立命館大学 経営学部

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2025/12/24 教育・研究

「立命館大学経営学部、清水建設と産学連携― Z世代採用の“リアル”に向き合った、立命館大学経営学部教授守屋貴司担当のプレゼミの3か月 ―」

日本の建設業界の人材確保が全国的な課題となる中、立命館大学経営学部の守屋貴司教授担当のプレゼミ(以下、守屋プレゼミと略する)が、清水建設株式会社と連携して「Z世代に合った採用方法」を学生自らが提案する産学協働プロジェクトに取り組んだ。2025年度秋学期の約3か月にわたる実践型授業には、10月に、同社関西支店総務部長がゲストスピーカーとして登壇され、11月には、企業の内部にある採用課題を学生がオンラインで直接聞き取り調査をし、未来志向の提案にまで仕上げ、12月にはプレゼンするという意欲的な取り組みとなった。

プロジェクトの中核となったのは、1027日に開催された清水建設による「キックオフ講義」である。この日、守屋プレゼミの教室には、清水建設関西支店総務部部長がゲストスピーカーとして登壇され、「清水建設の人と組織づくり、そしてZ世代採用における現場の課題」と題して講演を行った。同部長は、学生を前に建設業界を取り巻く環境の変化と、Z世代とのギャップに向き合う現場の実情を語った。

まず語られたのは、「BtoB企業でありながら生活インフラを支える重要な役割を担っているが、社名が表に出る機会は多くない。」との説明があった。 建設業界は長い歴史を持つ企業が多く、伝統や縁を重んじる文化は安定性・信頼につながる一方で、「変化が少ない古い業界」という印象も生まれやすいと語った。

続いて話題は、Z世代の就業観へと移った。同部長は、近年の学生の価値観の変化に触れ、「安定志向が強く、自分の思い通りにならないことに不安を抱えやすい」「会社への帰属意識が低く、転職に対する抵抗感も薄い」と指摘した。また、SNSや生成AIなどのツールを使いこなす一方で、「すぐに答えを求める傾向が強く、深く考える習慣が弱まりつつある」と現場で感じる課題も率直に共有した 

しかし、同部長は、こうした特徴を「問題」と捉えるのではなく、「新しい可能性」と捉えていく必要性を強調した。「Z世代が持つ感性やスピード感は、企業にとって大きな資源になる。だからこそ、企業側も変わらなければならない。皆さんのリアルな感覚から共感される採用施策を提案してほしい」。この言葉は、学生たちの表情を引き締めると同時に、プロジェクトの方向性を強く印象づけた。


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プレゼミの秋学期は、こうした企業側のまずリアルな声を受けて、ヒアリング調査研究の基礎から段階的に課題解決レベルアップするための論理的かつ実践的学習について学ぶこととなった。9月末から10月にかけて行われた授業では、企業研究や建設業産業関係などの文献検索の方法や課題解決テーマの立て方、採用研究の基礎理論の学習、インタビュー調査の設計などを系統的に学んだ。そして、プレゼミの学生は上場企業である清水建設の企業研究をし、清水建設へのヒアリングで聞くべき質問項目をグループごとに作成した。その過程で、採用戦略や企業研究の裏側を理解するための基盤が築かれていった 

11月に入ると、学生たちは清水建設の人事部(採用グループの若手・中堅)に対して、1時間半にわたって、オンライン・ヒアリングを実施した。ヒアリングで学生が投げかけた質問は、実に多岐にわたった。企業側の清水建設の人事部(採用グループの若手・中堅)サイドの方々はこれらに真摯に回答し、学生の視点からの疑問を歓迎する姿勢を示した。「企業のリアルな採用課題を直接聞けたことで、提案内容に深みが増した」と学生たちは口を揃えた。

ヒアリングを終えた学生たちは、得られた情報を整理解釈しながら、清水建設の現状とZ世代の価値観との接点を模索した。分析の中心となったのは、学生側が「企業の魅力をどのように伝えるか」ではなく、「企業の魅力をどのように共感される形で感じてもらうか」を重視する視点も生まれた。企業広報や採用プロセスは、情報伝達の手法以上に共感を生むストーリー性が必要であり、その核心を模索する議論が各グループで活発に行われた。

12月に入ると、最終提案に向けた準備が本格化した。そのために、プレゼミの学生たちは、オンラインヒアリング調査の結果と企業の現状分析などを踏まえ、12月8日には、プレゼミで、このコンテストに向けてのプレゼミ合宿(O I Cセミナーハウス)を行い、アイディアだしからP O W E R P O I N Tの作成、さらには、規定の10分間の時間の中でどう訴求力のあるプレゼンを行うことができるかの予行練習を繰り返し行った。

1215日に開催された最終提案ピッチでは、同社清水建設関西支店総務部長に加え、本社人事部採用グループ長も立命館大学を訪れ、プレゼミの5チームによるプレゼンテーションを審査した。当日は、実現可能性・新規性・共感性・インパクトなどが総合的に評価され、学生たちは本番さながらの緊張感の中で限られた時間の中で、立命館大学経営学部のプレゼミ生たちが練った「清水建設のZ世代採用提案」の内容をプレゼンした。 


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 同社清水建設関西支店総務部長・本社人事部採用グループ長からは、下記のフィードバックを得ることができた。そして、同社清水建設総務部長・採用グループ長によって、最優秀(1チーム)、優秀賞(1チーム)、佳作(3チーム)が決定した。

プロジェクトを終えた学生たちは、多くの学びを手にすることができた。建設業界という複雑な産業構造への理解、採用理論やオンラインヒアリング調査の手法の実践的習得、総務部長・人事採用責任者、人事採用の若手・中堅メンバーといった多世代の企業サイドの方々とのコミュニケーション体験、そして自らのキャリア観の深化である。また、今回のコンテストを通して、採用の裏側(リアルな現実)”に触れたことで、「働くとは何か」「どのような職場で成長していきたいか」といった自身の問いにも向き合う時間が生まれた。

守屋プレゼミでは、今回の清水建設との協働を単なる課題解決イベントではなく、2回生の就活前の大学生が社会と接続しながら学ぶ「問いを立て、共に未来を創る学習プロセス」として位置づけている。産学連携は企業の課題解決に寄与するだけでなく、学生にとっては実践知を獲得し、キャリア形成に直結する重要な経験となる。そして、課題探索から課題解決に至る論理構築能力を身につける実践教育を、産学連携で行うことを目的とした。この点は、同社の関西支店総務部長が理事として参画するエッジジソンマネジメント協会の目的とも繋がるものであろう。

建設業界の人材確保が叫ばれる中、Z世代の視点を取り入れた今回の取り組みは、企業と大学が互いに学び合うモデルケースとして大きな意味を持つことができるのはないかとの感触を得た。学生が生み出した提案の一つひとつが、今後の採用戦略の何かのヒントとなり、業界の未来を形づくる一助となることも期待される点でもある。

立命館大学経営学部守屋プレゼミは、今後も社会課題に向き合う実践的学習を推進し、学生の成長を支える教育活動を続けていく予定である。


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<コメント>

清水建設関西支店 綿引総務部長

学生の皆さんが当社や建設業界を調査・分析され、Z世代の特徴や考えをよく捉えた提案をしていただきました。5つのチームそれぞれのプレゼンテーションも工夫され、わかりやすく、かつ創意工夫に富んでおり、実際に取り組んでみたいアイデアも沢山あって、聞いていて非常にワクワクしました。私達も多くの学びをいただき、これからも守屋先生や守屋ゼミの皆さんと共創できることを楽しみにしています。今後の産学共創の学びのモデルとなる取組みとして大いに期待できるものです。

 

清水建設人事部採用グループ 村田採用グループ長

企業の採用活動は、実現可能性やリソースといった制約条件から発想しがちですが、学生の皆さんの枠にとらわれない提案は非常に新鮮で、私たち自身の思考の幅を広げてくれました。当社や建設業界の特性、Z世代の価値観についても丁寧に分析されており、Z世代当事者だからこそ生まれるリアリティと共感性の高い示唆が多く含まれていたと感じています。発表も要点を的確に押さえ、グループ全員で意見を持ち寄りながら作り上げてきた過程と熱量が伝わってきました。今回受け取った提案は大切なバトンとして受け止め、今後の採用活動の中で形にしていきたいと考えています。今後も皆さんとの共創の取組みができることを楽しみにしています。