2012.12.10 生命科学部 久保幹教授の研究グループが生物的指標に基づく土壌肥沃度診断法を世界で初めて開発-有機農業での安定生産とコスト削減により農業の生産性向上につなげる-

生命科学部の久保幹教授の研究グループは、生物的指標に基づく「土壌肥沃度指標(SOFIXⓇ=Soil Fertile Index)」を世界で初めて開発しました。

政府のTPPへの参加検討に伴って、関税撤廃による農業分野への影響が懸念される中、世界と戦える安全・安心で質の高い農作物を安定的に生産する農業システムの構築が重要となっています。

 農業生産の質と量を向上させるには「土づくり」が最も重要な要素の一つです。土壌を定量的に診断するには、化学的性質(肥料成分、緩衝作用等)、物理的性質(保水力、通気性等)、生物的性質(微生物による有機物の分解、耐病害虫等)の3つのいずれかで評価する必要があります。従来の土壌診断技術は、化学的性質が中心で、生物的性質の評価は困難でした。そのため、化学肥料を使わない有機農業では、「土づくり」を経験に頼らざるを得ず、安定的な生産ができないことが普及の妨げとなっています。

 開発したSOFIXは、土壌中の微生物量や微生物による物質の分解・循環を定量的に評価することで生物的分析を可能にし、有機肥料を用いた「土づくり」の科学的な処方箋を出すことに成功しました。

 実証実験として、2011年12月から2012年7月にかけて、実際の圃場で化学肥料を用いた土壌と、SOFIXに基づいて有機肥料(牛糞)を施肥した土壌とでトマトの比較栽培実験を行いました。その結果、SOFIXに基づいた土壌では、化学肥料を使った場合に比べて、トマトの糖度が有意に向上しました。また通常、有機農業は化学農業と比べ、収量が大きく減少しますが、ほぼ同程度となり、圃場におけるSOFIXの有効性を示すことができました。今後は、SOFIXに基づいた土壌診断の普及と最適な有機肥料の開発により、化学農業にかかるコストに比べて、約30%減少させることを目指します。

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SOFIXに基づき施肥した土壌でのトマト栽培(場所:JAおうみ冨士「おうみんち」内 実験圃場)