研究プロジェクト紹介

協働領域

国際人口移動時代における寛容な社会創出を目指して~アジアの事例分析から考察する日本への示唆

プロジェクトリーダー
国際関係学部

足立 研幾 教授

プロジェクト紹介

 現代世界では、グローバル化が加速度的に深化し、急激な経済発展を経験する国が増加しています。絶対的貧困ラインの下で生活する人の割合は、1960年代半ばには50%に達していたのに対して、2017年には10%を切るまでになり、平均値で見れば、世界的に物質的豊かさは達成されつつあります。しかし同時に、先進国に限らず、世界中で急激に人口・年齢構成が変化し、貧富の格差の拡大が顕著になりつつあります。この状況のなかで、今後さらに人口移動が増加するでしょう。昨今の世界の人口移動トレンドを踏まえると、アジアが2050年までには欧州と並ぶ世界の二大移民地域となることが確実視されています。また、アジアには、多くのメガシティが存在します。それゆえ、今後加速していくアジアにおける高齢化は、労働移民争奪戦の激化を予想させます。

 しかし、人口移動には、労働力不足の問題を解決したり、多様性のある社会構築に貢献したりする面がある一方で、人種、民族、宗教、文化などの相違に起因する衝突を増大させる面もあります。また、グローバル化に取り残された人々が世界各地で排外的になる傾向が強まっています。そうした不満を利用して権力を得ようとするポピュリズムや自国第一主義も目立つようになってきました。新型コロナウィルスの蔓延も、そうした排外的な反移民ポピュリズムを助長する傾向があります。

 こうした対立だけではありません。アジアで加速する国際人口移動は、アジア地域のみならず、世界的に大きな地殻変動を与えると思われます。そのインパクトは、単に国際人口移動の問題にとどまらず、社会・自然・国家の領域が複雑に連動する問題となっていくでしょう。それゆえ、この研究プロジェクトでは、アジアに焦点を当て、国際人口移動が社会、農村や自然環境、政治に与える正負の影響を分析することで、いかに国際人口移動に伴う正の影響を大きくしつつ、負の影響を抑え込むことができるのかを明らかにしたいと思います。

 また、本研究プロジェクトは、国際人口移動が活発化する中で顕在化している、人種や民族、出自、宗教の相違による差別や分断、それに基づく格差の拡大や不平等の問題の実態を明らかにするとともに、それを乗り越える方策を示す点で、とりわけSDGsの各国内及び各国間の不平等を是正することを目指す目標10に結びいています。また同時に、分断をあおる政治手法の跋扈や、それに伴う民主主義の後退をいかに乗り越えるのかを考察する点で、ことすべての人に平和と公正をもたらすことを目指す目標16の達成とも深く結びついています。

 さらに、本研究プロジェクトは、若手研究者の育成にも力を入れます。このプロジェクトに参加する若手研究者は、それぞれの視点から包括的な国際人口移動に関する研究に携わることで、それぞれの研究に幅や奥行きを得ることが期待されます。また、プロジェクトを進めるなかで様々な研究・実務分野で活躍する国内外の一流の研究者および実務家が参加する予定です。これらの人々との交流を通じて、若手研究者メンバーは、最新の議論や分析を学び、研究ネットワークを育んでいくことで、研究者としてのキャリアを発展させていくことができるでしょう。

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