世界展開力強化事業 国際PBLによるイノベータ育成プログラム(2)  インドネシア・バンドン工科大学に留学 国際関係学部4回生・山田真結香さん

異文化に触れ、共に学び共に成長
インドネシア・バンドン工科大学(ITB)
ビジネスマネジメント学部の仲間と

 立命館大学では、数多くの海外研修プログラムを実施しています。そのなかのひとつ、文部科学省の「平成25年度大学の世界展開力強化事業」で採択された「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」*について紹介します。第2回目の今回は、1期生としてインドネシア・バンドン工科大学(ITB)のビジネスマネジメント学部に留学した山田真結香さん(国際関係学部4回生)にお話をうかがいました。言葉や文化の壁に翻弄されつつも、それを乗り越えた先に見えたものとは…。

すべての授業がPBL

周りのことを考えて行動できるようになりました
仲間と貴重な時間を過ごした(山田さん中央)
発表の様子

 高校時代に中国への研修体験を持ち、大学入学後も韓国への研修をはじめ立命館アジア太平洋大学(APU)の学生と交流する機会があったという山田さん。もともとアジアに興味があり、留学先を模索していた1回生の終わりに、たまたま見つけたのが「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」だった。「内容を見た際、留学先がこれから発展しようとするエネルギーに溢れたタイ、インドネシアということで、ぜひ行ってみたいと思いました」。我が意を得たりと、気がつけばエントリーシートに筆を走らせていた。
 ノンネイティブ同士の英会話にはそれほど不安はなかったが国際関係学部で学ぶ山田さんにとって、「受け入れ先がビジネスマネジメント学部の起業コースで、興味はありましたが普段の学びとは少し異なる点が心配でした」と打ち明ける。実際、「ビジネスマネジメントの基礎を学ぶ座学などもあると思っていたのですが、授業のすべてが卒業後に起業を考える学生向けのワークショップで、最初はかなり戸惑いました」と前途多難な船出だった。
 そんな折、共に学ぶITBの学生にまず尋ねたのが、「どうして起業コースを選んだのかという理由」。先入観で起業=お金儲けという安易なイメージを持っていたというなか、ITBの学生から返ってきた答えは意外なものだった。「起業し自分でビジネスを行うことで、時間なども自分でマネジメントできる。そうすることで家族との時間を大切にできるから」。もちろん稼ぐことも重要だが、「誰もが家族のことを一番に考えていること」に驚かされた。その後は、「自分には何ができるのか。どうすれば周りが幸せになれるのかを常に考えながら授業に臨むようになった」と、自らの心境の変化を口にする。
 思わぬアクシデントもあったが事前授業や短期留学の経験が役立ったケースもあった。留学にあたり、「アジアはどの国も歴史問題には敏感です。双方の国の歴史や先の大戦のことについて、発言できるだけの知識や意見は持っておいたほうがいいですね」と山田さん。互いに意見をぶつけ合うことで、理解を深めるきっかけとなった。

ホスピタリティに触れた半年間

PBLで芋農家をPR
PBLで芋農家をPR
朝市の様子。学外では英語が通じず思わぬ苦労も

 印象に残っているPBLに小規模ビジネスに関するフィールドワークを挙げる。肥沃な土壌を活かし現地でブランド芋を生産・販売する個人農場のオーナーを対象にインタビューを実施。ビジネス手法を学ぶことはもちろん課題などを見つけ、あらゆる角度から分析した。
 「相手のビジネスを強み、弱み、機会、脅威に分けて考える手法(SWOT分析)を用い、それぞれを組み合わせることで、強みを強化し弱みをどのように補強したらよいかを探りました」と、パッケージデザインやホームページで情報発信力を補い、政府の援助などを得てASEAN経済共同体(AEC)を通じた販売網の拡大を図る提案にまとめた。取材相手がほとんど英語が話せず苦労したというが、「やる気やパワーはあるものの、どうすれば海外にアピールできるか悩んでおられたので、その点をうまくカバーできる提案にしたかった。仲間の助けもあり何とかうまくまとめられたと思います」と振り返る。

 言葉の壁にはあらゆる場面で遭遇した。「キャンパスがバンドン市内からバスで1時間以上離れた道路もまだほとんど舗装されていないような郊外にあったので、学校を一歩出れば現地の言葉しか通じず、スーパーで買い物するだけでも大変でした」と苦笑いを見せる。しかし、「都会でなかったぶん、そこで暮らす人々の生活や文化・宗教などに直接触れることはできました」と、多様性に富んだ国ならではの生活はとても新鮮でもあり、衝撃でもあった。独特の風習やルールなどは、ITBの学生が詳しく教えてくれた。ここでも困難を切り抜け成長の鍵となったのが、共に学ぶITBの学生の存在だった。また、ITBの学生に日本のことをもっと知ってほしいと、滞在先のアパートに招き、手巻き寿司パーティを開いたりもした。ITBの学生から「真結香がいてくれて楽しかったし、とても助かった」と言われた時の感動を、今でも忘れることができない。

 ジャカルタに降り立ち、デモにも遭遇した。道路には信号がほとんどなく、「どうやって渡ればいいのか」最初はそんなことすら分からなかった。今回のPBLに直接関係はないが、留学した時期が、イスラム関連の出来事が世界を騒がせ始めた頃でもあり、それに現地の大統領選挙なども重なり、「国際関係を目の当たりにし、貴重な経験となった」とも。テレビ画面を通じてではなく、現地でそうした動きや空気を肌で感じることで得たもののも多かった。帰国後も、「東南アジアやインドネシアの記事にも、これまで以上にしっかり目を通すようになった」。学生はもちろん、現地の人々のホスピタリティが身にしみる日々を過ごした。その根本が家族愛にあること知り、ビジネスの根本を考え直すきっかけにもなった。
 海外に出て、常に日本人を意識することで改めて日本の良さ、問題点などを考える機会にも恵まれた。四季のない国で過ごし、季節の変化の素晴らしさを実感することもできた。「今は、そんなさまざまな気付きを大切にしたい」。その言葉には、ITBの仲間と共に成長した山田さんの強い思いが込められていた。

国際PBLによるイノベータ育成プログラムhttps://www.ritsumei.ac.jp/international/aims/
第1回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=198
第3回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=207

NEXT

2016.04.08 TOPICS

文学部・河原教授らが、カナダ日系人野球チーム「バンクーバー朝日軍」の関係者遺族を探し出し、スポーツ殿堂入りメダルを授与

ページトップへ