菊盛 真衣准教授

MESSAGE

映画のクチコミに対する
学部時代の疑問が
今の研究にもつながっています。

研究テーマ

オンラインクチコミが消費者行動に及ぼす効果

否定的なクチコミが商品の評価を高める場合もある

私が今もテーマとする「オンラインのクチコミが消費者行動に及ぼす効果」の研究を始めたのは、マーケティングのゼミに所属していた学部生の時でした。当時大ヒットしていたアニメ映画に対するインターネット上のクチコミに、肯定的なものだけでなく否定的なものも大量に寄せられていることに着目したのです。先行研究によると、否定的なクチコミは消費者行動にマイナスの影響を与えるはず。なのにこんなにヒットしているのはなぜだろう?そう考えてゼミの仲間と始めた研究が、大学院での研究にもつながっていきました。
博士前期課程の研究で、肯定的なクチコミの中に否定的なクチコミが一定比率存在している方が、その商品に対する消費者の評価が高くなることを明らかにし、後期課程では、どのような条件でその効果がより大きくなるのかについて研究を深めました。その結果、たとえば映画をはじめエンターテイメントに関する商品の場合、専門性の高い人がクチコミを読む場合など、否定的なクチコミの存在が消費者の評価を高める一定の条件を明らかにすることができました。

「フォロワー数」と「視線」を切り口にインフルエンサーの広告効果も研究

現在取り組んでいるのは、インスタグラムのインフルエンサーの広告効果に関する研究です。例えば、フォロワー数と広告効果の関連性について。一般的にはフォロワー数が多いほど広告効果が高いと思われているでしょう。しかし、フォロワー数を気にしない消費者も存在するのでは?と考えた私は、消費者の価値観と消費行動を組み合わせ、どのような人はフォロワー数を重視するのか、どのような人はしないのかを、大学院生や学部生とも一緒に調査しているところです。
インフルエンサーの視線に関する研究も行っています。カメラ目線なのか、視線を外しているのかによって商品への評価がどう変化するかというもので、今後は視線の向きだけでなく、“あざとい”カメラ目線の場合、商品を見ている場合など、条件を整理してさらに探究する予定です。一定の結果が得られれば、インフルエンサーマーケティングにおいて「どんな人にアピールしたいか」をもとにインフルエンサーを選考できるようになるかもしれません。

メッセージ

SNSの研究と聞いてなんとなく楽しそうだと思う人もいるかもしれません。でも私の指導は非常に厳しいということは覚悟しておいてください。博士後期課程に進学し、将来はマーケティング学界に貢献できる人材を育てたいと考えているからです。研究者としても教育者としても高い水準の専門性を求め、そのためのトレーニングを行います。自己満足に終わらず、人に理解され、評価される論文の書き方やプレゼンテーションの仕方も身につけてください。意欲が高く、研究者を目指す人にとっては厳しくともいい環境だと思います。ぜひ一緒に研究しましょう。

研究が好きでやる気があるなら研究者を目指してほしい

私は学部時代のゼミで研究の面白さを知り、大学院に進学しました。熱心な指導教員のもと、国際学会での発表や対外的な評価を受ける機会を得る幸運にも恵まれ、研究を仕事にできたら人生が楽しいのではないかと考えて後期課程に進学し、教員になりました。
大学院で思考プロセスや問題解決のプロセスを身につけ、その後就職して専門性を生かした仕事をするのもいいでしょう。でも私の研究室に来る人には研究者を志してほしいと考えています。不安もあるかもしれません。しかし私は、研究が好きで、やる気さえあれば何とかなると考えています。気持ちさえあれば、知識や論文を書く能力はトレーニングで身につくもの。逆に、気持ちに自信がないと一人で論文を書く孤独に耐えられないかもしれません。古臭い考えかもしれませんが、ハートが大切だと思っています。

おすすめの本

消費者行動とマーケティングに関して、初歩の知識から最新の研究トピックまで、網羅的に理解できる辞書のような本です。ぜひ読んでみてください。

  • 単行本

    ソロモン 消費者行動論 上・中・下

    マイケル・R・ソロモン 著


    単行本

    コトラー&ケラー マーケティングマネジメント

    フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー著