世界展開力強化事業 国際PBLによるイノベータ育成プログラム(1)  政策科学部副学部長 豊田祐輔准教授

現地の学生と共同で問題解決
インドネシアの世界遺産ブランバナン
経済発展が続くタイ

 立命館大学では、数多くの海外研修プログラムを実施しています。そのなかのひとつ、文部科学省の「平成25年度大学の世界展開力強化事業」で採択された「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」について紹介します(3回を予定)。PBL(Problem/Project-Based Learning)とは問題解決型授業のことです。グループワークが主体で、チームの力によって課題を解決したり、受講学生の創造力はもちろん自主・自律性を重んじるなど、従来の講義形式の授業では育成が困難だった能力を効率的に育成することが可能となります。第1回目の今回は、担当教員でもある政策科学部副学部長の豊田祐輔准教授に4年目を迎えたプログラムの特徴やこれまでの感想、今後の展開などについてお話をうかがいました。

トータルで学びを深めステップアップ

異文化交流を通じたさまざまな気付きに期待
インドネシア、タイの大学とプログラムを展開
茨木市環境衛生センターでフィールドワーク

―国際PBLによるイノベータ育成プログラムの特徴についてお聞かせください
 立命館大学では、これまでも数多くの海外研修プログラムを実施していますが、通常の交換留学や短期留学などと異なるのは文字通り、国際PBLを軸に進める教育プログラムであるという点です。立命館の学生も各受け入れ先でPBL科目を中心に受講しますし、タイ・インドネシアから日本に来る学生も同じように立命館のPBL科目を受講するというスタイルとなります(詳細は受入学生のレポート参照)。他の留学プログラム同様、異文化に触れその理解を深めたうえで、さらに現地の学生と共同で、それぞれが抱える問題や課題を発見し、その解決策を探るという「実践力」までを追求します。異なる文化を持つ両国の学生が、それぞれの環境で学びを深め合うことは、学生本人の成長だけに留まらず、両国の人材育成にとっても大変有意義であると考えています。
 通常の留学などでは帰国後に「外国語を話す機会がなくなった」「交流の機会が少なくなった」といった声が聞かれるなど、学びが途切れてしまうという課題もあります。しかし、このプログラムは留学期間こそ約5カ月間ですが、語学研修や異文化理解、PBL科目を含めた事前学習にはじまり、留学、帰国後の事後学習を含め1年半をかけてトータルで学びを深め、ステップアップすることができるよう工夫されています。留学まで語学を含め十分な事前学習を行い、本学で両国の学生とPBLを経験した上で留学するというステップを踏みますので、応募時に英語に自信がない学生でもチャレンジできる点も特徴となります。

―数ある国のなかで、相手国としてタイ、インドネシアを選ばれた理由は?
 タイ、インドネシアそれぞれ3校(計6校)と提携を結びプログラムを展開しています。各校の詳細などは当該HPで確認していただければと思いますが、いずれも国内有数の大学で、本学とも以前から交流があり信頼できるパートナーだったというのが主な理由です。また、共に親日国家で数多くの日系企業も進出しており、今後、発展が見込まれる両国と太いパイプを築いておく意味は大きいと考えます。
 欧米諸国の留学との違いは、英語をノンネイティブ同士で国際共通語として使いながら問題解決にあたる点です。先進国ではなく、言語はもちろん経済や文化、環境、生活習慣の異なる国から改めて日本を眺めることで日本を相対的に理解するよい機会となり、視野の拡大にもつながります。

“エクスポータビリティ”の向上を目指して

不自由さ&トラブルを乗り越えタフさが増す
政策科学部副学部長 豊田祐輔准教授
プログラム修了式

―2013年からはじまった「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」の評価は?
 両国共に英語を母国語としていないので、キャンパスを一歩出れば現地語しか通用しません。事前学習でタイ語やインドネシア語も行っていますが、学生の話では、苦労も多かったようです。
 プログラムを開講した当初は、受け入れ先のシラバスは確認していたものの、実際に授業を受けたわけではなかったので行ってみて戸惑った学生も少なくなかったと聞きます。しかし、こうした誤解やトラブルは海外では決して珍しいことではありません。それにどう対応し乗り越えるのかも、海外や社会に出て求められる力でもあります。また、タイ・インドネシアの学生は日本の学生以上にパワフルです。PBLはグループワークが中心なので、自分の意見や考えをしっかり発言していくことが求められます。こうした異なる環境でもまれること、不自由さを感じることの多い慣れない環境でのさまざまな経験や気付きが、適応能力や問題解決能力の向上につながると考えています。

―今後の展開などについて教えてください
 日本にとってタイやインドネシアはまだまだ身近な存在ではありません。今後は他の1~2週間の短期プログラムなどとも連携し、事前・事後で学生の学びを深めていければと思っています。また、これまでの学びを含め互いのPBLプログラムの授業内容や事例、研究結果などをまとめた書籍の編集を考えています。協定校間でノウハウを共有し、お互いの今後につなげ、教育プログラムの充実を図っていければと思います。
 一部、政策科学部や国際関係学部では行っていますが、留学を控えた学生の事前学習に留学を終えた先輩学生が参加し、経験を伝えるなど前後(世代間)のつながりを密にしていければと考えています。事前・留学・事後学習を大きなひとつのパッケージとして考え、事後学習においては自分の考えをまとめることはもちろんのこと、後輩たちに経験者としてリーダーシップを発揮し伝えることで、学生自身のさらなる成長につながります。
 もうひとつこのプログラムで期待しているのが、エクスポータビリティです。日本の優れた技術を海外にそのまま持っていくのではなく、その国や地域にマッチした形で提案できる力(エクスポータビリティ)をつけてほしい。“慣れない異文化のなかで互いに理解し合い、一緒に新しいものやシステムを作り上げていく経験”は、国内外を問わず社会に出てからも役立つものだと確信しています。

国際PBLによるイノベータ育成プログラムHP https://www.ritsumei.ac.jp/international/aims/
受入学生によるレポート(英語)https://www.ritsumei.ac.jp/international/aims/eng/report/
※2017年度派遣学生募集は、2016年11月初旬を予定しています。
第2回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=204
第3回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=207

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