概要
びわこ・くさつキャンパス(BKC)開設以前、この場所はアカマツやコナラなどの樹木が生い茂る里山でした。1991年から始まるBKCの開設工事において、里山は造成の一環で消失することになりましたが、当時実施された環境影響評価(環境アセスメント)に基づき、希少な動植物が生息するこの場所は今日に至るまで、30年に渡って自然環境が維持され続けています。
緑地内には前述のアカマツやコナラといった里山林や、自然池など豊かな自然環境を有しています。また、都市化が進む周辺環境の中では珍しい湿原が残されており、環境省や近畿地方、滋賀県のレッドデータブックに記載される希少な湿性植物やそれらを棲み処とするカヤネズミといった希少な哺乳類、樹林性の希少な鳥類の生息が確認されています。


BKCは滋賀県南部の山々から広がる自然と、JR東海道線(琵琶湖線)沿線の市街地との結節点に位置しています。自然緑地は区域内に暮らす生きものだけではなく、周辺の生き物の移動経路や営みの場としても重要であり、BKCの位置する滋賀県・草津市の自然環境を形成する機能の一部を担っています。
本学は自然緑地を保全するのはもちろんのこと、この場所が地域の自然の一員であることを強く意識し、近隣の企業・団体・自治体との連携による地域の持続可能な生物多様性保全に貢献します。
保全の取り組み
専門家によって年間を通じた保全活動を行っています。保全対象種の保全・育成、樹木の間伐、湿原の保全のための地下水の補給や水質・土壌管理、緑地内の生物多様性に負の影響を及ぼす外来種の防除、そして緑地内に生息する動植物のモニタリングを実施しています。また、学生・教職員・地域住民と協力した保全活動や地域の子どもたちを対象とした自然観察会などの環境教育の場にも活かされています。


生息する生きもの
区域内には、湿原を中心に環境省や近畿地方、滋賀県のレッドリスト・レッドデータブックに記載される希少な動植物が生息しています。
それらを「保全対象種」と位置付け、定期的なモニタリングと生育環境の維持を行っています。その一部をご紹介します。
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サギソウ
湿地性の多年草で、シラサギが翼を広げたような特徴的な花びらが和名の由来。観賞用の山野草としても人気が高く、園芸用に種子培養で生産されているが、野生個体の生息数は減少している。
環境省レッドリスト:準絶滅危惧種(NT)
滋賀県で大切にすべき野生生物-滋賀県レッドデータブック2020年版-:希少種 -
オオミズゴケ
湿潤な環境を好むコケ植物。大きな群落を形成し、湿地のコケ植物の主要構成種となっている。近年は生息域の土地開発や水質汚濁によって個体数を減らしている。
環境省レッドリスト:準絶滅危惧種(NT)
滋賀県で大切にすべき野生生物-滋賀県レッドデータブック2020年版-:その他重要種 -
カヤネズミ
(写真は区域内で観察された巣跡)日本で一番小さなネズミで、ススキやオギ、チガヤなどのイネ科の葉を利用して巣をつくる。生息地となる草地などの減少により数を減らしている。自然緑地内では毎年営巣が確認されており、重要な生息地となっていると考えられる。
滋賀県で大切にすべき野生生物-滋賀県レッドデータブック2020年版-:希少種 -
ヒメアカネ
国内に生息する赤トンボ(トンボ科アカネ属)では最小の種。湿地やその周辺の森林を生息地とする。生息環境の減少により個体数を減らしており、全国的にレッドリストへの掲載が進んでいる。
滋賀県で大切にすべき野生生物-滋賀県レッドデータブック2020年版-:その他重要種
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