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2021年12月のニュース

2021.12.20

中京大学准教授の森嶋琢真先生に「運動生理学」の講義をしていただきました

20211218日の1限、「運動生理学」の授業に、中京大学准教授の森嶋琢真先生を招聘し、「これまでの研究紹介」と題して、先生が精力的にされている血管内皮機能に関する運動生理学について講義いただきました。

 

森嶋先生は本研究科の1期生です。

https://www.ritsumei.ac.jp/shs/hakaseryoku/pdf/Hakushiryoku_Part3.pdf

本研究科在学中は、「低酸素環境での運動と健康増進」について研究を進められました。学位取得後、米国に留学され、本講義内容に繋がる研究を開始されました。

 

運動不足は不健康だと認識されていますが、さて、「座りすぎ」ということがどれほど疾患リスクを孕んでいるか、考えたことがあるでしょうか。

日常生活において、皆さんはどれくらい座位行動をとっているでしょうか。

そして、私たち日本人は、諸外国と比べてどれくらい座位行動を愛してしまっているか、ご存知でしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/content/000656521.pdf

 

森嶋先生は、座りすぎの悪影響に触れながら、なかでも心血管疾患リスクを高めること、その理由に血管内皮機能の低下が示唆されること、その打開策として、いわゆる「貧乏ゆすり」の効果を実験的に証明した研究成果をご紹介くださいました(写真参照)。

 

この血管内皮機能は、運動習慣によって高まること、ただし運動の種類(例えば有酸素運動かレジスタンス運動か)や、運動中の血圧応答の影響を大きく受けることを解説してくださいました。特に、血圧上昇を来すレジスタンス運動は一過的な血管内皮機能の低下のみならず、恒常的な動脈硬化にも関わりますので、可能な限り血管内皮機能を維持しつつトレーニング効果が期待できるような運動様式を模索しているとのことです。そのひとつが、レジスタンス運動後に有酸素運動を10minでいいので実施することが挙げられていました。

さらには、血管内皮機能の向上が期待できる栄養素の紹介もされておりました。

 

こうした生理的応答に対して、想定されるメカニズムにも触れながら、大変有意義な講義をしていただきました。

 

また、最後に本研究科(大学院)で学ぶことの素晴らしさ、どっぷり「青春を謳歌」できることを力強く語ってくださりもしました。

 

(ニュース)20211220-1


愉しくてあっという間に時間が過ぎた1コマでした。

森嶋先生、ありがとうございました!




 

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2021.12.06

橋本健志教授の『ブレインヘルスに対する運動効果:筋由来の生理活性物質としての乳酸の役割について』に関する総説が「Metabolites」に掲載されました

スポーツ健康科学部・同研究科の橋本健志教授が、塚本敏人助教、電気通信大学の安藤創一准教授、東洋大学の小河繁彦教授と共同で「Metabolites」に総説を公表しました(Title: Effect of Exercise on Brain Health: The Potential Role of Lactate as a Myokine)

https://www.mdpi.com/2218-1989/11/12/813

 

  「Exercise is the real polypill」といわれるように、運動が健康増進に対して万能薬の働きをすることに異論はないでしょう。近年深刻な問題となっている認知症に対しても、運動は有効な対抗策であるとされています。

 実行機能をはじめとした認知機能は、習慣的な有酸素運動やレジスタンス運動によって向上し、運動習慣などの環境変化に対して可逆的に変化することが示唆されています。また、精神疾患に対しても運動効果が認められています。しかしながら、背後の生理学的なメカニズムについて未解明な部分が多く、ブレインヘルス向上のためのより効果的な方法論の確立は途上です。運動習慣は、一過性の運動の繰り返しです。そして、一過性の運動も脳機能を高めること、一過性あるいは慢性の運動効果の作用機序の共通点と相違点が整理されていないことが、統合的理解を阻んでいるのです。

私たちは、一過性の運動が認知機能を高める効果において精力的に研究を進め、効果的・効率的に認知機能を亢進させる運動強度、時間、様式を整理してきました。興味深いことに、乳酸産生を促すような様式の運動(筋収縮)が効果的に認知機能を亢進することが明らかとなり、それは脳の乳酸取り込みとその利用が関係している可能性が示唆されたのです。本総説は、そうした私たちの一連の知見に基づき、ブレインヘルス向上にとっての広義のマイオカイン(骨格筋由来の生理活性物質)としての『乳酸の役割』について、その他の考慮すべき分子とともに検討する機会としたいと願う、渾身の記事となっております

 

Hashimoto, T.; Tsukamoto, H.; Ando, S.; Ogoh, S. Effect of Exercise on Brain Health: The Potential Role of Lactate as a Myokine. Metabolites 2021, 11, 813.

https://doi.org/10.3390/metabo11120813


(ニュース)20211206-1



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