未来への種まき

For sustainable growth

草津をアップサイクルのまちへ

立命館大学
西村 まどかさん
経済学部
園 真洸さん
経済学部

廃棄するごはんをビールに

  ゴール#11「住み続けられるまちづくりを」

 びわこ・くさつキャンパス開設30周年記念ビールを購入してくださった皆様、ありがとうございました!お味はいかがでしたか?このビールは、BKC内の食堂で未使用のまま廃棄される予定だったご飯をビールの副原料として再利用したアップサイクル商品です。BKC開設30周年記念事業の一つとして、廃棄食材を使ったクラフトビールを企画・販売されている株式会社Beer the First様(神奈川県横浜市)とびわ湖ブルワリー株式会社様(滋賀県高島市)のご協力のもとに、私たち Beer the 30thも企画・醸造・販売に携わりました*。このビールを飲みながら、BKCで過ごした学生時代の思い出を語り合っていただきたいという思いから「さあ、あの頃の話をしよう」という商品コンセプトを打ち出し、ラベルデザインはBKCの象徴ともいえるアクロスウイングの時計台とレトロな雰囲気のデザインをメンバーが考えました。完成後に大学や地域のイベント等で販売する機会がありましたが、いずれも販売開始後すぐに完売、「テレビのニュースで取り上げられていたのを見て買いに来た」、「学生が作ったビールと聞いて気になって」、「スッキリした味でおいしい」などの嬉しいお声をいただきました。

 *株式会社Beer the Firstに勤務する本学卒業生から、ビールを介したコラボ企画ができないかと打診があり、びわこ・くさつキャンパス開設30周年記念事業の一つとして実現しました。30周年事業の企画委員である、経済学部・佐野聖香教授を中心に、西村さんや園さんをはじめとする経済学部と食マネジメント学部の学生有志によって「Beer the 30th」が立ち上がりました。


【sdgs/interview】20250115-02
びわこ・くさつキャンパス開設30周年記念ビール

アップサイクルの持つ可能性

 私たちは地域にアップサイクルを浸透させ、長く住み続けることのできる、より良い町にしたいという目的を持っています。この思いに至ったのは、アルバイトやゼミのフィールドワークでの経験がきっかけです。まだ食べられるのに商品として扱うことができないという理由で廃棄される食品や規格外の野菜が多いことに驚き、それらを有効活用することができないかということに強い関心を持ちました。

 再利用はリサイクル、ダウンサイクル、アップサイクルという3つの定義があります。リサイクルは回収したものを原料の状態に戻し、もう一度同じ製品によみがえらせることを指します。ダウンサイクルは廃棄されるものを原料や別の素材として使用し、元の製品よりも価値を下げて再利用する手法です。リサイクルは選別や洗浄など、一般生産品を購入するよりも一定以上のコストがかかること、ダウンサイクルでは製品が低品質化するため持続性が低く、最終的には廃棄されるというデメリットがあります。今回取り組んだアップサイクルは回収したものを原料に戻さず、元の製品の特徴を生かして新たな価値を付加して別のものを作ります。もちろんアップサイクルにも材料の安定確保の難しさといった課題があります。しかし、元の製品からさらに価値を持つ製品を生み出すことはリサイクルやダウンサイクルにはないメリットです。アップサイクルをまち全体で推進することができれば、持続可能なまちづくりに貢献できるのではないかと考えています。


 その第一歩目として取り組んだのが、大学内で廃棄されるはずだったご飯をビールの副原料に再利用するという新たな価値を付加して作ったのがこのクラフトビールです。食品ロスの中で最も廃棄量が多いとのはご飯(米飯)やパンなどの炭水化物である言われています。実際に大学の食堂から、未使用のまま廃棄されてしまうご飯の現状を知り、ビールの副原料として再利用することにしました。食堂で余剰となったご飯を回収、冷凍保存して計38kg分を醸造所に送り、私たちも仕込みを手伝い、2~3週間かけて発酵させ、合計1,100本のクラフトビール完成に至りました。食堂から回収した38kgのご飯は副原料として麦芽を発酵させる工程で使用したので余すことなく使い切ることができました。廃棄されるはずだったご飯にビールの副原料という新たな役割を付加して完成したビールを「おいしい」と皆さんに喜んでいただけたことは、アップサイクルの可能性を強く感じとるとともに大きなやりがいを得ることができました。

 一方で、ビール作りの過程では「麦芽かす」という、副産物が大量に生じます。その多くは産業廃棄物として廃棄されているのですが、その再利用法についてメンバーやプロジェクトを主導した経済学部の佐野聖香先生と検討を進めています。ただ「捨てられるご飯でクラフトビールを作りました」だけで終わらない、さらなる循環型社会構築を目指した取り組みを推進したいと考えています。


アップサイクルを広めたい

 ビール作りを通して、廃棄されるはずだったものに新たな価値を付加して別の製品を作り出すアップサイクルに大きな可能性を感じました。ビール以外にもアップサイクル可能なものを探し、もっと多くの方に知っていただきたいです。また今回のアップサイクルビールづくりの取り組みを農林水産省が主催する「第1回みどり戦略学生チャレンジ」に応募し、近畿大会で発表を行いました。残念ながら、近畿代表には選出されず、全国大会への出場は叶いませんでしたが、取り組みの成果を取りまとめて多くの方々の前で発表する機会を持てたことは大きな財産になりました。

 環境配慮は一人ひとりがアクションを起こさないと変えることができないと感じたので、アップサイクルビールを手にしていただいた皆さんそれぞれができることを行動に移していただけたら嬉しいです。個人でアップサイクルに関するプロジェクトを立ち上げるのは難しいことですが、私たちがアップサイクル商品を購入することがその活動をしている人たちの支援になり、アップサイクルがさらに広がるきっかけになります。もしアップサイクル商品を見かけられたときはぜひ購入していただけたらと思います。

 Beer the 30thの活動は2024年度で一旦区切りをつけることになります。今回のプロジェクトは大学内のアップサイクル、資源循環の取り組みでしたが、今後はプロジェクトの目的である「アップサイクルを地域に浸透させること」を達成するため、まちぐるみでの取り組みにも挑戦したいと考えています。

  1. Home
  2. 未来への種まき
  3. 草津をアップサイクルのまちへ