時は今だ

産業社会学部 『時は今だプロジェクト』

測量調査
関係者の協力を得て測量調査を実施
発電所
今も残る小水力発電所の内部

 社会問題を総合的に解決していくことを目的に設置され昨年50周年を迎えた産業社会学部。その学びの特徴のひとつに実社会に触れて学ぶアクティブ・ラーニング「地域連携プロジェクト」があります。学生が地域社会や地域住民と関わる活動を進める中で、「問題の本質的な理解をもって、解決に向けた思考力と実践力を養うこと」「多様な他者とのやりとりの中から自分自身を批判的に検証・理解し、総合的な人間力を養うこと」を目指し、同学部では多くのプロジェクトが進んでいます。こうした取り組みは、「境界を超えて学ぶ」「ともに学ぶ」という立命館大学の教育モデルの具体的な実践例ともいえます。ここでは、その中のひとつ2011年に発足した*岐阜県大垣市上石津町時(とき)地区と時山(ときやま)地区をフィールドに展開されている『時は今だプロジェクト』(永橋爲介教授)を紹介します。時地区には、1921年に開設され1970年まで稼動していた出力数200kwの小水力発電プラントが丸ごと残っています。これを再稼働させる可能性を探り、中山間地域の潜在力のひとつ小規模分散型エネルギーや地域おこしの可能性を開花させることが主な目的となります。「エネルギーの地産地消」を目標に集まった学生たちの取り組み、プロジェクトを通じて現れた地域、そして学生の変化とは…。

相乗効果で足し算以上のパワーを生む“ラーニング・イノベーション”

学生が地域の人々と関わることで地域の力を引き出す
お手伝い
お祭りのお手伝いなどにも積極的に参加
間伐体験
山林を守るための間伐体験

 学問として地域と連携したプロジェクトを進める意味を永橋教授は「ラーニング・イノベーション」という言葉を使って表現します。地域の抱えている問題の解決は、一筋縄ではいきません。ともすれば、大学側からの一方通行的な取り組みになりかねません。「まちづくり、地域の再生を考えることを通して、学生自身は対立軸の向こう側にあるものを見抜き、つながりを見出す力(感覚)を養うことができ、地域としても若者の力や外部の視点が入ることで問題解決への糸口が見つかる可能性が高まります。例えば、学生、地域が持っている力をそれぞれ1とします。両者を単純に合わせると2になりますが、互いに刺激し合うことで、それが呼び水となり学生、地域の力が3にも5にもなり得る。そうなればもともと足して2だったものが5にも10にもなる相乗効果を生む可能性を秘めています」と、イノベーションたるゆえん、他の授業などにはない特徴を説明します。
 小水力発電プラントの再稼動、エネルギーの地産地消を目標に動き出しましたが、もうひとつ地域連携プロジェクトが持つ潜在的なテーマに「地域の人々とのつながりを重視しながら、地区のコミュニティ再生に向けた取り組み」があります。メンバーは、立ち上げ当初から地域のお祭りや間伐作業などに参加しつつ地域との関わりを深めてきました。こうした取り組みが火種となり地域に人を呼び込む各種イベントなどへと発展。また、地域の活動拠点にと借り上げた空き家(時の家というセミナーハウス)をきっかけに、その後、空き家を過疎対策に活用する動きとなり、移住者用に提供することで東海や関東地方などから3年余りで17世帯30人が同地区へ移住。それまで複式学級だった地域の小学校が1学年1学級となったほか、移住者のアイディアで地域に新たな産業が生まれるなど波及効果の連鎖が進みつつあり、これも学生が地域に入り、地域の力が引き出された好例といえます。

小さな成果を積み上げ、5年越しでの第一歩

地域にとって今、何が一番大事かを考える
メンバー
永橋先生(左から3人目)とメンバー
ワークショップ
ワークショップで活発に意見を交換

 「発足当初から現地に赴き、地域住民へのヒアリングやプラントの測量調査などを実施。調査から知り得た情報を地域に還元し、再稼動の可能性や課題、そして地域の将来像についての意見交換を行うためのワークショップも開催しましたが、ごく一部の方にしか興味を示して頂けませんでした」と永橋教授は振り返ります。「私たちの考えが受け入れられなかった時点で撤退もありえましたが、メンバーは地域から学び、地域に寄り添った活動を続けるなかで、今この地域にとって本当に大事なものは何かを感じ取り、まずは地域の活性化を最優先にしたことが、人々と信頼関係を深めるポイントとなったと思います」と永橋教授は取り組みの特徴および他との違いを説明します。プロジェクトに参加当初、「自然エネルギーや環境問題に興味がありました」という学生たちが、その思いを達成できないもどかしさを抱えつつも、地域の人々との関わりを通じ成長。当初の目標とは違う形ではあるものの、地域の人々と共に小さな成果を積み上げることで自信をつかんでいきました。
 2015年度には計4回現地で地域を巻き込んだワークショップを企画・運営し「時地区の10年後のビジョン」について地域住民と意見を交換。小学生から高齢者まで世代・性別を超えた白熱した話し合いの末、将来ビジョンに「ずっと住み続けられる地域」を掲げ、「暮らしやすい地域づくり」「地区のファンづくり」「自然・文化を守り、伝承する取り組み」の3つを計画の柱として活動していくことでまとまりました。そして、プロジェクト発足から5年を経て「小水力発電所の再稼働」も地区の将来計画の1つとして組み込まれることになりました。「ビジョンも含め、まだ外郭が決まり動き出したばかり。これからが大切」とメンバー。これも我慢強く小さな成果を積み上げてきたからにほかなりません。
 ひとつのテーマは目的であって手段ではありません。手段が目的化してしまうとすぐに煮詰まってしまいます。「自分たちが叶えたいことは、自分たちだけでは決して解決しないことに学生たちが活動を通じて気付いたことが大きい」と永橋教授。事実、学生たちもいろいろな矛盾や葛藤を抱えながら、プロジェクトに取り組んできました。人と人の縁を大切に、いろいろな人と関わり、巻き込みながら前に進む。自分たちのアイディアや施策の押し付けではなく、“住んでいる人たちの思いを大切に受け止め、自分たちの地域の魅力を再発見し、さらに好きになっていくためには何が必要かという視点で地域の発展、まちづくりを考える”という産業社会学部が目指す学びの実践。学生と地域が互いに連動しつつ成長するこうした学びこそが、地域連携プロジェクトの本当の意味の成果、醍醐味につながっています。

*大垣市上石津町:人口は約6400人。岐阜県の南西端に位置し、町の東西を養老山地、鈴鹿山脈の山々に囲まれている。2006年に大垣市に合併編入されたが、隣接していないため飛び地となっている。

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