「立命館白川静記念東洋文字文化賞(略称 立命館白川静賞)」について
---------- 制定の趣旨 ----------
日本の社会と文化の発展、また東アジアの交流と相互理解の歴史を顧みるに、漢字を中心とする東洋文字文化は大きな役割を果たしてきました。東洋文字文化はこれからも日本および東アジアの精神的支柱であり続け、その振興は重要な意義が有ると考えます。
この賞は、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所が、東洋文字文化に関する研究、普及および教育活動等の奨励支援のため、優れた個人および団体の業績を表彰することを目的としています。日本社会・文化の継承と発展、東アジアの平和と繁栄のために本賞の制定がその一助となることを願っています。
<対象者>
- 立命館白川静記念東洋文字文化賞大賞特にすぐれた業績のもの
- 立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞教育指導ならびに
漢字文化の普及に貢献したもの - 立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞若手の研究者
第6回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式
第6回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の3件に贈ることを決定し、2012年7月6・7日にて表彰式を行いました。
左から蘇氷氏(受賞者)、山元宣宏氏(受賞者)、加地伸行研究所長
福井県立嶺北養護学校(受賞団体)
立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞
受賞者 | 蘇氷(北海道文教大学外国語学部教授) |
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対象業績 | 『常用字解』の中国語版出版 |
副賞 | 賞金 30万円 |
立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞
受賞者 | 山元宣宏(宮崎大学教育文化学部専任講師) |
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対象業績 | 秦漢時代の書体の諸相に関する研究 |
副賞 | 賞金 20万円 |
立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞特別賞
受賞者 | 福井県立嶺北養護学校(団体) |
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対象業績 | 福井県立嶺北養護学校における「書」作品制作 |
副賞 | 賞金 20万円 |
---------- 授賞理由 ----------
(1)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞 蘇氷 氏
白川文字学の一般的普及を目的とした『常用字解』を正確に中国語に翻訳し、かつ「導読」1章を設けて白川静の学問を深い尊敬の念をもって世に紹介した本書を白川学の普及における業績として高く評価した。
(2)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育奨励賞 山元宣宏 氏
書体はその形式上からの研究が普通であるが、山元氏は中国思想史上の今古文論争の政治性を深く追求し、隷書とは、古文学派が今文学派の文字を貶めた呼称とする新鮮な説を提起した。広い視野と緻密な論証とは将来の研究の大いなる飛躍を示して余りありこれを高く評価した。
(3)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞特別賞
福井県立嶺北養護学校(団体)
障がいのある生徒への教育方法として、甲骨文・金文の絵画的性格を活用し、国語の書道ならびに芸術的感動を一体化した教育を実施されており、大きな成果を挙げている。この勝れた教育例は、全国の障がい児教育に普及する可能性が大きく、これを高く評価した。
-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------
委員長 | 加地伸行(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長) |
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委員 | 上野隆三(立命館大学教授) 下中美都(株式会社平凡社取締役) 芳村弘道(立命館大学教授) ※五十音順 |
第5回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式
第5回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の2件に贈ることを決定し、2011年5月21日、立命館大学衣笠キャンパス以学館ホールにて表彰式を行いました。
立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞
受賞者 | 森岡隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授) |
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対象業績 | 書道史研究 |
副賞 | 賞金 30万円 |
立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞
受賞者 | 書論研究会(代表:杉村邦彦) |
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対象業績 | 学術機関誌『書論』の刊行を通じて、書論や書に関する諸文献の研究 |
副賞 | 賞金 30万円 |
---------- 授賞理由 ----------
(1)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞 森岡隆 氏
多年にわたる書道史研究による、文字や書法についての豊かな学識に基づき、日本における出土木簡の文に、左から右へ、すなわち左書きがあることを実証し、それは2幅対・3幅対のシンメトリーに発するものと推論し、そのシンメトリーの発想や思考は、甲骨文や金文にまで遡れるのではないか、とした、日本古代の出土資料に対する独創的解明を中心とする漢字文化の研究に関するすぐれた業績を高く評価した。
(2)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞 書論研究会
京都教育大学名誉教授、杉村邦彦会長を中心に、学術機関誌『書論』の刊行を通じて、書論や書に関する諸文献の研究を着実に行ない、その成果は中国・台湾・韓国等においても極めて高い評価を得てきた。その多年にわたる、書を通じての漢字文化の普及に努めたすぐれた業績を高く評価した。
-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------
委員長 | 加地伸行(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長) |
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委員 | 上野隆三(立命館大学教授) 下中美都(株式会社平凡社取締役) 芳村弘道(立命館大学教授) ※五十音順 |
第4回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式
第4回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の2件に贈ることを決定し、2010年6月6日、立命館大学衣笠キャンパス以学館ホールにて表彰式を行いました。
立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞
受賞者 | 久米雅雄(大阪芸術大学客員教授) |
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対象業績 | 印章研究 |
副賞 | 賞金 30万円 |
立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞
受賞者 | 岡墻裕剛(北海道大学大学院文学研究科専門研究員) |
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対象業績 | 『文字のしるべ』(B・Hチェンバレ著)の文献学的研究 |
副賞 | 賞金 20万円 |
---------- 授賞理由 ----------
(1)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞 久米雅雄 氏
従来の印章研究が印影や拓影を重んじた平面的研究に偏る学派と、実物の古印を重視する学派とがあるが、その2学派の手法に対して久米雅雄氏は、ともに批判的に検討し、考古学的手法を導入した。すなわち、発掘によって層位学的に時代差を把握すること、ならびに実物印の形式を区分し形式ごとの時代的変遷を把握すること、この2方法によって相対的編年を行い、各時代の鈕式と文字書体の特徴を明らかにし、印ならびに印影の作製時代を体系的に推定することに成功した。印章の文字書体を中心とする漢字文化の研究に関するすぐれた業績を高く評価した。
(2)立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞 岡墻裕剛 氏
明治時代初期において、B・Hチェンバレンが著わした『文字のしるべ』の文献学的研究を行ない、『日本基本漢字』・「漢字用例」・公的漢字 表等との比較を通して同書の特徴と傾向とを明らかにし、かつ現存する同書29冊における書き込みの様態を精密に調査し、漢字学習の実態について精密な検討を行った。これは、日本近代における漢字普及度の実態や、国語教育史の研究において、従来になかった視点であり、この
『文字のしるべ』研究を基礎にして、研究のさらなる展開が大きく期待されると高く評価した。
-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------
委員長 | 加地伸行(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長) |
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委員 | 上野隆三(立命館大学教授) 木村一信(立命館大学教授・文学部長) 下中美都(株式会社平凡社取締役) ※五十音順 |