英語でコミュニケーションは当たり前!? 理系の英語学習に必要なこと

2019.04.02 TOPICS

英語でコミュニケーションは当たり前!? 理系の英語学習に必要なこと

 「知性を身に付け、境界を超え、ともに学ぶ」ことを重要視し、「専門的な素養」と「Borderを超えて主体的に学ぶ力」を身に付けることを目指す「学びの立命館モデル」のひとつに、2008年の学部開設と合わせスタートした生命科学部、薬学部での「プロジェクト発信型英語プログラム(Project-based English Program: PEP、以下PEP)」があります。現在では、2010年・16年にそれぞれ開設したスポーツ健康科学部、総合心理学部でも展開されるなど、グローバル社会で活躍するための「使える英語」を身に付けることをテーマに最先端の教育が行われています。ここでは、導入から10年の節目を迎える同プログラムについて、山中司生命科学部教授、プログラム参加学生に、プログラムの特徴、これまでの到達点や課題などについてお話を伺いました。真のグローバルリーダーとなるために必要なこととは…。

今ある英語を活用

山中司教授
山中司教授
報告会の様子
報告会の様子

 プログラムの導入にあたり、「大学英語教育の見直しが、そもそもの出発点でした」と山中司・生命科学部教授は振り返ります。日本の教育現場では、英文科など特殊な場合を除き、大学受験時が英語を学ぶモチベーションのピークで、その後は、徐々に下がっていく傾向にあります。「理系の学生はどちらと言うと英語が苦手とされています。しかし、グローバル化が進む昨今、就職はもちろん、最新の情報を得たり、論文を作成する際などに英語は必要となってきます。にもかかわらず、なかなか使える英語の習得が進まないという課題が横たわっていました」と山中教授。その改題解決に向け、学部開設にあたり特色のひとつとして取り入れられたのがPEPです。
 このプログラムの大きなポイントとなるのが、英語がうまくなってからではなく、今ある英語力を使って発信していく点となります。現在PEPを導入している4学部では、1・2回生の必修科目となっており、プログラムは、「プロジェクト」と「スキルワークショップ」のふたつの柱で構成。「プロジェクトでコンテンツをディベロップしながら、スキルワークショップでそれらをブラッシュアップする形となっています。さらに生命科学部では、少人数制(1クラス約20人)、3回生時にも必修授業が組み込まれており、よりきめ細かな授業で学年が進むごとに成長できる仕組みを整えています」と山中教授。スキルワークショップで、読み・書き・聞き・話す、の4スキルを向上させ、プロジェクトでは、学生自らがそれぞれ関心のあるテーマを設定し、考えを探求。その成果を英語で発信します。実社会を反映し、能力別クラス編成にはなっておらず、グループで支え合いながら活動することで、英語力はもちろんのこと、発信力の中心となるコミュニケーションおよびプレゼンテーション能力などを合わせて磨くことができます。

全員発表がもたらす効果

溝口颯乃さん
溝口颯乃さん
WANG YUNCEさん
WANG YUNCEさん

 10年間の成果として、「英語の上手い・下手、能力の質を問わなければ、英語はどの学生でも話せます。それをいかに使いこなすか。生命科学部では、PEPを通じ、どの学生もしっかり英語で自分の考えを発信できるようになっていると思います」と山中教授は力を込めます。
 PEPの特徴のひとつに、全員が発表(発信)する点があります。「最初は人前で話すのも苦手で、原稿を棒読みするのが精一杯でした」とはにかむ溝口颯乃さん(生命科学部2回生)も、「回を重ねるごとに人前で話すことへの抵抗もなくなり、プレゼンに関してもどう説明すれば(英語で表現すれば)わかりやすいかなどを考えるようになりました」と笑顔で話します。さらに、「PEPを受ける前までは、英語にあまり興味はありませんが、カリフォルニア大学デービス校への短期留学でアメリカのカルチャーに触れ、さらに英語力を磨きたいと思うようになりました」と、プログラムの感想を話します。
 中国からの留学生、WANG YUNCE(ワン・ユンツィー)さん(生命科学部3回生)は、「最初は、TOEICの点数も低く、英語はとても苦手でした。それでもPEPを通じ、簡単な英語からでも人前で発表できるようになり、さらにデービスへの留学を通じ、いろいろな人と英語で話したい、自分の思いを伝えたい、そのためにもっと英語を勉強したいと思うようになりました」とPEPの成果を口にします。誰に言われたわけでもなく、自らさらに学びたいと思う姿勢。これが成長の鍵となることは言うまでもありません。
 誰でも最初は、大勢の前で発表するのは緊張するのも。しかもそれが英語となればなおさらです。「しかし、その壁を超えることで、学生はぐっと成長します。回を重ねるごとにプレゼン内容、表現力の向上も含め、堂々と発信できるようになります」と山中教授。これは就職活動をはじめ、社会に出てから、研究者として論文を発表していく上でも重要なスキルとなります。

PEPは、自らの未来を切り拓く実践力を磨く場

 「例えば理系の場合、論文を書く場合は当然、英語となります。近年では国内学会でも、英語で発表することが多くなっており、サイエンス分野では企業で開発にあたる場合でも英語は不可欠なものになってきています。だからこそ大学で、学部が責任を持って役に立つ英語、グローバルに使える英語を教える。その根幹がPEPとなります」と山中教授。学部開設・PEP発足10年の節目を迎え、「学生にもすっかり定着し、プログラムで育った学生がESとして加わってくれ、好循環となっています。また、生命科学部では、各専門の先生も3回生時の授業に入っていただくなど学部一体となって取り組めています」と振り返ります。
 グローバル化が加速するなか、「正確で明瞭な英語」で論文や報告書を書き、情報発信していかなければ世界では通用しないと言われています。「まさにその通りです。しかし、語学は1年や2年では上手くはなりません。PEPでは、学生の学びの意欲を削がないよう、間違いを恐れず、まずは今の能力で発信させることにポイントを置きながら進めていきます。最近はIT機器も発達してきており、それらを使いこなしつつ、学び続けること。そのために必要なのは自立すること。教えてもらうのではなく、自ら学ぶ。その基礎を、PEPを通じで身に付けてくれれば…自然と英語力もアップすると信じています」と山中教授は語気を強めます。
 今後は、さらに基礎力をアップさせるメソッドとして開発が進められていく予定です。PEPは、学生の世界中から情報を集め、議論し、その成果を英語で発信する能力を養う、ひとつの大きな柱となっています。

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