立命館の復興支援 「大船渡・盛町灯ろう七夕まつり サポートプロジェクト」編(岩手)

左から藤本さん、坂田先生、本郷さん
元気の良さと臙脂のはっぴでお祭りを盛り上げた

 東日本大震災から2016年3月11日で5年を迎えます。ここでは、被災された東北3県(宮城県、岩手県、福島県)における本学学生の復興支援活動と、現地の方々の声を紹介します。

 震災発生直後からボランティア活動を続けてきた立命館大学が、岩手県大船渡市と復興支援に関する協定を結んだのが2012年4月のこと。教育・スポーツ・文化をはじめ幅広い分野の支援が動き出すなか、サービスラーニングセンターを中心に、同年夏からスタートしたプログラムが「大船渡・盛町灯ろう七夕まつり サポートプロジェクト」です。大船渡市では、折からの少子高齢化に被災が重なりお祭りの存続が危ぶまれるなか、「若い人たちにお祭りに参加してもらい、一緒に踊ってお祭りを盛り上げてほしいというのが当初の依頼でした」とサービスラーニングセンター長の坂田謙司教授はプログラム立ち上げの経緯を話します。今回は、その活動の軌跡を坂田先生、4年連続で活動に参加した藤本翔貴さん(国際関係学部4回生)、本郷未紗さん(文学部4回生)に振り返っていただきました。

現地に足を運び続けたからこそ、築くことができた心の絆

“人ごと”から“自分ごと”に変化
現地では公民館などで寝泊りし活動
作業を通じ地元の人たちや他大学の学生と交流

 「私たちが参加したのが2012年の夏からでしたので、震災直後から支援に入っていた明治大学さんや他のボランティア団体と比べ、大船渡の支援という意味では後発組でした。支援の内容が“お祭りを盛り上げる”というものでしたので、変に肩肘を張った感じで入らなかったことが今から思えば継続的な活動につながったと思います」と坂田先生。活動の中心が踊りだったこともあり1年目は本郷さんらモダンジャズバレエ部の女子部員などを軸に16人が参加。最初は、現地の人たちはもちろんのこと、他のボランティアメンバーなどからも「なぜ関西の立命館大が大船渡に?という反応で、どこかお客様的な扱いからのスタートでした」と当時を振り返ります。それでも、「大船渡の皆さんが私たちの踊りを見て感動してくださったり、喜んでくださるのを見てすごくうれしかった」と本郷さん。人々の笑顔と「また来てね(まだきてけらいんよ)」の一言が、4年間、現地に足を運ぶきっかけとなりました。
 当初、どこかお客様扱いだった対応に変化が見え始めたのが3年目のこと。「学生が現地のお祭りを支援するというカタチから入った活動でしたが、それが次第に学生がお祭りに“参加する”、3年目からは“共に作る仲間”として学生のダンスがお祭りのプログラムに盛り込まれるなど準備活動を含め“なくてはならない存在”に変化しました」と坂田先生。どこかぎこちなかった交流も回を重ねるごとに互いに打ち解け、学生に対する声かけも、「よく来てくれたね」から「いつでもおいで」と変わっていきました。継続して現地を訪れ交流を深めたからこそ現れた変化でした。

 参加した学生にも変化が現れます。現地に足を運ぶまでどこか“人ごと”だった震災が、現地の人と関わりを持つことで“自分ごと”に変化。「地元の方々と親密になるにつれ、震災の時のことも話してくださるようになりました。現地での活動時以外にも、いろいろな場面で震災、東北、特に大船渡のことを考えるようになりました」と藤本さんも自らの心境の変化を口にします。
 準備活動などは少人数の班に別れ、それぞれの地区に入って作業を行います。2年続けて同じ地区を担当した本郷さんは、「公民館での自炊生活は大変だろうと、朝ごはんに呼んでもらえるようになるなど、とても親切にしていただきました」と交流の思い出を話します。

さまざまな変化と今後 それぞれの未来のために

学生たちにとって大船渡は、人と人の縁がつなぐ“縁里(ふるさと)”
地元の方々からの心温まるメッセージ
学園祭で大船渡をPR

 ボランティアや復興支援にもいろいろなカタチがあります。関わり方や感じ方も十人十色。正解や決まったパターンなどは存在しません。スタート当初、次年度以降のことは白紙状態でしたが、大船渡側からも「来年もまた来てほしい」、学生からも「また参加したい」という声が上がったことが継続の原動力となっています。「お祭りのサポートもはじめてのことで、まさか4年間継続して参加する学生が出るとは思っていませんでした。学生が自発的に震災、東北のことを考えるようになったこと自体が大きな成果」と坂田先生。滞在中は公民館で寝泊りし、お風呂もなく不自由な点もありましたが、他大学の学生などと寝食を共にし、地元の方々と交流を深めることの意義も小さくはありませんでした。
 藤本さんや本郷さんらは、昨年、本プログラムとは別に、学生主体の団体「大船渡リターンズ」を立ち上げました。4回目の昨夏はリターンズのメンバーとして活動に参加し、大船渡の人々と後輩たちをつなぐ橋渡し役を務めました。また、他の学生にも大船渡の魅力を伝えたいと学園祭で秋刀魚をはじめとした名産品の販売などにも取り組みました。その理由を問うと、「人が好きだからでしょうか。最初は気軽な気持ちで参加しましたが、たまたま縁があって大船渡の人たちとつながることができました。この縁を大切にしたい」という答えが返ってきました。このように活動に参加者した学生にとって大船渡は、縁がつなぐ場所、まさに第2、第3の「縁里(ふるさと)」となっています。

 現地で責任者を務める盛青年商工会の迎山光幹事長は、「皆さんフレンドリーで、8月のお祭りに学生さんが来てくれることを町の人たちも、とても楽しみにしています。孫や新しい家族ができたと喜んでおられる人もいらっしゃいます」と笑顔で話します。「震災を機に、国内外からたくさんの支援をいただきましたし、今もそれは続いています。もともと地域の祖先の方々の鎮魂の意味合いが強かったお祭りが、今は国内外に地域の今を発信するというものに変化しつつあります。その意味でも皆さんの協力は大きい」と学生がお祭りに関わる波及効果を強調します。しかし、プログラムを継続する上で、これからの復興支援、被災地との関わり方など、さまざまな問題もあります。今後について迎山さんは「皆さんのお陰もあり、町の復興も徐々に進んでいます。今後は皆さんの協力を得つつも、何とか自力でまちの元気と、支援への感謝を内外に発信していけるよう工夫できれば」と話します。

 時の経過と共に支援のカタチは変わっても、「私たちと大船渡の心の交流が変わることはありません」と藤本さん。その気持ちは参加者全員に共通するものです。藤本さんと本郷さんは、「復興支援やボランティアに少しでも興味、関心があれば、頭でとやかく考えるのでなく、まずは参加してみてほしい」と訴えます。「いろいろな方々と触れ合い、何を感じるか。そこからまた新しい道、視野が広がると思います。私たちもそうした経験を通じて成長できました」。本プログラムは、地域の支援はもちろんのこと学生自らの成長も含め、人と人の心をつなぐ貴重な場(機会)となっています。

◆その他の大船渡市での立命館大学の主な活動
・2011年12月に大船渡市で開催されたプロ野球選手会主催「ベースボール・キャラバンin岩手にスポーツ健康科学部の学生が運営スタッフとして参加。
・2012年2月からスポーツ健康科学部の教員や学生が、大船渡中学校・大船渡第一中学校で体力測定やトレーニングプログラムのレクチャーを実施(文部科学省の平成23年度「復興教育支援事業」に採択)。
・2013年からGWに行われている「大船渡碁石海岸観光まつり」に学生団体を派遣。

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