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2023.06.15

【レポート】第54回AJI研究最前線セミナーを開催しました!Dr. Variya Kunapasut: “Relationship between Education and Wage Inequality in Thailand: A Quantile Regression Analysis”

 5月9日(火)、第54回AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr. Variya Kunapasut(Senior Researcher, Asia-Japan Research Organization)が“Relationship between Education and Wage Inequality in Thailand: A Quantile Regression Analysis”と題して発表を行いました。

 Dr. Kunapasutのプレゼンテーションの冒頭では、タイが世界で最も所得格差の大きい国の一つであり、総人口の最も裕福な1%が国の純資産の67%以上を所有している事実が指摘されました。その一方で、農村部の人々は、低い所得や教育機会の欠如、扶養家族の多さ、悪い生活環境などに苦しんでいます。Dr. Kunapasutは、所得格差の問題に取り組むため、2009年から2018年にかけて、タイ中部における学歴と所得格差の関係について調査しました。彼女の研究の方法論は、教育水準の向上による賃金分布の改善を明らかにするために、ミンサー型賃金関数と分位点回帰を駆使して、グループ内およびグループ間の不平等のダイナミクスと、時間の経過に伴う賃金格差の変化に関する分析を示すものです。

 Dr. Kunapasutは研究を通じて、教育が所得格差に対して有意に作用し、その効果は高等教育レベルが高いほど大きくなることを示唆しています。分析によると、すべての教育レベルにおいて所得格差がいくらか減少したことが明らかにされました。また、大卒者は、他の教育水準のグループと比較して所得格差に最大の縮小が生じました。所得格差の縮小は、タイの賃金政策が賃金分布の下限の大卒者を対象としたものに変更されたことに起因しており、これは本研究の結果と一致していることも強調されました。

 発表後のQ&Aでは、方法論や特定の科学的データを専門外の人々に説明することの難しさについて議論が交わされました。Dr. Kunapasutは一つ一つの質問に丁寧に答えるとともに、所得格差の問題への将来的な取り組みにについても、社会の様々な分野へと視野を広げつつ、正確に調査する必要があると説明しました。

DDr. Variya Kunapasut delivering her presentation
Dr. Variya Kunapasut delivering her presentation