その他出版物


『「詞譜」及び森川竹磎に關する硏究』

萩原正樹 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2017年
A5判上製函入 736頁 定価 本体10,000円

本書は第一部「『詞譜』硏究」と第二部「森川竹磎硏究」とに分かれ、第一部では明淸代の代表的な「詞譜」である『詩餘圖譜』、『詞律』、『欽定詞譜』等について論じ、特に『欽定詞譜』に對しては、その所說を批判的な觀點からとらえようと試みた。また第二部では森川竹磎の生涯や、その畢生の大著である『詞律大成』等について論じ、末尾に竹磎の詳細な年譜を附した。さらに附論「日本における詞の諸相」として村瀨栲亭、蕪城秋雪と戶田靜學に關する論考や資料紹介を加えた。(中略)
中國に詞という純粹に抒情的な韻文が有ること、その詞の形式を解析する「詞譜」が多くの人によって作られてきたこと、さらに日本にもその詞の魅力に取り憑かれて詞作にはげんだ人々がおり、『詞律大成』というすぐれた「詞譜」を命を削るようにして著わした森川竹磎という詞人がいたこと。こうしたことをぜひ多くの方に知って頂きたい。それが、これまで蕪雜な論稿を書き連ねてきた理由の一つであったと思う。(本書後記より)


【目 次】
はじめに 「詞譜」と森川竹磎
第一部 「詞譜」硏究
第一章 國內所藏稀見『詩餘圖譜』三種考/第二章 『詞律』の四聲說について/第三章 杜文瀾の『詞律校勘記』について/第四章 『欽定詞譜』訂誤―僻調について―/第五章 『歷代詩餘』と『欽定詞譜』/第六章 『欽定詞譜』詞體考/第七章 『欽定詞譜』の『花草粹編』引用について/第八章 『欽定詞譜』內府刻本二種の異同について/附  國內所見詞譜異同表
第二部 森川竹磎硏究
第一章 竹磎家世考/第二章 「鷗夢新誌」發刊までの森川竹磎/第三章 中村花瘦と森川竹磎/第四章 竹磎の『詞律大成』について/第五章 竹磎の『欽定詞譜』批判/第六章 高陽臺、慶春澤と慶春宮/第七章 竹磎の詞論硏究について/第八章 竹磎若年の詩詞文について/第九章 森川竹磎年譜
附論 日本における詞の諸相
第一章 『增續陸放翁詩選』所收「詞十九首」と村瀨栲亭/第二章 蕪城秋雪の『香草墨緣』について/第三章 靜學詞存
後記
初出一覽
索引


『『太平廣記』夢部譯注』

今場正美・尾崎裕 譯注 中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2015年
A5判上製函入 351頁 定価 本体5,000円

北宋・李昉等編『太平廣記』は全500卷、本書は、卷276から卷282までに收録された、夢に關する171條の全譯注である。
171條はさらに内容別の分類がなされている。卷276・卷277に收録の62條には分類名が示されていないが、卷277・卷278の49條には「夢休徴」、卷279の30條には「夢咎徴」、卷280・卷281の20條には「鬼神」、卷281・卷282の10條には「夢遊」と名づけられている。「夢休徴」は吉兆の夢、「夢咎徴」は凶兆の夢、「鬼神」は死者の靈が現れる夢、「夢遊」は冥界などの別世界に遊ぶ夢である。ただ、各條のモチーフが複數の分類項目にまたがる場合も少なくない。これは、「夢休徴」「夢咎徴」が夢の豫兆性を前提とした分類で現實の結果の如何を問題とするのに對して、「鬼神」「夢遊」は夢自體の内容や形態に關わっていて、それぞれ別の範疇に屬する分類であるのに、竝列的に考えて四分類したためにおこったのであろう。

本書は、『學林』(中國藝文研究會〔立命館大學〕)第43・44・45・48・49・50・51・52・55・56・58號に掲載された「『太平廣記』夢部譯注」をもとに、訂正と加筆を行ったものである。平成18年(2006年)から平成26年(2014年)の8年間にわたる連載であった。これより前、平成17年(2005年)に本書の前身とも言うべき「『太平廣記』夢部譯注稿」(中國藝文研究會)を刊行したが、誤解や誤植などが多く、甚だ不滿足なものであった。そこで、新たに現代日本語による譯を付け、語注には出典を明示するなど、大幅な改訂を行うべく、ほぼ隔月に一度、擔當部分の原稿を持ち寄って、各條の譯注について檢討を重ねた。各條の譯注は、本文、訓讀、〔訳〕、〔出典〕、〔語注〕よりなり、各條の題にある番號は、譯注者が付けたものである。卷末には、人名・官名および注釋を施した語句の索引を附載した。

【目 次】
凡例 卷第二百七十六 夢一
1 周昭王/2 吳夫差/3 漢武帝/4 司馬相如/5 陰貴人/6 張奐/7 鄭玄/8 范邁/9 許攸/10 薛夏/11 蔣濟/12 周宣/13 王戎/14 鄒湛/15 陳桃/16 呂蒙/17 王穆/18 張天錫/19 張駿/20 索充宋桶/21 苻堅/22 後趙宣咸/23 張甲/24 張茂/25 晉明帝/26 馮孝將/27 徐精/28 商仲堪/29 商靈均/30 桓豁/31 司馬恬/32 賈弼/33 王奉先/34 宗叔林/35 沙門法稱/36 劉穆之/37 徐羨之/38 沈慶之/39 明(啇の下に衣)之/40 劉誕/41 袁愍孫/42 劉沙門/43 諸仲務/44 孫氏/45 桓誓/46 張尋/47 徐祖/48 桓邈/49 周氏婢/50 何敬叔
卷第二百七十七 夢二
51 閭英/52 宋瓊/53 宋穎妻/54 盧元明/55 元淵/56 許超/57 北齊李廣/58 蕭鏗/59 徐孝嗣/60 梁江淹/61 代宗/62 徐善
 夢休徵上
63 隋文帝/64 唐高祖/65 戴冑/66 婁師德/67 顧琮/68 天后/69 薛季昶/70 玄宗/71 玄宗/72 魏仍/73 陳安平/74 李瞿曇/75 趙良器/76 奚陟/77 張鷟/78 裴元質/79 潘玠/80 樊系/81 呂諲
卷第二百七十八 夢三
 夢休徵下
82 張鎰/83 楚寔/84 楊炎/85 竇參/86 李逢吉/87 王播/88 豆盧署/89 韋詞/90 皇甫弘/91 杜牧/92 高元裕/93 楊敬之/94 盧貞猶子/95 國子監明經/96 薛義/97 鄭光/98 宋言/99 曹確/100 劉仁恭/101 唐僖宗/102 劉檀/103 晉少主/104 辛夤遜/105 何致雍/106 郭仁表/107 王璵/108 謝諤/109 崔萬安/110 江南李令/111 毛貞輔
卷第二百七十九 夢四
 夢咎徵
112 蕭吉/113 侯君集/114 崔湜/115 李林甫/116 杜玄/117 召皎/118 李捎雲/119 李叔霽/120 李愬/121 薛存誠/122 李伯憐/123 張瞻/124 于菫/125 盧彥緖/126 柳宗元/127 衞中行/128 張省躬/129 王惲/130 柳凌/131 崔暇/132 蘇檢/133 韋檢/134 朱少卿/135 覃隲/136 孟德崇/137 孫光憲/138 陸洎/139 周延翰/140 王瞻/141 邢陶
卷第二百八十 夢五
 鬼神上
142 煬帝/143 豆盧榮/144 楊昭成/145 扶溝令/146 王諸/147 西市人/148 王方平/149 張詵/150 麻安石/151 閻陟/152 劉景復
卷第二百八十一 夢六
 鬼神下
153 李進士/154 侯生/155 袁繼謙/156 邵元休/157 周藹/158 鄭起/159 朱拯/160 韋建/161 鄭就
 夢遊上
162 櫻桃靑衣/163 獨孤遐叔
卷第二百八十二 夢七
 夢遊下
164 元稹/165 段成式/166 邢鳳/167 沈亞之/168 張生/169 劉道濟/170 鄭昌圖/171 韓確
後記
索引


『故黄萬居氏寄贈漢籍古書分類目録』

立命館大学中国文学専攻発行 2012年
A4判 36頁

本目録は、故黄萬居氏旧蔵の漢籍・準漢籍の古書(線装の書籍)を収録し、これに国書を附録したものである(内容に照らして例外的に洋装本を一点含めた)。漢籍・準漢籍の著録および分類・配列は、長澤規矩也氏の目録方法(『漢籍整理法』汲古書院、1974年5月など)に基づいた『立命館大學漢籍分類目録』(立命館大学文学部、1986年3月)に依拠した。国書は便宜的に配列した。末尾には、五十音配列の書名索引を附した。



『村上哲見先生舊藏詞學文獻目録』

中國藝文研究會発行 2011年
B5判 130頁

本目録は、立命館大学文学部中国文学専攻が所蔵する東北大学名誉教授村上哲見先生旧蔵詞学文献(漢籍古書および洋装本、景照・覆印資料)の分類目録である。目録作成の便宜上、「村上哲見先生舊藏詞學漢籍古書目録(含史部・子部・別集類書)」と「村上哲見先生舊藏詞學洋装本古書目録 附景照・覆印資料等」との二部で構成した。「漢籍古書目録」の分類と排列は『(改訂)内閣文庫漢籍分類目録』に依拠した。巻末に旧電話帳式排列による五十音順の書名索引を附載した。



『唐代思想史論集』

島 一 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2013年
A5判上製函入 745頁 定価 本体10,000円

本書は、2010年8月に急逝された故・島一先生の遺稿論文集である。全23篇の論文を3章に分けて收録する。論文集刊行については、先生御存命中より計畫があり、收録する論文や全體の體裁については先生御自身に檢討・決定頂いていたが、その後體調を崩されたことにより、出版の計畫は一時中斷されていた。
先生の歿後、本研究會の會員や受業生の中の誰からともなく「島先生の論文集を出版しよう」という聲が擧がった。そこで、受業生有志が編集部に保存されていたデータを再編集し、校正や原典調査などを精力的に行って成ったのが本書である。 


【目 次】
第一章 一 貞觀年間の禮の修定と『禮記正義』(上)/二 貞觀年間の禮の修定と『禮記正義』(下)/三 母の為の三年の喪 ―玄宗『孝經』注の背景―/四 『孝經』注疏とその周邊/五 張柬之・王元感の三年喪禮說とその周邊/六 中唐春秋學の形成/七 啖・趙・陸らの春秋學とその周邊
第二章 一 玄宗『道德眞經』注疏について ―理國と理身―/二 金仙・玉眞二觀の修營問題と玄宗の『道德眞經』注疏/三 『通典』における杜佑の議論について―食貨・刑法を中心として―/四 『通典』における杜佑の議論について―食貨・選擧・職官を中心として―/五 杜佑の三敎觀について/六 中唐期における天人論とその背景/七 中唐期の天人論と杜佑の『通典』/八 劉禹錫の「天論」とその周邊/九 「復性書」の形成と『道德眞經』注疏/十 上淸派道敎と韓愈・李翺の思想/十一 楊倞の『荀子』注と韓愈の儒敎思想
第三章 一 徐靈府の『通玄眞經』注について/二 王眞の『道德經論兵要義述』とその周邊(上)/三 王眞の『道德經論兵要義述』とその周邊(下)/四 杜牧の儒敎について/五 陸希聲の『道德眞經傳』とその周邊


『高木正一先生舊藏漢籍古書分類目録』

中國藝文研究會発行 2000年
B5判 165頁 定価 本体2,000円

本目録は、立命館大学が所蔵する立命館大学名誉教授、故高木正一先生(昭和28年~昭和 52年まで立命館大学中国文学専攻で教鞭を取られた)旧蔵の漢籍古書(附国書)の分類目録である。巻末には、旧電話帳式配列による五十音順の書名索引を附載した。

目録の本文は、芳村弘道が澁澤尚との共同調査に基づき編修してワープロ原稿を作成し、更にそれを嘉瀬達男・澁澤がパソコンを用いて整えた版下原稿をオフセット印刷したものである。なお、書名索引は嘉瀬・澁澤が作成した。




『唐代の詩人と文獻研究』

芳村 弘道 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2007年
A5判 750頁上製クロス装貼函入 定価 本体10,000円

本書は、唐代の詩人と文獻に關する拙論を「盛唐・中唐の詩人研究」「白居易研究」「文獻研究」の三部に分けて編成したものである。
第一部は、盛唐・中唐の時期に活躍し、主として山水・自然詩派と評される詩人達の事跡と文學についての論文を收めた。第二部は、白居易文學の傳記的研究と白居易の傳記資料についての論考からなる。そして第三部を唐代の文學に關連する文獻の研究とした。以下、三部各章の概要、また主眼とするところを記しておく。

第一部では初めに孟浩然の後半生について論じた。彼は田園での棲遲を續けて生涯を終えたのではない。三十歳以降、十年の間に洛陽・呉越・長安などに出遊している。その足跡をたどり、何を目的とする旅であったのかを考察したのが第一章「孟浩然三十代の行旅」である。
第二章「晩年の孟浩然」では、友人との宴飮のために推擧をむだにした逸話や張九齡との關係に着目し、孟浩然が晩年に至っても仕進の志を棄てきれず、仕官と脱俗という兩極に心を搖らした詩人であったことを論じ、盛唐期の先輩詩人として李白や杜甫などにも敬愛された理由を見いだそうとした。
第三章「儲光羲の田園詩」では、儲光羲の田園詩の特色を深い交友關係をもった王維との比較を通して明らかにしようとした。彼には王維のような敍景詩はないが、農民を單なる點景とした王維とは異なり、農民の生活と憂苦を細やかに詠じている。この傾向は社會詩を生み、杜甫にも影響を及ぼした可能性があったことを指摘してみたい。
第四章は中唐の山水詩人、韋應物の傳記研究である。中唐前半期の不安な社會にあえぐ人民を救濟しようとした眞摯な良吏という側面。また淸らかな境地を保ち、混濁した時代に生きる心の支えにした隱者的側面。これら兩面を併せもつ詩人として韋應物を理解し、彼の生涯を論じてみた。
第五章は先の四章とは異なり、邊塞詩人として知られる王昌齡の事跡研究である。中國の多くの研究者は仕官前の王昌齡に邊塞從軍の體驗があったと考えるが、虚構性に富む樂府題詩を根據とする點、危うさを感ぜざるを得ない。また從來、孟浩然の詩題に基づき、王昌齡は官途の半ばで嶺南に左遷されたと說かれているが、彼自身の作品には嶺南に關することを見ない。王昌齡の足跡が西方と南方の何處まで及んだか、從來の學說にない見解を提示したく、第五章「王昌齡の邊塞行と嶺南行」を第一部の終わりに附した。

第二部の「白居易研究」は、白居易前半生の處世と文學を「閑適詩」の制作を軸にして論じ、後半生を「墓誌」の自撰から考察を加え、また自撰「墓誌」および李商隱「白公墓碑銘」の資料性について論ずることを主とした。
始めの四章は、「閑適詩」が單に公務から離れて安らかな心情を詠った作品ではなく、知足安分の志操を保って窮境に處していった高い志を表わしたところに本質をもつ作品群であるという視點から、服喪による下邽退居の時期から江州司馬左遷時代・忠州刺史時代、知制誥・中書舍人時代、杭州刺史時代に及ぶ詩人の前半生をたどった一連の論考となっている。
第一章「下邽退居」では、白居易の文學理論が示された「與元九書」にいう「閑適詩」は、下邽退居の困窮時代の作品を通して理解すべきことを論じた。
第二章「江州・忠州時代と『閑適詩』の制作」においては、江州左遷が白居易の處生と文學にもたらした意義を考察した。また忠州時代にも論及し、この時期も窮境意識は強かったが、閑適にいざなう條件に惠まれなかったことが要因となって閑適詩が多作されなかったと見なした。
第三章「知制誥・中書舍人から杭州刺史への轉出」は、中央政界に復歸した白居易が中書舍人という文官最高の榮譽職にまで達したものの、遲い出世と政界の亂れに悲哀憂愁を深めたことを論じ、また自らの志願によるとの說が有力な杭州刺史轉出が左遷であったことを考證した。
第四章は「杭州刺史時代」である。杭州刺史着任後しばらく悲嘆の情を抱いた白居易は、杭州の風光や刺史の職位に愉悅と安らぎを覺え、窮境意識が衰えて人生愉悅の思いが強まった。その結果、「閑適詩」の概念が崩れる。杭州刺史の後に自編した「白氏後集」において「閑適」等の分類を行わなくなった原因がここに存することを明らかにし、あわせて白居易の生涯が杭州時代を過渡期として二分しうることを論じた。
第五章から第七章は白居易の傳記資料に關する論考である。第五章「白居易『醉吟先生墓誌銘』の眞偽」・第六章「白居易の墓誌自撰」においては、墓誌銘自撰を通して白居易の後半生を論じ、老境における心情、死生觀をも解明しようと試みた。第七章「李商隱の『白公墓碑銘』」では、白居易傳の根本資料である李商隱「白公墓碑銘」の資料性を檢證し、あわせて撰述の背景にも考察を及ぼす。
第八章「李商隱における白居易」は、「白公墓碑銘」の撰者李商隱と白居易との結びつきを人閒關係および文學面から探り、第七章の内容を補おうと意圖した論考である。李商隱は白居易の門弟子をもって自任しており、白居易崇敬の思いは「白公墓碑銘」撰述だけでなく、詩作にも反映していると考えられる。白居易とは對蹠的な作風をもつ李商隱詩にも窺いうる白詩の影響を指摘し、白居易文學の影響力の大きさを再確認したい。

第三部「文獻研究」は、唐詩關連の文獻學的論考を收め、唐代文學と密接に關係する『文選』の版本研究を附した。
第一章「元版系統の『分類補註李太白詩』」・第二章「元版『分類補註李太白詩』と蕭士贇」は、李白作品の現存最古の注釋書、宋の楊齊賢注・元の蕭士贇補注『分類補註李太白詩』の研究である。第一章では、『分類補註李太白詩』の通行本に見られる不適切な削除の例を指摘し、本書は原本系を使用しなければならないことを提唱した。また楊齊賢の事跡やその注の特色、補註本の本文のテキスト的な問題などにも論及し、原本系諸版本の書誌調査報告も行った。第二章は、從來、内外の多くの學者が本書の原本系と刪節本系とを混同している誤りを正し、原本系の最善本たる尊經閣文庫所藏元至大刊本を用いて、補註の眞價である蕭士贇の注釋態度を究明した。
第三章「朝鮮本『夾注名賢十抄詩』の基礎的考察」は、朝鮮本『夾注名賢十抄詩』が極めて價値の高い唐詩の注釋書であることを論じ、本書の撰者を明らかにし、朝鮮本『樊川文集夾注』の撰者問題にも及んだ。『夾注名賢十抄詩』引用の「梁山伯祝英臺傳」の内容を後世の説唱作品と比較し、「梁祝故事」文藝作品の先蹤というべき貴重な一篇であることを考察した附章を并載した。
第四章「『韻語陽秋』の傳本について」は、唐詩についての言及も多い宋代詩話書の『韻語陽秋』諸傳本の系統を解明し、内閣文庫所藏の林羅山舊藏寫本が重要な一本であることを示した。第五章「本邦傳來の宋版『錦繡萬花谷』」は、唐詩研究にも有益な資料を收録する南宋時代の類書『錦繡萬花谷』の書誌研究である。本書宋版の日本現存本の悉皆調査に加え、影宋本や新出宋版、明版も考察して本書の系統を解明し、書店による增修が加えられて出版を重ねる南宋時代の坊刻類書の複雜な形態を本書も反映していることを指摘した。
第三部の末には「和刻本の『文選』について――版本から見た江戸・明治期の『文選』受容――」を第六章として附錄した。唐代詩人の文藻の據り所となった『文選』は、我が國でも古くより讀み繼がれた。江戸時代になっても影響力を失うことはなく、出版文化が本格化した江戸期以降には、『文選』も樣々に出版され、受容のさらなる廣がりと深化を見せている。本章は書誌調査を基にして、江戸時代から明治時代に及ぶ『文選』刊刻の歴史から受容の實態を明らかにしようとするものである。「江戸・明治期『文選』版本目録」と諸本の書影を末尾に附し、參考に備えた。
本書を構成する各章は、舊稿を修訂したものである。初出時に戴いた諸賢の御指摘に基づき訂正を加え、またその後の内外の研究成果を採り入れ補訂に務めたが、なお不十分な點が多いと承知している。さらなる垂敎をひとえに御願い申し上げる。
なお本書に示した中國の今地名は、『中華人民共和國行政區劃簡册 二〇〇六』(二〇〇六年四月、中國地圖出版社)に據った。

                                (本書「緒言」より)


【目 次】
第一部 盛唐・中唐の詩人研究 第一章 孟浩然三十代の行旅/第二章 晩年の孟浩然/第三章 儲光羲の田園詩について/第四章 韋應物の生涯/第五章 王昌齡の邊塞行と嶺南行
第二部 白居易研究 第一章 下邽退居/第二章 江州・忠州時代と「閑適詩」の制作/第三章 知制誥・中書舍人から杭州刺史への轉出/第四章 杭州刺史時代/第五章 白居易「醉吟先生墓誌銘」の眞僞 /第六章 白居易の墓誌自撰/第七章 李商隱の「白公墓碑銘」/第八章 李商隱における白居易
第三部 文獻研究 第一章 元版系統の『分類補註李太白詩』/第二章 元版『分類補註李太白詩』と蕭士贇/第三章 朝鮮本『夾注名賢十抄詩』の基礎的考察/附章 『夾注名賢十抄詩』中の「梁山伯祝英臺傳」と「梁祝故事」説唱作品との關聯/第四章 『韻語陽秋』の傳本について/第五章 本邦傳來の宋版『錦繍萬花谷』/第六章 和刻本の『文選』について――版本から見た江戸・明治期の『文選』受容――


『明代の料理と食品―「宋氏養生部」の研究―』

中村 喬 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2004年
A5判 457頁上製クロス装貼函入定価 本体5,000円

本書は、明代の食文化研究の一斑として、宋詡(そうく)の『宋氏養生部』の料理・食品の部分を取り上げ、これに論考を加え、譯註を施したものである。

食文化の歴史を見ようとするとき、その時代の料理・食品の實際のレシピを見ることが最も大切であると思う。故に私は、前書『宋代の料理と食品』(中國藝文研究會、二〇〇〇年)において、レシピを中心に見て來た。そこで今回、明代の食文化を考えるに當たっても、まずレシピを中心として見ることにした。そうして、その資料として選定したのが『宋氏養生部』である。明代に著された飮食關係の書(またそれを含む書)は、もちろん『宋氏養生部』のみではない。最も早いものとしては元末明初の韓奕の『易牙遺意』、また同じ頃の劉基の『多能鄙事』があり、その後、明も晩期には高濂の『遵生八牋』(飮饌服食牋)、同じく高濂の『居家必備』が存在する。では、何故これらの中から『宋氏養生部』を選定したのか。

いったい韓奕の『易牙遺意』(偽託ではないかとされる)は、『呉氏中饋録』から採ったと思われるものが多く、しかも『宋氏養生部』に比べてその所載は極めて少ない。また劉基の『多能鄙事』(偽託とされる)は、ほとんどが元の『居家必用事類全集』を敷き寫したものである。さらに高濂の『遵生八牋』の飮食部分も、『居家必用事類全集』と『易牙遺意』から採ったものが多く、『居家必備』に至っては全て『居家必用事類全集』を採録したものといってよい。つまり、これらの書に見られるレシピは、そのほとんどが前代に屬するものであり、なかに明代のものが含まれていたとしても、全體から見れば明代の實際を傳えるとは言い難い。この點、『宋氏養生部』のレシピは、間々前代の書を採ったと思われるものも見られはするが、總體的に言って、殆どが前代の書に據らない明代獨自のものとして信賴できる。また收録する所も多彩であり、内容體裁ともに整っている。故に、明代の料理・食品を見る上で、最も適切な書といえる。ここに於いて、『宋氏養生部』のレシピに基づいて、明代の食文化を窺うこととしたのである。

譯註は、『宋氏養生部』を整理分析するに當たって、自分のために作成したものであり、つまり論考の下作業である。しかし、明代の唯一纏まったレシピであるこの書の譯註は、志を同じくする人々の興味に益するところがあるのではないかと思うし、また論考篇の參考にもなると思うので、本書に併せ收めることとした。

(本書「まえがき」より)

【目 次】
論考篇 第一篇 料理の部 第一章 熟法による分類 第一節 火熟料理/第二節 非火熟料理/第二章 形態による分類
第二篇 食品の部 第一章 非火熟食品 第一節 醃の屬/第二節 乾の屬/第二章 粉麪食品 第一節 麪製食品の屬/第二節 粉粒製食品の屬
譯註篇 麪食制 粉食制 獸屬制 禽屬制 鱗屬制 蟲屬制 菜果制 羹胾制
あとがき
品目・配材索引


『隱逸と文學―陶淵明と沈約を中心として―』

今場 正美 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2003年
A5判 362頁上製クロス裝貼函入 定価 5,000円

今場正美著『隱逸と文學―陶淵明と沈約を中心として―』は、著者のこれまでの〈隱逸と文學〉をテーマとした研究の成果を世に問うものである。
著者の問題意識は、本書の題に示されているように、隱逸という生きかたが文學とどのように關わっていったかという點にある。隱逸詩人として名高い陶淵明を取り上げて隱逸の實態に迫ろうと試み、隱者としての陶淵明の姿を多角的に檢討している。さらに、『宋書』隱逸傳を著して獨自の隱逸觀を示した沈約がいかに齊梁の時代に處していったのか、隱逸の實踐という觀點から考察している。從來、隱逸に關する論文はいくつか行われているが、本書の特色は、隱逸と文學をそれぞれ別個にとらえるのではなく、兩者を關連づけて考察しているところにある。
そもそも「六朝文學」といえば、どちらかというとどのような「内容」を表現するかということより、どのように美しく「表現」するかという點に重點が移っていったといわれている。しかし陶淵明や沈約といった文學者の作品には、どのように當時の政權に対處するべきかという彼らの生き方が克明に描かれていた。本書では、陶淵明、沈約、さらには淵明の模倣者とされる王績や「和陶詩」の作者蘇軾に至るまで、その文學作品を精緻に分析し、隱逸を志向した文學者の静謐な詩境の裏には激しい内面の葛藤が秘められていたという實態を明らかにする。

『隱逸と文學』は、以上のような獨自の一貫した問題意識をもって著された、創見あふれる研究書である。

【目 次】
第一篇 陶淵明の文學とその影響
第一章 玄言詩と陶淵明の文學 第一節 玄言詩の文學史における意義/第二節 「形影神」三首について/第三節 「閑情賦」考/第二章 陶淵明の模倣者王績 第一節 王績の傳記/第二節 「古意」六首について/第三節 陸淳刪『東皐子集』小識/第三章 蘇軾「和陶詩」考 第一節 揚州における「和陶詩」/第二節 惠州における「和陶詩」/第三節 海南島における「和陶詩」
第二篇 沈約の文學とその周邊
第一章 沈約の隱逸觀とその文學 第一節 『宋書』隱逸傳考/第二節 沈約の短句の詠物詩について/第三節 東陽太守時代の沈約/第四節 東昏侯治下における沈約の立場と阮籍「詠懷詩」注/第五節 晩年の沈約(「郊居賦」譯註)/第二章 齊梁時代の文學理論 第一節 『文心雕龍』と『詩品』―曹氏兄弟及び王粲・劉楨に對する評價をめぐって―/第二節 『文心雕龍』の同時代文學批判―「奇」の概念の檢討を通して―/第三節 『文心雕龍』の作家論と曹丕「典論論文」との關係
あとがき・初出一覽


『宋代の料理と食品』

中村 喬 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 2000年
A5判 424頁上製クロス装貼函入 定価 本体3,524円

本書は、勤務先の立命館大學文學部の機關誌『立命館文學』に一九九三年以來、ときおり發表してきた宋代の料理食品に關する覺え書きをもとに、あらたに全體を組み直し、書き改めたものである。一連の發表で意圖してきたのは、『東京夢華録』『夢粱録』『武林舊事』などの書に見えている料理食品名が、いったいどのような料理食品だったのかを明らかにすることであった。しかし、宋代にこれらを知り得る直接的資料は少ない。 宋代では、南宋の林洪の『山家清供』が料理關係の書として知られる。しかしこの書は、山居生活に憧れる著者が、その理想の一表現として著した書で、調理製法に徹したものではない。また、『呉氏中饋録』が宋代の料理書として知られる。これはたしかに調理製法を記した書であるが、しかしこの書が宋代の著作という確證はなく、かえって著作年代に疑問が殘る。このほか、南宋の陳元靚の『事林廣記』に調理製法に關する記載があるが、殘念ながらその品件はごくわずかである。

このように宋代の直接資料が少ないとすれば、これを宋代の前後に求めざるを得ないが、宋代以前で調理製法關係の記載が見られるのは、北魏の賈思勰の『齊民要術』ぐらいである。唐代には昝殷の『食醫心鑑』があるが、これはその書名を見ても分かるように食療法にかかわる書である。これにたいし、元代の『居家必用事類全集』(本書では『居家必用』と略稱する)の飮食類は調理製法をきわめて詳細に記した書であり、記載する品件も多い。元では倪瓚の『雲林堂飮食製度集』も、品件は少ないながら調理の書として貴重な資料である。しかも、これら元代の書に見られる調理用語は、宋代の料理名に冠せられている用語と符合するものが多く、宋時代と元時代の調理法には共通するものがあったことが知られる。換言すれば、宋代の料理を探るには元代の料理書が最も資料となり得るのである。それに元代の料理書は、後代の料理書と對照してみてもまた共通するところが多い。そうすると宋代の料理は、元代の料理を媒介として、今日の料理につなぐことができるのである。

(本書「まえがき」より)

【目 次】
第一篇 宋代の料理 第一章 熟法をあらわす料理名/第二章 形態をあらわす料理名/第三章 餘論・「羮」について
第二篇 宋代の食品 第一章 非火熟食品/第二章 粉麪食品
第三篇 宋代の飲食處 第一章 宋代の食店(食事處)/第二章 宋代の酒肆(飲酒處)


『新文選學 文選の新研究』

清水凱夫 著  研文出版 1999年
A5判 552頁上製クロス装函入 定価 本体11,000円

元來、「文選學」というと、初唐の曹憲に始まる『文選』收録作品に對する注釋學を指す。それは、近代に至るまで千年以上の長きにわたり、そのまま繼承され續けた。具體的には、殆ど音義・典據に據る字句の解釋及び各版本の校勘に據る正文の追究に没頭してきた。つまり、從來の「文選學」は、終始所謂訓詁學及び版本學を中心とした研究に專念してきたと言っても過言ではない。勿論、それは個々の收録作品を深く且つ正確に解釋し、評価・鑑賞すると言った點においては、紛れもなく非常に重要且つ必須の学問研究であった。

しかし、本來、「文選學」と稱する以上、當然詞華集としての『文選』全體像の究明に努めるべきである。舊來の「傳統的文選學」の如く、いつまでも個別的收録作品の解釋・鑑賞に腐心するのみの研究に止まっていたのでは、所詮正當な「文選學」とは言い難い。

いまや新しい『文選』研究の時が來たのである。この時期に當たって、世界の『文選』研究家は相互に研鑽檢討を重ね、訓詁學的傾向の強かった「傳統的文選學」權威と壓力を超克し、これとは異なった視點に立脚した、詞華集としての『文選』全體像の總合的究明を目指すべきである。これこそまさしく眞の「新文選學」の創建であり、王國維の所謂「一代には一代の學問有り」の實現なのである。

いまここに、私はこの提唱に呼應し、「新文選學」の課題と方法を論じつつ、實際になお未解決の多樣な『文選』諸問題について具體的な解明に努め、『文選』全體像の究明を試みたい。

(本書「序章」より)

【目 次】
序 章「新文選學」の創建
第一章『文選』全體像の概觀 一 收録作品の統計による『文選』全體像把握の必要性/二 全收録作品の統計による分析/三 各王朝の存續年數及び遺存作品數と採録作品との關係/四 收録作品の分野別統計による分析/五 全文體作品の作家別統計による分析
第二章『文選』編纂の實態 一 從來の『文選』編纂實態の究明情況/二 六朝「總集」(詩文集)編纂の實態/三 梁代「總集」(詩文集)編纂の實態/四 昭明太子の「總集」(詩文集)編纂の實態
第三章『文選』の實質的撰者 一 伝統的文選學の實質的撰者に關する見解/二 『文選』の實質的撰者特定の必要性と方法/三 收録作品の内容分析による『文選』の實質的編者の究明
第四章『文選』編纂の目的と選録規準 一 『文選』編纂の動機と目的/二 『文選』の編纂規準/三 『文選』收録作品に内在する文學觀/四 昭明太子「文選序」の檢討
第五章『文選』と他書との影響關係及び受容・變遷史 序 他書との影響關係及び『文選』の受容と變遷史究明/一 『文選』と『文心雕龍』との關係 ― 韻文に關する檢討/二 『文選』と『文心雕龍』との關係 ―散文に關する檢討/三 王羲之「蘭亭序」不入選問題の檢討
第六章「新文選學」の課題と方法 一 「新文選學」の現状/二 顧農論文への反論(1)「頭陀寺碑文」・「廣絶交論」等に關して/三 顧農論文への反論(2)「頌」・「上書」等に關して/四 顧農論文への反論(3)「高唐賦」・「神女賦」等に關して/五 「新文選學」の課題と方法
第七章『文選』研究の基礎資料 ―沈約の聲律諧和論 一 沈約「八病」眞僞考/二 沈約聲律論考 ―平頭・上尾・蜂腰・鶴膝の檢討/三 沈約韻紐四病考 ―大韻・小韻・傍紐・正紐の檢討
あとがき/初出一覽/人名・書名・作品名索引


『魏晉詩壇の研究』

松本幸男 著  中國藝文研究會発行 朋友書店発売 1996年
A5判 上製函入 1,022頁 定価 本体20,000円

松本幸男著『魏晉詩壇の研究』は、著者の四十年に及ぶ中國文學研究の成果を世に問うものである。

そもそも中國文學史は五言詩という文藝樣式の確立によって、はじめて詩壇の形成を可能にした。一方、詩壇の形成には政治は道徳からの文學の獨立が求められる。中國文學がこの歴史的條件に惠まれたのは、漢帝國が崩壞し、魏晉南北朝の豪族社會が發展する時代にあったからである。そして五言の詩型は豪族社會によって育成され、豪族階級の公私にわたる表現手段になり得た。

著者はこのような五言詩の成立と展開を歴史的社會的に位置づけんとしている。從來の研究は、ともすれば個別の作品研究、作家研究を量的に集合しただけの成果に終わっているのではなかろうか。しかし、詩壇の文學活動は單なる「集團文學」ではない。文學も一つの社會事象と考えるならば、中國中世文學における詩壇の構成や新詩型の成立の研究には、歴史的社會的な視野をもった問題意識とそれに應ずる方法論が要求されるであろう。本書はこうした研究姿勢をもとにして、作品中心の解釋學的研究を超え、正史の列傳や逸事・俗説を組み立てただけの作家研究からも脱却を果たしている。

本書は漢の樂府(がふ)から論述する。それは、古代歌謠と創作五言詩の徑庭をその宗教的背景に認めたからである。また東晉末の陶淵明に至までの魏晉の詩壇活動を理解するために、葛藤を繰り返す門閥貴族の裏面の考察が行われている。

『魏晉詩壇の研究』は、このような獨自の研究姿勢をもって著された創見あふれる中國中世文學の研究書である。

【目 次】
主篇 第一章 前漢樂府の宗教的背景/第二章 五言詩成立の諸問題/第三章 曹氏詩壇の成立/第四章 嵆康の身世と贈答詩/第五章 阮籍の生涯と「詠懷詩」/第六章 西晉の代表的詩人/第七章 陶淵明の生涯と作品
外篇
附録
あとがき