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2021.10.21

第37回AJI研究最前線セミナー開催

 2021年10月12日、第37回AJI研究最前線セミナーがオンラインで開催されました。今回は、Dr. Agus Trihartono(インドネシア・ジェンベル大学ガストロ・ディプロマシー・センター研究員および共同創設者)をお招きして、“Indonesia’s Gastrodiplomacy in the Making: A Preliminary Study”というタイトルとともにお話いただきました。Dr. Agusによれば、Gastrodiplomacy(直訳すれば、「胃の外交」)とは、国ごとの豊かな食文化の伝統を利用して、その国のブランドを強化することを指し、いわゆる「ソフトパワー」を強化するために食品を使ってそのイメージを向上させようとする国の試みを意味します。発表では、アジア諸国がこの方法をうまく利用しているなかで、インドネシアはその多様な食文化を十分に活かすことができていないという問題を指摘しました。アジア最大のコーヒー輸出国であり、かつ、最大の香辛料生産国であるにもかかわらず、このことは不思議なことです。

 このような問題背景のもとで、Dr. Agusは、ジョコ・ウィドド元大統領による「Indonesia Spices up the World (世界のためのインドネシアのスパイス)」と呼ばれるGastrodiplomacyの近年における事例を紹介し、インドネシアの多様な料理を活かして、インドネシアの国際的地位を向上させる新たな取り組みについて言及しました。この取り組みの目標は、インドネシア料理を提供するレストランを全世界で4000店舗増やすこと、スパイス輸出を大幅に増加させることを通じて、インドネシア文化への認知を向上させるとともに、経済的成功を実現することです。しかし、同時に、この目標の実現のためには、豊かな食文化を伝えるための料理それ自体の色彩豊かなイメージが比較的乏しいこと(たとえば、タイ料理などと比べて)、多様なローカルな食文化をごく少数の品目で代表させることによるアイデンティティの見落とし問題、政策の実効性など、主に3つの問題を克服する必要があることが指摘されました。

 Q&Aでは、参加者から、加工食品の輸出やハラル市場への参入の可能性などに関して、多くの興味深い問題について意見交換が行われました。「胃の外交」という知的関心だけでなく胃をも刺激する興味深いテーマに関して、参加者との間で非常に活発な議論を楽しむセミナーとなりました。

発表を行うDr. Agus Trihartono
発表を行うDr. Agus Trihartono

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/