中村 真悟教授

MESSAGE

社会を良くしていこうと伝えるために、自由に悩めるのは
研究者の特権

循環型社会をつくるために
企業経営は何ができるかを示したい

私は化学産業を対象にした研究を行ってきました。今、取り組んでいるものの一つは、ペットボトルのリサイクルをビジネスとして成立させるにはどうすれば良いかという研究です。
企業経営は企業を持続させるために行うものです。企業が持続するためには、持続可能な社会を作らなければなりません。そんな問題意識から研究を始めました。人々の気持ちの問題、あるいは国が取り組むべき問題と考える人もいるかもしれませんが、実際にリサイクルを行うのは企業です。その企業の経営を成り立たせる仕組みを作るにはどうすれば良いかを考えなければならないと思ったのです。
さまざまな企業で調査を行った結果、ある日本のリサイクル企業を発見しました。世界で唯一、一度使用したペットボトルを再びペットボトルとして利用できる材料にリサイクルでき、経営的にも成立している企業です。この企業を成立させているのは何か、どうして日本だけ違う状況があるのかについて、技術、日本独自の制度、飲料水メーカーとの関係などを明らかにすることによって、循環型社会をつくるために企業経営は何ができるのかを示したいと考えています。

ある分野のオンリーワンになれるのは
創造的活動としてとても楽しい

大学院で学ぶことのメリットは、学部で学んだ経営学の用語や理論が、実際にどこまで使えるものなのかを、自分で検証する機会を得られることだと思います。より深く経営の実態が学べるだけでなく、社会の中で自分はどう頑張っていこうかという発想を深めることもできるからです。私もそうでした。
ビジネスとリサイクルの関係を研究する研究者は比較的少なく、ある分野のオンリーワンになれるのは、創造的活動としてとても楽しいです。社会を良くしていきましょうと伝えるために自由に悩めるのは研究者の特権です。そして論文を書くと誰かが見てくれて、会話が始まります。論文をある企業に送ると、もっと話を聴きに来てほしいと言われ、さらに研究を深められる。企業人とは違う社会的貢献の仕方がある、この点も研究者の魅力だと感じます。

社会のことをきちんと学び
進路選択の幅を広げるための貴重な場

学部生の就職活動では、イメージ先行で企業選びをしている様子も見受けられます。自分を投じるに値する企業を選ぶのは一大事のはず。それを真面目にやるためには、一度きちんと社会のことを学ぶ必要があると思います。その時、進路選択の幅を広げるのに大学院は貴重な場だと思います。人生は長いもの。わずか数年、余計な時間を過ごすことによって、より良い選択ができるのなら、よくわからないまま就職先を決めるよりも良いのではないでしょうか。もっとこの道でやりたいと思えば後期課程に進めばいいし、2年で就職するのもいいでしょう。進路選択のための時間が短くなっているからこそ、じっくり考える時間として、大学院を選択肢に加えてほしいと思います。

※インタビュー日時:2019年2月18日