絶滅寸前種フジバカマ
ゴール#17「パートナーシップで目標を達成しよう」
皆さんは「フジバカマ」をご存じですか?知らない・見たことがない方がほとんどではないでしょうか。この植物は、秋の七草のひとつに数えられ、古くは万葉集に詠まれ、源氏物語にも登場する、とても歴史の深い植物です。また、フジバカマはアサギマダラという世界で唯一、海を越え長距離の渡りを行う蝶が特に好むとされており、開花期にはフジバカマに飛来する姿が確認されています。しかし、本来の生息地である川沿いの草地などが河川開発の影響を受けて数が減り、京都に自生するフジバカマは長年絶滅したと考えられていました。1998年に京都市西京区大原野で野生のフジバカマが発見されたことをきっかけに京都市の地元団体「源氏藤袴会」による保全・育成活動が始まりました*。
*環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧種、京都府レッドデータブック2015:絶滅寸前種に指定
立命館大学では2020年に衣笠キャンパスでフジバカマの保全に協力を行うために、同団体からフジバカマの新芽を譲り受けて活動を開始しました。その後、衣笠キャンパスの近くを走る嵐電(京福電気鉄道)が行う沿線緑化プロジェクトとの連携の話が持ち上がり、2021年からはキャンパスの枠を超えて嵐電沿線や周辺地域へと活動の輪が広がり、現在は衣笠キャンパスの近隣住民、京福電気鉄道株式会社(嵐電)社員、立命館大学の学生・教職員で構成されるメンバーで「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」を結成し、フジバカマの保全活動に取り組んでいます。
地域とともに歩むフジバカマ
4年目の今年も、新芽を譲り受けて5月に衣笠キャンパスの東側広場で「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」の活動がスタートしました。原種のフジバカマを守るための約束事(藤袴三原則)*に則って挿し芽から育てるために、まずは挿し芽のもとになる茎を一節ごとに切り取って小さなポットに植え替える作業を衣笠キャンパスと近隣の御室小学校で行いました。この時はプロジェクトメンバーに近隣住民、小学生や保護者の方も加わり、参加者は総勢100名ほどになりました。その後、成長した苗をさらに大きなプランターへ移し替える作業を行い、現在は花が咲くのを待っています。しかし、今年は猛暑の影響でやや成長が遅く、やっとつぼみがついたところです。アサギマダラが飛来する頃には咲いてくれたらと願いを込めて、毎日プロジェクトメンバーが交代で水やりを行っています。
*京都固有種(原種)のフジバカマを守るための約束事
・種から育てない(交雑を防ぐために挿し芽で増やす)
・京都から出さない
・他府県のフジバカマを入れない
フジバカマから広がる人の輪
「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」では花を咲かせたあとのフジバカマも有効活用する取り組みを行っています。昨年は開花期が終わって刈り取ったフジバカマを使った草木染め、そして乾燥させたフジバカマで匂い袋を作る企画を行いました。近隣の小学生にも参加してもらい、ここでも地域交流の場が生まれました。また昨年に引き続き今年も嵐電嵐山駅にある足湯を期間限定でお借りし、フジバカマの香りを楽しんでいただく『フジバカマ湯』*を開催します。さらに「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」は来年開催される大阪・関西万博における京都府の「大阪・関西万博きょうと推進委員会認証事業」の認証を受けており、万博会期中に『フジバカマ湯』を開催することが決まっています。万博で日本を訪れる多くの方に京都へ足を運んでいただき、フジバカマのことを知ってもらう機会にしたいと思っています。
私たちはフジバカマの保全活動に参加するようになってから地域の方々、嵐電社員の方々と交流する機会を持つことができ、学生生活をより一層充実させることができたと感じています。フジバカマという小さな花が私たち学生と地域の方々をつなぐ輪を作ってくれています。
春から夏にかけて衣笠キャンパスの東側広場で育てたフジバカマは、開花を迎える秋に嵐電北野線の駅で展示を行います。たくさんの方にフジバカマを知ってもらい、フジバカマの保全活動を通じて自然や環境の大切さを感じてもらう輪をもっと大きくしていきたいです。
*『フジバカマ湯』/嵐電沿線フジバカマプロジェクト
嵐電嵐山駅ホーム内にある「駅の足湯」が期間限定で『フジバカマ湯』に!
乾燥させたフジバカマの香りを楽しむことができます。
また、嵐山駅屋上でフジバカマの展示が行われます。
開催期間:2024年9月21日(土)から10月20日(日)まで
※足湯の利用には利用料が必要です
嵐電嵐山駅のホームページもご覧ください https://www.kyotoarashiyama.jp/