未来への種まき

For sustainable growth

エネルギー政策で地方を元気に

立命館大学
窪園 真那さん
産業社会学部

海外事例に学ぶ地方の未来とは

  ゴール#7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに

 私はエネルギー政策が、地域の成長戦略の鍵になると考えており、SDGsの目標#7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に注目しています。一般的にエネルギー政策というと温暖化など地球規模の環境問題を思い浮かべる人が多いと思いますが、私はもっとミクロな視点から、エネルギーを手段として地域活性化につなげる道を探っています。

 エネルギー政策と地域活性化というのは、一見つながりが薄いように感じるかもしれませんが、国内外問わず多くの事例があります。例えば、オーストリアのある地方都市では、木質バイオマスの地域熱供給により、再生可能エネルギーの地産地消モデルを実現しています。日本で多額の化石燃料費の国外流出が問題視されていますが、このオーストリアの地方都市でも経済活性化を妨げる問題が、域外に流出するエネルギーのコストにあると考え、脱化石燃料による経済活性化というビジョンを打ち出しました。地元の木質バイオマス資源による自給自足でエネルギーを賄い、域外への燃料費の流出を食い止めると同時に、地元の工務店がエネルギーロスを減らす高断熱住宅を作るなど、産業の創出、雇用の創出に成功しています。また、市営住宅などの低所得者向け住宅の断熱基準を高く設定し、さらに域内のエネルギーで賄うことで、高い光熱費を払うことなく冬場でも快適に過ごすことができ、社会的包摂にも貢献しています。エネルギー政策を核としたまちづくりをすることが、結果として若者をはじめ、誰もが住みたくなる地域の実現につながっているのだと思います。学内でこのような事例を教員や実務家から学ぶと同時に、学外でも地域の脱炭素政策について考えるプログラムを企画・運営するなど実践的に学んでいます。各地域の脱炭素の取り組みがさらに加速することで、日本の持続可能な未来を実現できないかと考えています。

街を次世代に残すために

 私は鹿児島県出身で、幼少期は奄美大島で過ごしたこともあります。日本の他の地方と同様に少子高齢化や人口流出が大きな問題となっているのですが、生まれ育った街の文化、人、自然など素晴らしい面をよく知っているだけに、次の世代に残したいという思いが強く、当事者意識を持って問題と向き合ってきました。産業社会学部では広く日本の社会問題を取り扱っていて、エネルギー、労働、ジェンダーなど幅広く学んできたことで、考え方の幅が広がったと感じています。結果として、現在は「エネルギー政策による地域活性化」というテーマに関心を持っていますが、国連が掲げるSDGsのように、経済、環境、社会の3つの側面のバランスのとれた持続可能な社会の実現をするためには、どのような社会の変革が必要なのかを様々な角度から考えています。

 また、私は外交安全保障にも関心を持って学んでいて、国際的な視点からも持続可能な社会のあり方について考えています。エネルギー安全保障という言葉もあるように、エネルギー政策を考える上では国際的な視点が必要不可欠です。日本の地域を見つめるミクロな視点と、世界に目を向けるマクロな視点の両面から、よりよい政策のあり方を探っていきたいと考えています。

脱炭素の取り組みを楽しいものに変えたい

 将来は、行政官や研究者として国や地方のエネルギー政策に携わりたいと考えています。私の地元をはじめとする地方都市が、人口減少に応じてミニマム化しながらも持続可能な地域として活気を取り戻す未来に貢献したいです。

 日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すと宣言していて、立命館も2030年に「カーボンニュートラル・キャンパス」の実現を目指しています。しかし、今のままではパリ協定で掲げられた目標には届かないと感じています。個人の意識を変えるだけではなく、人が無意識に行動変容できるような社会のシステムを構築することが大切で、私はそれを楽しいこと、わくわくできるものにしていきたいと考えています。

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