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2020.10.30

第23回AJI 研究最前線セミナー開催

 2020年10月20日(火)、第23回AJI最前線セミナーがオンラインで開催されました。今回は、望月葵氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程、日本学術振興会特別研究員(DC))が「ヨーロッパにおけるシリア難民の生存基盤の再形成:移民/難民の差異に着目して」と題して、非常にアクチュアルな難民問題に関して緻密かつ包括的な発表を行いました。今回の発表では、望月氏は、シリア内戦によって生み出された大量の難民とヨーロッパ諸国の受け入れ態勢の構築に関して、現行の国家や国際機関によって設けられた「難民」と「移民」の区別が問題を複雑化させていることを示しました。発表では、シリア難民の大量発生によって生じた「欧州難民危機」と難民庇護政策の限界に関して、EU各国の事例や難民の受け入れ状況に関する詳細なデータとともに簡潔な説明がなされたのに加えて、国民国家の境界やセキュリティを優位に置くかたちで「難民」と「経済移民」「不法移民」を選別する既存の方法によって難民庇護政策に限界が生み出されることになる点が議論されました。発表後の質疑応答では、これまでの難民庇護政策の限界が明らかになるなかで、より包摂的な難民庇護体制の確立に必要な条件とは何か、また、それに関する望月氏の今後の研究の発展の展望について活発な議論が交わされました。

第23回AJI 研究最前線セミナー開催
発表を行う望月葵氏