是非を検討すべきであり、タイミングがそれを許さない場合には、4島問題については相互の主張が異なる点を共通認識とした上で、平和条約の締結を優先し、それ以上の深入りを求められる可能性のある議論については、一旦、クローズしておく方がよいのではないかと考える。


 

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2017年度 立命館西園寺塾 5月27日講義「日本の近代とは何だったのか?」を実施

2017年5月27日(土)
 ・13:00~14:30 講義
          講師:学習院大学 教授
                     井上 寿一

 ・14:45~17:00 ディスカッション

【指定文献】
  『日本近代史』坂野潤治【著】ちくま新書

 

▼受講した塾生のレポート(K.N.さん)▼
 今回の講義では、明治維新から太平洋戦争に至るまでの期間に日本で起こった歴史上の出来事から、リーダーシップを発揮するために必要なことは何かについて学んだ。
 講義では課題図書同様、当該期間を6つの段階(改革・革命・建設・運用・再編・危機)に区分けして、各段階での史実とその背景について講義いただいた。それぞれの段階で国家として抱えていた課題は異なるが、日本人としてのメンタリティーである「一体感」は、危機の時代を除き発揮し進歩していった。改革期においては外圧に対抗するため体制改革の必要性、革命期においては富国・強兵・議会・憲法を目標とした指導者間の合従連衡、建設期以降日露戦争までのあいだは外交・内政においても様々な意見があったものの、結果としてリーダーとフォロワーがうまく役割を分担しつつ日本の発展という大きな目標に向かって力を合わせていた。しかしながら、日露戦争以降、リーダー層がそれぞれの思惑を実現することに力点を置いた結果、利害関係が異なる団体間での対立が表面化し、日本として目指すべき方向性が定まらなくなってきた。加えて日露戦争後の賠償金問題、第一次世界大戦後の軍縮の流れ、世界恐慌と日本を取り巻く環境変化に伴う危機の時代を経て、崩壊の時代を迎えるに至った。
 今回の講義ではリーダーシップとは何か、という点を中心にディスカッションが行われた。リーダーに求められる資質として、①リーダーシップとフォロワーシップを併せ持つ柔軟性、②目標を共有すること必要性、が重要であることを学んだ。民間企業で働く身として、その重要性を再認識するとともに実行の難しさについて考えさせられた。
 企業内には部署によって様々な考え方がある。大きな組織で目標を共有するためには、実行力と人間的な魅力を併せ持つことが重要であることを議論を通じて感じた。



▼受講した塾生のレポート(A.M.さん)▼
 明治維新革命期における富国・強兵・議会・憲法といった複数の国家目標に対し、政治指導者(リーダーシップ)の「柔軟性」、「可変性」がうまく機能し、「ナショナルな一体感」の醸成と低コスト革命を実現した、との話があった。
 これらの複数の政策の間にはコンフリクトも生じ得たはずであるが、その時折のリーダーにより、少しずつウェイトが変えられ、バランスが採られることで、総じて政府によるリーダーシップが支持・維持されていたと推察される。
 他方、ミクロな時系列で見た場合、各時点における政策目標は必ずしも連続・一貫しておらず、ある種、政策目標のローテーションのような状態にあったのではないかとも考えられる。
近代でも、政権が交代する度に政策目標のフォーカスやウェイトの変更は生じているが、結果として見れば、国民は都度その変化を受容しつつ推移してきているとも言える。
 例えば、橋本内閣による消費税導入時には、一時的に「ヒステリックな状態」も見られたが、一度導入された今となっては、それが何に使われているかなど、ほとんどの国民は関心を示さないまま受容されている状況にある。
 直近の民主党への政権交代時には、少子高齢化問題や、多額の政府債務に表される企業・世帯・政府間のアンバランスな富の再配分といった構造的問題にフォーカスが当てられ期待が寄せられたが、抜本的な政策が打ち出せないまま、東日本大震災の対応に疑問が呈される形で政権が倒れた。
すると、その後の自民党政権では、経済政策という形にフォーカスが変えられ、国民の支持を集めたが、最近では改憲議論や外交政策にウェイトが置かれ、少子高齢化問題対策や多額の政府債務問題への優先順位はすっかり劣後してしまっているにもかかわらず、特に大きな疑問を呈することなく、漠然と現政権の政策が受容されているようにも思える。これらにみられるように、我が国民は、良く言えば政策変化に対する「受容性」が高く、言い換えれば政治的なパフォーマンスやプロパガンダに流され易い風潮があるように感じられる。
 また別の議論では、「日本人は事を始める前にとことん議論を尽くすが、やると決めたら確り対応する」という話も出た。この事前調整型の合意形成プロセスと、その後の実行確実性については、私の属する企業でも同様に当てはまる。
 第二次世界大戦についても、今でこそ、事後的な検証により、目的が不明確であったことから軍紀の乱れや前線の弛緩が生じ敗戦という結果に至った、との検証も成されているが、少なくともこの時の国民世論は、政府政策に同調し、その後ファシズム化した戦時中の軍部政策についても「盲目的」に受け入れられていたようにも見える。
 バーゼル合意やCOP、TPPといったグローバルベースでの政策合意についても、我が国ほど総花的かつ緻密・律儀に受け入れている国は少ない。
こうした設定目標の変化に対する柔軟な「受容性」と、決定した政策に関する実行過程における「盲目性」は、ある種、我が国国民固有の民族性とも言えるように思える。
 他方、政治的なパフォーマンス次第では、時にはそれが中長期的政策の立案・実行過程におけるリスクファクターともなり得るため、例えば二院制下での同一政党運営の制限、執行と監視の分離など、なんらかの監視・牽制システムの強化の必要性を感じた。



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2017年度 立命館西園寺塾 5月20日講義「平安貴族と宮廷文化」を実施

2017年5月20日(土)
 ・13:00~14:50 講義
          講師:東京大学 教授
                     田島 公
 ・15:00~15:20 グループワーク
 ・15:20~17:00 ディスカッション


【指定文献】
 『近衞家名宝からたどる宮廷文化史―陽明文庫が伝える千年のみやび』
                     田島公 他【著】笠間書院
 『文庫論』田島公【著】岩波講座 日本歴史 第22巻 岩波書店(抜刷)
 『週刊朝日百科 新発見! 日本の歴史 15号 平安3 天皇と平安貴族の24時間365日』
                               朝日新聞出版社

 

▼受講した塾生のレポート(A.M.さん)▼
 現代の民主主義・資本主義社会において、これらの歴史・史実をどのように位置付け、文書保存・解析にかかる費用を正当化すべきか、という疑問について、分類学の考え方が一つのヒントになった。
明らかになった史実は、主として次の3つの点で(能動的な)活用が可能であろう。
 ①歴史的な経験則、古代の知恵の承継と現代社会での活用(地域の伝承など)
 ②民族帰属意識・アイデンティティの醸成
 ③史実に基づく対外的な広報活動への活用(観光業など)
 *このほか、受動的な活用として、他国・他民族による自国・自民族の歴史的背景や価値観の理解・受容を促す、という側面もある。

 「分類学」や「目録学」では、歴史的な背景や当時の関係者の考え方を知るうえでは、文献に記載される史実そのもののみならず、その文献のセット(分類)も大変重要であるということ、これらが物納など引き渡しが行われる際に、関係者によって全く異なる分類に基づき再整理され、歴史家の批判を受けた事実を知った。一方で、これが物納された当時の関係者の価値観に基づき再分類された、と考えてみれば、能動的に分類の切り口を変えてみることで、新たな「価値化」ができるのではないか、という思いに至った。例えば、上述①で示した「歴史的な経験則」として伝承される「知」を活用する上では、例えば、苦境に陥った際の人々の心理や行動、主導者による打ち手の成否などに関連した史実が注目されることが想定される。
 また、上述②で示した民族の帰属意識を高めるうえでは、自民族の過去の栄華や承継されてきた価値観に焦点が当てられるシーンが想定される。
 ③の外国人に対するインバウンド情宣にあたっては、より近隣外国との繋がりが深い史実を全面に打ち出すなど、彼らの時代背景認識との関係性を結びつけることで親近感を覚えてもらうことが効果的かもしれない。
 こうして、多くの先生方の膨大な努力により分析・蓄積されてきた史実は、その切り口を変えることで、様々な局面で異なった「価値」を生み出すことができるのではないかと考える。その際に肝となるのが、アーカイブされた膨大且つ貴重な史実を使い道(価値観)に応じて如何に引き出し易くするか、ということであり、これこそが「分類学」の一つの重要性でなないか、と思った。
 上述のような用途に応じたユーザーへの訴求力を高め、新たに生み出し得る「価値」を「見える化」していくことにより、文書保存・解析にかかる費用の正当化に向けた一助となるのではないかと考える。


▼受講した塾生のレポート(M.U.さん)▼
 私たちが商活動を行っていくうえで全く影響のない活動に思える歴史を解き明かしていくという作業の意義はどこにあるのだろうか。
 例えば、企業が社史を編纂することも、直接生産性に寄与しない企業活動のように思われる。しかし、その活動により企業が過去に経験した失敗や輝かしい経験などを従業員が知り、その企業に対するアイデンティティが生まれる。従業員が帰属意識を強めることはその企業のコアとなる部分を創造する作業といえる。そして失敗から得た教訓、誇りを従業員が共有することで、たとえダイバーシティの推進などで異なる文化が企業内で共存しても、企業としてまとまることができる。
 そう考えると、歴史を解き明かしていく作業は、日本の過去を共有し、日本人が国民としてまとまることを促進させる作業といえよう。今回の講義のグループディスカッションで、「自然科学でいう基礎研究にあたる作業ではないか」という意見があり、非常に腑に落ちた。基礎研究は必ずしもビジネスに結びつくものではないが、日本の国力をあげる、ひいては世界文化に寄与する仕事として誰かが担うべき仕事といえるのではないか。
 古文書を研究・データベース化することは膨大な苦労を伴う作業である。しかし、その知識の解法により、私たち日本人はこれまで以上に日本人であることを感じることができる。そこから得る新しい知見は私たちの知る喜びを満たし、縁(ゆかり)のあるところを訪れた際には3次元でなく時間軸もいれた4次元で、ロマンをもってその場所を楽しむことができるなど、私たちの生活を豊かにしてくれる。
 さらにグローバルな視点でみると、その知識の解法は、関係が悪化している中国・韓国といった東アジアとの過去のつながりを得て、歴史を共有することで、東アジアとしてまとまっていくことも可能ではないだろうか。また、各国に日本をさらに深く知っていただく契機にもなり、そのことはビジネスにもいい影響を及ぼすだろう。
 企業に勤めていると、我々の仕事にどういった影響があるのかといった生意気なことをつい考えてしまうが、今回の講義を受け、もはやそういった一企業がどうこうという話ではなく、歴史を解き明かしていくことは、日本の国力をあげる仕事であることを改めて認識することができた。所有者の閉鎖的な保管状況、その原本を保管するのにかかるコスト、分類の問題、社会的になかなか認められづらい環境など、課題が山積していることも今回の講義で知ることができた。しかし、誰かがやらなければならない必要な仕事であり、私たちがそのために何が出来るか、ということも考えていかなければならない。

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2017年度 立命館西園寺塾 5月13日講義「人類史からフィールドへ  となりのトトロの世界をFWする」を実施

2017年5月13日(土)
 ・13:00~14:30 講義
          講師:立命館西園寺塾 塾長・学校法人立命館副総長
                     渡辺 公三

 ・14:45~16:00 ディスカッション
 ・16:00~17:00 グループワーク


【指定文献】
 『人種と歴史(新装版)』クロード・レヴィ=ストロース【著】 みすず書房
【参考文献】
 『闘うレヴィ=ストロース』渡辺公三【著】平凡社新書
【事前課題】
 『となりのトトロ』(監督:宮崎駿)を見てくること

 


▼受講した塾生のレポート(T.K.さん)▼
 今回の講義では、現代⼈類学の2 つの視点として、マクロな視点(⿃の眼)である⼈類史研究と、ミクロな視点(⾍の眼)であるフィールドワークという⼿法を学び、前者の成果であるレヴィ=ストロース『⼈種と歴史』を通じて「⽂化の差異と多様性」「⾃⺠族中⼼主義」「進歩と累積と停滞」などのテーマで議論し、また『となりのトトロ』を通じてフィールドワークを疑似体験した。
 講義中にも紹介のあった『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイヤモンド【著】や『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ【著】など、現在の経済発展の進捗や内容の地域的な差を、その地域の⺠族間の能⼒差ではなく、根底にある「構造」や「仕組み」から解き表す書物がベストセラーになっている。同時に、⼀般的な社会規範としても、⼈種差別をなくし、平等や公平が善であるという認識は、少なくとも先進国と⾔われる国々では浸透しているように思われる。しかし今、その先進国で、その認識とは真逆のことが起こっているように思う。
 そして、それは単純な“⺠族”の対⽴ではないように⾒える。元々“⺠族”を意味のある塊としてグルーピング出来ていた条件(⽣活する空間が近接し、同⼀の情報を得やすく、結果として価値観が⼀致しやすい)は、その場所・空間を無視するような情報流通⾰命や、国の枠まで越えた企業活動によって⼒が弱くなっている(それを恐れる国は情報と企業活動を遮断する)。その結果、個⼈は個々独⾃の価値観を持ち、何にも依存や強制されることのない世界を持つことが出来ることになった。しかし、それはある意味孤独であり、精神的物質的な余裕が無いと耐えきれないのではないかと考えている。もし⽣活が脅かされ、尊厳やプライドが傷つけられた時には、ある仮想の、そして⾃らを利するような分かりやすいグループに取り込まれたくなるのではないか、それが先進国で起こったことのような気がする。
 上記の通り、空間を無視する情報流通や企業活動が、個⼈の独⽴化を推進した⼀⽅で、あくまでも空間的な国や地域に依存する政治がある訳だが、その彼らが⾃らの利益のためになるようなグルーピングを、意図的に⾏おうとしているのが最近の政治情勢ではないかと考えるようになった。



▼受講した塾生のレポート(Y.N.さん)▼
 指定文献を読んで講義に臨んだが、実際に参加することで、ようやく少し学び方がわかった気がした。『人種と歴史(クロード・レヴィ=ストロース)』という指定文献をもとに、人種問題について考えるのではなく(それはそれでよいのかもしれないが)、「考え方」を学び、自身の仕事にあてはめて考えてみることが重要なのだと気づいた。
 講義のあと、ディスカッションの内容も踏まえて、改めて会社における「多様性」「相対主義と寛容」について考えてみた。

 弊社でも、海外国籍や女性、家庭事情の異なる従業員など、みんなが力を発揮できるように、「ダイバーシティ」の取組みが行われている。一方で、我々の日常の業務の中では、そういった個人の属性の違いで苦労することは、あまり多くない気がしている(ある程度制度が整っていること、また私自身が当事者ではないことが多いからかもしれないが)。
 ディスカッションでM&Aの話が挙がったが、同じ社内でも、ビジネス(売り物)が異なる事業部門の間には大きな壁があり、協業が必要となるプロジェクトでは、互いのやり方と利害関係を認めつつ進めることに非常に苦労しているのが実情である。
 ディスカッションで「民族」(「クラスタ」)の定義について議論があり、「同じ価値観を共有する単位」という意見が出たが、自分の仕事の周りでは、まず「同じ目的(=ビジネス)を共有する単位」=事業部門から考えてみようと思った。自分の属する事業部門と他事業部門との違い(ビジネス、慣例、etc.)を、会社トータルとしてのミッションに照らして認識することで、よりよいやり方を考えていきたい。
組織は、「民族」とは異なりトップの判断でどんどん変わっていく。いまネットワークにまつわる環境は非常に大きな転換期にあり、技術と業態の変化が速く、組織変更も頻繁になっている。人(クラスタの最小単位でもあり属性そのもの)と組織(目的を共有する単位)を、どれだけ適切に認識できるか、どこまで視野を広げられるか(全体を自社と置くのか、或いは同業他社を含めた業界、ユーザを含めた社会全体と置くのか)が重要なのだと思う。
 あわせて、『となりのトトロ』を通してフィールドワーク(虫の目)を学んだ。職場でも、事例分析をしてみようと思った。

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2017年度立命館西園寺塾(第4期生)開講式および特別講義・フィールドワークを開催



4月22日(土)、立命館朱雀キャンパス(京都市中京区)において社会人対象のグローバルリーダー育成講座「立命館西園寺塾」の開講式を行いました。第4期塾生として、産業界等の第一線でご活躍の20名が入塾しました。


開講式では、長田豊臣・立命館理事長が挨拶を行い、塾生に立命館西園寺塾の意義と塾生に対する期待の言葉を贈りました。



その後、塾生を代表し、毛利 憲一郎さん(株式会社三井住友銀行)が決意の言葉を述べました。



開講式終了後は、特別講義と1泊2日のフィールドワーク(下記日程)を開催しました。

4月22日(土)
 特別講義「西園寺公望の志~立命館西園寺塾塾生に期待すること」
  講師:立命館西園寺塾名誉顧問
     西園寺 裕夫



 特別講義「奈良フィールドワークに向けて」
  講師:立命館大学文学部教授・立命館西園寺塾コーディネーター
     本郷 真紹

 

4月23日(日)
 午前:大神神社・橘寺
 午後:飛鳥寺・法隆寺・中宮寺・東大寺
     


20名の塾生は約1年間に亘り、稲盛生き方コースと梅原文明コースを受講します。プログラムは講義とフィールドワークで構成、講師と塾生の徹底したディスカッションにより、強靭(タフ)で、かつ“しなやかさ”を持った「未来を生み出す人」を育成していきます。

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2016年度 立命館西園寺塾 福島フィールドワークを実施

3月4日(土)~5日(日)、福島県においてフィールドワークを実施しました。
概要は、以下のとおりです。

【概要】
 3月4日(土)
  Jヴィレッジ・天神岬・ここなら商店街・富岡駅周辺
  殉職警察官慰霊碑・仮設商店街「まち・なみ・まるしぇ」
   などの見学
  スパリゾートハワイアンズでの講話
   講師:スパホテルハワイアンズ支配人
      郡司 昌弘 様
 
 3月5日(日)
  いわき市の仮設住宅見学
  いわき・ら・ら・ミュウでの講話・見学










 

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2016年度立命館西園寺塾(3期生) 特別講義・修了式・修了記念パーティーを実施


2月4日(土)、グランドハイアット東京において、
2016年度 立命館西園寺塾(3期生) 特別講義・修了式・修了記念パーティーを
行いました。



修了式に先立ち、薮中三十二先生による特別講義を実施しました。
修了式では3人の修了生による挨拶に続き、西園寺裕夫様によるご祝辞をいただきました。
その後開催されたパーティーも、終始和やかな雰囲気で閉会いたしました。


■ 特別講義
「トランプ新米国大統領で世界はどう変わるか?」
 講師:立命館大学国際関係学部特別招聘教授・元外務事務次官
    薮中 三十二 先生


■ 修了式
 ・修了証書授与
 ・修了生代表挨拶
   富士通株式会社 古澤 礼子 様
   日清食品ホールディングス株式会社 榎本 孝廣 様
   株式会社三井住友銀行 塩尻 篤秀 様
 ・祝辞 立命館西園寺塾 名誉顧問 西園寺 裕夫 様

  


■ 修了記念パーティー
 ・乾杯 薮中 三十二 先生





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